この話はまだまだ後になってからの話、俺たちが2年生の夏に入った頃の話なんだが

今までの奇妙奇天烈奇々怪々な体験の数々の中でもある程度際立っていた話なんだから先に語ってやってもいいだろう。

俺が想像もしなかったハルヒの一面を垣間見たこともあるしな。





かなり苦しかった期末テスト期間は過ぎ去り、残るは一学期の終業式withペケの入ったテスト返しだけとなり、

日本全国の小中高生生徒が夏休みへと思いを馳せていた頃、俺が所属するけったいな謎結社“SOS団”の我らが独裁者、涼宮ハルヒは

日本全国少年少女の120倍は夏休みへの思いを馳せまくり部室の壁にカレンダーを貼り付け、

海の日−夏休みの始まる日だ−にデカデカと赤マジックで四重丸を書き殴り、毎回部室へ来るたびにカレンダーに×を付け、30秒獲物を見つけた虎と

決死の覚悟で突進しようとするサイのようにらみ合いをしていた。何を考えているのやら。

そのうちカレンダーに穴が開き、壁の向こうのコンピ研の部室へと何かが貫通するのではないかと心配しているのだが、

いや、ハルヒの場合は冗談じゃないんだぜ、コレが。



まあそれは結果的に杞憂となるのだが、その代わりに海の日以降の日付がいつの間にか全て赤字になってしまったのは如何なものか。

しかしハルヒ、なにも12月30日までずっと赤字にすることはないだろうよ、お前の中では夏休みはエンドレスじゃないと気がすまんのか。

俺は学校からの洗脳でそろそろ進路のことが気になりだしてきたんだけどな。それにしても週に四回は進路についての授業だなんて、

担任の岡部は俺たち生徒を極度の心配性にしたいのか、それとも岡部自身が心配性なのか、まいったもんだ。

やれやれ。

















[季節無視!沖縄に行こう! その1]
















そうこうしている内にカレンダーの四重丸まであと3日となった放課後の部室にて。



今思ったんだがハルヒのヤツ、6月の下旬頃から夏休みまでの日付数えていやがったな、カレンダーが赤くてけばけばしい。

1週間前くらいからのカウントで十分だろ。



「人間何時までもそう思ってるから人生の好機、絶頂期を見過ごしてしまうのよ!人生一度しかないんだから常に目を見張って

好機の時には革命を起こして世界征服するほどの心構えが必要なのよ!キョン!」

よせ、

凡人が大声でそう言っても「ああ、コイツは毒電波受信してんだな」位にしか思わんのだが、ハルヒ、お前に限っては

言葉通りになる可能性が“大”なんだからな。

ってか、いい加減部室のドアを自室の部屋のように扱うな。見ろ蝶番が歪んでるじゃないか。



「そんなことはどうでもいいのよ!それより、みんなが揃ったら重大発表があるんだから!部室から出るんじゃないわよ!」



「・・・・・・・・。」

ここで俺の夏休みへの期待は急降下しオマケに両翼、尾翼、垂直尾翼を失った状態となった。二度と立ち直ることはないだろう。

何せ真後ろの至近距離から空対空ミサイルのトリガーを引いたのはハルヒだ。おそらく落下中の残骸にもバルカン砲を見舞おうとするに違いない。

・・・・むごいな。

重大発表というのは夏休みについてというのは間違いないだろう。去年以上のことをするというのも間違いない。

また俺と朝比奈さんが疲弊するようなトンデモ大企画を、バックに機関を付けた古泉と計画したに違いないのだ。



さて今回はどんなビックリファンタジーが待っているのやら、楽しみだ。

俺もこんな事を考えるまでに達観したのさ。コイツに引きずり回されて一年以上だ、実際慣れればこんな反則的日常も悪くない。



それにしても今日は俺が部室に一番乗りとはな、毎日繰り返されていた習慣みたいなもんが狂うってことはハルヒがおそらく

みんなをびっくりさせたかったからこうなったのかもしれん。今日もハルヒのマジカルパワーはフル回転らしい。

だがそれならどうして俺だけは他のみんなと違うんだろうな?







