4日目の最後の祭りの日まで俺はアイツと一緒だった。
今日も待ち合わせ場所にいたら少々遅れてアイツが浴衣だというのに走ってきた。
「ごめんごめん、サイコロの券探してた。もうすぐ始まるからはやくいこ!」
チラシの切れ端みたいなのを見せて走る勢いで彼女は咄嗟に俺の手をとった。
初めて触った女性の手は想像以上に細くて柔らかかった。

サイコロの福引き大会の間、終始彼女は俺の手を繋いだままだった。離すタイミングを外したんだろう。
デカいサイコロを振るときも彼女の左手と俺の右手で掴んで投げた。3等のぬいぐるみが当たり、俺の右手に収まった。
左手は彼女に繋がれたままだった。



花火を見るため川の河川敷、離れた橋の下に向かった。
彼女曰く人が少ないらしい。コンクリートに腰掛けアイツと俺とでぬいぐるみを弄んでいる内に花火は始まった。
花火の間、一度彼女の顔を盗み見た。赤や緑や青の光に照らされた彼女の瞳は綺麗だった。
「・・・ん?なに?」
余裕でバレた。
「え・・・・いや・・・・・・・」間近に見つめられ黙るしかない。
目を泳がせているとふと彼女が急に俺の方に倒れてきた。
最初はそう思ったが数秒間固まっている間に彼女が寄りかかってきたことに気付いた。
「・・・・ねえ」
「・・・・え・・・・・・・・あ?」



「・・・・・・・・・・・・・・・・キスして」



腰を掴まれた。逃げられないし俺は固まったままだった。
彼女は顔を起こし俺を2,3秒見つめてから目を閉じた。もう花火なんか聞こえなかった。



花火が終わって俺たちも帰ることにした。
ぬいぐるみを右手に、左手は彼女の右手の指を絡ませて。
遠い街から遠い彼女の家まで歩いて送っていた。
俺たちの高校の時の話は絶えなかった。
「ホントはさ、あんた追いかけて高校選んだんよ?」家の前に着いたときに彼女がそう呟いた。
もう愛おしくて堪らなかった。
俺は少々乱暴に彼女を抱き寄せ、強引にキスした。
「ふぅ・・・ん・・・ん・・・・・・」
勢いで唇が切れ血の味がしたが俺も彼女も気にしなかった。顔で湯が沸きそうだった。
「はぁ・・・・・・・えっち・・・・・・」

二人して笑い合った。
街灯だけのほの暗い夜でも彼女の顔はハッキリ見えた。笑った顔も俺を見つめる顔もかわいくて仕方がない。
「メール、交換しよ。今度は会いに行くよ」



翌朝、帰る日に彼女が駅まで送りに来てくれた。
それどころか、電車に乗って少しだけ着いていくと言う。
俺たちは数日前に出会った席と大体同じ席に座った。ただし、今度は彼女は隣にいる。
分かれるまでもずっと俺たちは昔の話をしていた。
幸せだ。
彼女が降りて小さく手を振った。思わず顔がニヤケる。
そのままゆっくり電車は発車して、俺は見えなくなるまで駅を見つめた。そのとき、携帯に初めて彼女のメールが届く。


離れても忘れんといてよ
好き






おしまい