それから数分後、ハルヒがインターネットでカチカチやってる内に朝比奈さん、長門、オマケに古泉が同時に来た。

パァンッ!

と、更に同時にハルヒの座っていた方で乾いた破裂音、振り返ってみればハルヒが弾けた後のクラッカーを持ち、頭から紙吹雪やら紙テープやらを
被って300キロワットの笑顔でこう言った。一体何なんだ、手が込んでるな。







「明日から6泊8日、沖縄旅行にいくわよ!!」







そう聞いて俺は旅客機の沖縄行きまでのチケットがどれだけ高いのか考えていた。我ながら考えることがみみっちくて悲しい。

だが自虐している暇はない。いきなりツッコミ所満載なんだ。待ち受けるビックリファンタジーはどうせ反対しても回避は出来ないだろうが

心構えくらいはできる。



「待てハルヒ、沖縄旅行なんて五人が飛行機乗るだけでどれほど金掛かると思ってるんだ。それとも何か?また古泉が関わってるのか?」



「いえ、明日から沖縄旅行という計画は初耳ですよ。夏休みをフライングをするとは豪快です、楽しみですね」

オイ古泉、何期待してやがる・・・・・・・ってまあ俺も期待してるのだがそんなことくすぐられても吐かないぜ。



「沖縄・・・・・沖縄に行けるんですか!?やったぁ!」

いきなりどうしたんですか朝比奈さん、どうやら沖縄のことはご存じのようですが未来の沖縄はどれほどの楽園になってるんですか。


「・・・・・・・沖縄・・・海・・・・・孤島?」

いや、孤島のバカンスはもうたくさんだぜ長門。もう一回あの島に行けばハルヒが目撃した得体の知れないヤツに会っちまう気がする。

怪しい別荘or屋敷も勘弁な、またお前が倒れ込むようなピンチに遭遇するのは避けたい。


「キョン!有希といちゃつくな!計画はすでに発動しているのよ!しおりを作ってきたわ、日程と持ってくる物を書いといたから

頭にたたき込んでおきなさい」

なんだなんだ?やることはぶっ飛んでる癖にいつもなんの準備も無しに不意打ちのように突き進むハルヒが今回の沖縄旅行は

妙に手が込んでるじゃないか。

ハルヒから手渡された特製しおりの日程の欄を見て俺は愕然とする。前言撤回、ハルヒはやはり無計画だ。

8日間の全日程はフリーとなっている。何処に行くかは決めていないらしい。それなりのコストが掛かるというのになんだそりゃ。



「行く場所なんて付いた先で決めればいいでしょ!沖縄なのよ、きっと何処も彼処も面白いところに決まってるわ」



お前がそう言った現時点で沖縄はトンデモアイランドだな。沖縄独特の古民家の石垣の影からひょっこりキジムナーあたりがでてくるかもしれん。

しかし、そんなことより今はこの日程だ。明日から、しかも6泊8日だと?いくら夏休みが待ちきれんといってもフライングしすぎだハルヒ、堪えろ。

カレンダーの海の日に四重丸を付けていたのはフェイントか?今日はサプライズが満載だな、オイ。

それに6泊で8日間って何だよ。2日間だけ寝られない日があるのか。





「ごちゃごちゃうるさいわね、それは行ってからのお楽しみよ!行く前から何をするか知ってたらその分ワクワクが減るじゃない!」





かくして、全てのささやかな反抗とイチャモンは一掃された。

そのあと他にも問い質す点は多々あったのだが全てその言葉によってはね除け、なぎ倒された。横暴だ。









明日出発なんだ、急いで足りない物、無い物をそろえねばならん。それは俺以外にも当てはまるようで俺たちはそのあと

全員で近くのデパートまで買い出しに出ることにした。じゃあ明日出発にすんなっての。



「自転車で行くわよ!」



「・・・朝比奈さん、よかったら俺の自転sy「キョンとあたしと有希、古泉君とみくるちゃんでいいわよね!さ、時間が無いんだからさっさと行くわよ!」


「ちっ」

朝比奈さんとの二人乗りを満喫するために脊髄反射で誘った俺だったのだが、予め警戒していたかのようなハルヒによって

強引にも俺の夢は潰えた。横暴だ。



デパートへ行く途中も俺に不均等ハンデが掛かったハルヒによる無謀ママチャリレースが開催されていたのだが

如何せん、三人乗りと二人乗り、それも古泉が後ろに乗せているのはMY SWEET ANGEL朝比奈さんだ。俺の前世はそんなに悪いことをしたのだろうか。

「キョン君がんばって〜」

というSWEET VOICEを燃料に気持ち10万馬力で頑張っていたのだが、頭をぽかすか叩かれ

「ちょっとなにしてんのよ!古泉君の自転車あんなに向こうじゃない!気合いを入れなさい気合いを!」

なんて耳元でハルヒの大声を聞いてたら精神的にも消耗する。俺は今まで朝比奈さんの気持ちを簡単に考えていたと実感した。

端から見れば小学生くらいにしか見えない朝比奈さんだが実はとんでもないタフネスとバイタリティを持ち合わせているのかもしれない。

それにしてもハルヒ、そんなに背中にくっつくな。お前、時たま自分が女子だということ忘れてるだろ。

その横で長門が起用にも本を読んでいるようだった。しかし時々俺の頭を貫通するような視線を感じるので、ハルヒの向こうを見てみれば

その度に長門が横目で俺をただ見つめていたのだった。



いや、な、その・・・長門、コレは神に誓って不本意な事態であってだな・・・・・。



そうやって長門に弁解の念を送るたびに俺はハルヒに小突かれるのだった。この無限地獄には全てを作りたもうた神も真っ青だな。

いや、神は今真後ろで俺を小突く悪魔だっけか、古泉。







そうして神の鉄拳を幾度となく受けながらも俺はデパートまで辿り着いた。

「おつかれさまでしたキョン君。コレ、私のですけど冷たいからどうぞ」

朝比奈さんは駆けつけてきてそう言いながら俺にペットボトルを差し出してくれた。おお・・・古泉、神はハルヒなんかじゃないぜ。

今、俺の目の前にいる・・・・・・視界が霞んでるせいか神々しさが増してるぜ。

俺も人間だから学習する、だから朝比奈さんがそう言ったと同時に視界の端から伸びてきた魔の手よりも速く朝比奈さんが恵んでくれた

ペットボトルを授かった。

「ありがとうございました、朝比奈さん。助かります」

ハルヒがペットボトルをいつかの爪楊枝のように睨み付けているのを後目に、俺は授かったアップルジュースを頂いた。

体に命の水が拡がっていくのがわかるぜ。



「なに下品にバカ飲みしてるのよキョン!時間がないの・・・んぐっ・・・・デパートに入るわよ!」

「んぐっ」って音立てるほどヤケ飲みみたいにジュース飲むお前もどうかと思うぜ。

それからお前、缶ジュース二本の一気飲みは流石にやめとけ、腹壊すぞ。古泉にでも一本やれよ。



ハルヒに腕を掴まれ強引にデパートの中に連れ込まれる直前、長門が

「あげる」

と言ってスッと俺にスポーツドリンクをくれた。この団には魔王が一人いるが女神が二人いるようだ。ありがとよ、長門。



「いい」









当然、8日間の旅行なんて経験がないので旅行鞄からどうしようか悩んでいたのだが、古泉が一つ余分に持っているというから、

なんだか気前がよくて逆に気味が悪いが借りてやることにする。

「ここに来るまで世界各地を飛び回ることも少なかったもので旅行での必需品は粗方持っているだけですよ。テンキーの電子ロック錠の

鞄をお貸ししましょう、丈夫で軽く、安全です」




正直、旅行らしい旅行なんて田舎の親戚くらいしか行ったことがないので知らんのだが、沖縄へ行くのにそこまで物々しい装備が必要なのだろうか。

ふと前を歩いている女子三人組を見ていると朝比奈さんが妙に高揚しているようだった。雪山へ行くときがぽわぽわだったとすれば、

うきうきくらいかもしれん。未来の沖縄はどうなっているのだろう。

長門を見てみればいつも通り、ハルヒの話を本当に聞いているのか疑わしい表情でハルヒの話を聞いているようだった。

ハルヒはと言えば長門の腕を掴み、朝比奈さんを引き寄せてデパートの通路のど真ん中をズカズカと歩いている。

どっちかによって歩けと言いたい、それじゃ前から来た人が右にも左にも避けにくいって。




「さて、俺と古泉は2階でいりそうなもんを探すんだが、お前達はどうするんだ?」




「何言ってるのよキョン!勝手な行動は許されないわよ!まず行くのは水着売り場ね、有希とみくるちゃんの新しいのを買いにいくの」




「お前こそ何を言っている。水着なら去年の夏に買ったのがあるだろーが。背も何も大して大きくなってないし買う必要はn」

突然体が動かなくなった。

どうした、なんだ?・・・この感覚・・・・前にも・・・・・・・あれだ、朝倉に襲われたときの金縛りと同じ・・・・・・・?

動かない視界で長門を意識してみれば・・・・・・・長門が左手を胸の辺りに当てて俺を洞穴のように暗い目で俺を見つめていた。

・・・・・・もしかして怒ってらっしゃいますか、長門さん・・・・・・でもいきなり金縛りはナシだぜ。




「女の子は毎シーズン水着を買い換えなきゃ行けないの!そのくらい察しなさいバカキョン!さ、3階にいくわよ!」

ここで金縛りは解けた。

が、ハルヒがエスカレーターに引っ張るまで長門は戦闘機をロックオンしたバルカンファランクスのように顔の向きを変えずに俺を見つめていた。




「大丈夫ですか?」

古泉が俺の顔を覗き込んでいた。お前に心配されても嬉しくない、顔が近い。

「女の子にあんな事を言うのは流石に感心できませんね。長門さんの反応は体に浸みているでしょうが、朝比奈さんも少々膨れていましたよ。

僕も永遠に女性の気持ちを完全に理解することは出来ないと思いますが、最低、「それは楽しみです。」くらいのことは言いますね」




じゃあお前が言えばいいじゃないか。




「その判断自体が既に失格です。僕にとっては少々悔しいのですが、彼女たちはあなたに言ってほしかったのですよ、きっと。

それはあなたの役目です」

「妙にこういうことに慣れてるみたいだが?」




「・・・あなたは相当女性との交際について疎いようですね。相手の気持ちを察するのが難しいのはわかりますが、この程度は

誰にでも分かると思うのですが・・・・・おや、涼宮さんたちがお待ちです。急ぎましょう」




そう言って、古泉は歩調を速めてエスカレーターへと向かっていった。

古泉の言うことは毎度腹が立つが、今回だけはどうやらあいつの言うとおりみたいだな。長門の怒りようから見て結構失礼だったようだし、

古泉にああ言われたのに俺にはまだサッパリなんだからな。

・・・・・・素直になったんじゃねえよ、他人を不快にさせるのは流石にいかんと思うからだ。

まあ、新しい水着が楽しみなのではあるがな。





Produce byハルヒの水着着せ替えショーが終わった後も足りないものを探したり、ハルヒの急な思いつきで、

必要ないものまで買わされそうになったりとデパートの中を駆けずり回った。

以前の孤島合宿や雪山合宿のときより5倍ははしゃいでいるハルヒを見ると、沖縄旅行をそれほどまでに楽しみにしているのだろう。

奇妙なことに巻き込まれて困るのは必然的に俺と朝比奈さんなのだろうが、長門も古泉もいる、ハルヒもそれほど物騒なことは

考えていないだろうし今回も孤島合宿のようなノリで後から思い出してみればいい思い出になるんだろう。







と、まあ俺も甘かった。

このときはいい思い出になるだろうと安心しきっていたが今回の沖縄旅行はSOS団始まって以来の

超弩級スペクタクル大ピンチになるってことを俺は当然知る由もなかった。




















6泊8日の沖縄旅行初日の早朝、俺は某隠れんぼゲームの主人公スパイのごとく身のこなしで自宅を脱出した。

この時間帯なら妹も寝惚けて起きることもないだろう。もし旅行に行くのがバレたら「私も行く」の一点張り、引き離すのに1時間は掛かるからな。

もともと早朝に発つ飛行機に乗るんだそうだ、ハルヒは朝早く行って今日の夜中まで遊び散らす魂胆らしい。

俺が家の玄関を出たところで家の前に見慣れたタクシーが停車した。昨日古泉に空港へ行く途中、俺も拾って貰うように頼んで置いたのだ。

朝っぱらから古泉の0円スマイルを見るのは気分がよくないが仕方がない。少なくとも、これで俺がビリになることはないしな。




「おはようございます、お迎えに参りました」

運転手席の窓が開き、荒川さんが現れた。

後部座席のドアも開き、中から0円スマイル野郎が現れ会釈してきた。朝っぱらからこの二人に会うのは荒川さんには悪いが・・・なんか嫌だ。







空港に着いてからいよいよ旅行に行くという実感が湧いてきた。

今まで団の合宿にしたって家の旅行にしたってその際の移動手段はほとんど車だったからな。孤島の時はフェリーに乗ったものの、

旅行といったら旅客機、というイメージが俺の深層意識にはあるようだ。ヤバイ、若干ワクワクしてきた。




ハルヒや朝比奈さんがいるのでは空港なんて広い場所で待ち合わせをする際には細心の注意が必要かと先読みしていた俺は

前もって特にハルヒに詳細な待ち合わせ場所を伝えておいたのだ。前日厳重に伝えた通り、二人は空港の中にあった喫茶店にいた。

ハルヒは少々不満げな面だったが。




「キョンも古泉君も遅いわよ!待ってる間に空港の中を3周は探検できたはずなのに」

ハルヒがいつものように素っ頓狂なことを言っているのをスルーして俺は辺りを見回していた。3人目の女子団員、銀河最強の無口読書娘がいない。

「おいハルヒ、長門はどうした?」

この時点で俺は嫌な予感を感じ取った。待ち合わせのときは常に遅刻するのが俺で、もはやこれは誰かの呪いかと諦めかけていたと言うのに

今回は原子時計よりも100倍は精確な体内時計を持っていそうな長門がビリだというのだ。

「知らないわよ。有希、いつもの待ち合わせのときは私よりも早く着いてるのに今日は一体どうしたってのよ。

有希でも旅行が楽しみで寝坊したりするのかしら」





想像できん。





それから数分後、

「長門さんが遅刻とは珍しいこともあるものですね。一応私の携帯から連絡を取ってみましょうか」

空港内のアナウンスが俺たちの乗るべき便が搭乗開始したことを報せ、さすがにハルヒの膨れっ面がそろそろ笑えなくなってきた頃、

古泉がそんなことを言い出して携帯を取り出したとき、俺たちの携帯が一斉に合唱を始めた。音量のせいか、若干周りからの目が痛い。




「何?何?みんなに一斉にメール着信って・・・・有希から?今・・・空港についた・・・・って有希、携帯持ってたっけ?」

ハルヒも朝比奈さんも古泉も俺も同じように携帯を開いて画面を見ていたが、どうやらハルヒが読んでいるメールの文面と

古泉、朝比奈さん、俺が読んでいる文面は違うようだ。古泉が俺と朝比奈さんの方へ目配せをしてきた。いや、お前にアイコンタクトをされんでも

わかるって。朝比奈さんは頭の上に?マークが浮かんでいるようだが。

長門から送られてきたメールの文面はこうだ。





From  :長門有希

Title :涼宮ハルヒには見せないこと




朝比奈の帰属する未来から協力要請を受けた。

あなた達にも協力を仰ぎたい。涼宮ハルヒが

最後の搭乗手続きをしている間に説明を行う。

任務自体の規模はあるが旅行自体には支障を

来さないことと、身の危険は無いことを保証

する。               

以上





ハルヒが周りをきょろきょろして、俺たちが携帯の画面とにらめっこしている間にいつもの学校鞄とは違って若干膨れた

リュックを背負った長門がひょっこり現れた。





「いくら有希だと言ってもこれほどの遅刻をしたのならちゃんとしたワケを聞かせてくれるんでしょうね?何があったってのよ?」







「・・・・・・・・・・・・・・・・朝寝坊」





そう言う長門の目が俺には心なしかショボショボしていたように見えたのはきっと錯覚なのだろう。

俺たちが乗る飛行機は機器のトラブルで予定より10分遅れて空に飛び立った。