氷帝学園・跡部景吾

成績優秀・生徒会長・そして200人を超える部員を持つ全国区のプライド高きテニス部部長。

おまけに容姿端麗で、超がつくほどのお金持ち。

一度お目にかかれば誰だって息が詰まるくらい。・・・そう、誰だって。



それに比べて、私なんて・・・。


何かひとつやるには少なからず時間はかかる。

あるときは間違ったり、あるときは遠回りしたり、と。

おまけにニブチンだし。

まぁ、比べるほうがおかしいけど。



そんな私は、何でも(出席番号までもが)一番な彼、跡部景吾に・・・。




       完璧様と超庶民ちゃん〜ヒロインSide〜





彼の周りのいる女の子達はみんな美人。(心はおいといて。

どの子も成績は、まぁまぁ良くて、料理が上手で・・・

って、多分、そうらしい。噂で聞いたことだけど。

いつも何か、手作りなのだろうか、洋菓子を持ってきては、跡部君におすそ分けvVって感じだし・・・。

きっと彼女達はみんな、跡部君狙い。いや、それどころか、ファンクラブの管理職に就いてる人達かもしれんぞ。

それはおいといて。


もしかしたら・・・。

――――跡部君もあの中の誰かが・・・。



彼にも、そして、あの子達にも

私なんか到底、かなわないやって思ってた。


あの子達と比べて、跡部君と話す回数は多分・・いや、絶対少ないし。

でもその分、嬉しさは誰にも負けないくらい大きいと思う。(まぁ、一年に一回、休み時間とかに話せるか話せないかだし


思うっていうかそういうことあったし。

前に一度だけ、そう一度だけ。

跡部君の方から、私に話しかけてきたことがあった。

それは今でも特に鮮明に覚えてる。




去年も跡部君と同じクラスだった。

そしてあれは2年最後の日直が回ってきた日の翌日。


普段からほとんどの人より早く学校に行ってた私。

その日はいつもよりも早く学校に着いた。

いつもどおり何気なく玄関で靴を履き替え、何気なく教室へと歩みを進めていた。


ただ、いつもと違うのは、廊下の静かさ。

いつもあいさつする、あいさつをしてくれる友達もまだ来ていないようだ。


教室に入ると、そこには男子が3・4人いるだけで、女子は私が1番だったみたい。

その中に跡部君もいた。


(ここにいるみんなはいつも何時に学校に着くんだろう。)


そんなことを思いながら、自分の席へと向かっていった。

バッグから中身をだし、机の中に入れていると、ふと、跡部君がこっちへ来るのが見えた。


そして、ある程度近づいてくると彼が口を開いた。


「おい、。昨日の日直は、お前だったよな?」
え、何?!

「え?あ、う・・うん。そ、そうだけど・・・それが・・どうしたの?」
(ワタシドモリスギ@л@///)

「ん?あ、いや、どうってことじゃねぇけど・・ただ、いつもと違って教室、キレイになってると思ってな。」

「は、はぁ、そ、それは、ど・・どうも、ありがとう・・」

(っていうかどう答えればいいの〜〜〜orz///@д@)


どうしていいのかわからず、とりあえず、お礼を言ってみた。


「お前、そうじとかそういうの、好きなのか?」

な!?

「え、べ・・別に、嫌いとか好きとかは、ないけど、き、嫌いでは、ないです・・?///」

「何故、?が付くんだ・・・」

「え?いや、何でも・・ないです・・ただ」

「ただ?」

「今日は、跡部君・・熱でも、あるのかな?・・と」

「ア〜ン?俺様が熱だと?・・フン、そんなもん、ねぇよ・・///」


とかいいながらも額に手をやる跡部君。

ちょっと、可愛いなと思った。


「で、でも、いつもより、よく喋るな・・って。こんな私なんかと・・・」


「?そうか?・・まぁいい。教室がキレイってのは悪くねぇと思っただけだ。」


そう言って、自分の席に戻っていった。



あれは一体何だったのだろう。

でも少しでも跡部君と喋れたことで私はすっかり舞い上がってしまっていた。




それ以来、(それ以前も)彼と話すことはほとんどなく今に至っていると思う。


でもあのことはずっと忘れないと思う。きっとそんなこと彼は忘れてるだろうけど。


明日は今年最初の日直が回ってくる。


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今日は私、日直の仕事で残ってます。

当然一人です。


まずは黒板のクリーニングからやりたいと思います!(何気にこれが一番好き


いつも思うけど、黒板消しって何回パンパンしても何か出てくるじゃん?

あれってホント切がないと思う。

そして、黒板もそう。何度やってもなかなかキレイにならないし・・・

だから、もっとキレイに出来るような気がして、つい時間忘れちゃって・・。


もう、いっそのこと濡れぶきでやりたい。



そんなことを考えながらチョークの粉に塗れきった黒板消しをパンパンしてはこすり合わせ、そんな作業を繰り返し

チョークの粉を追い出していた。



(これくらいでいっか)


やっと黒板のクリーニングに移ることが出来た。


黒板のクリーニングは私なりの段取りがある。


最初に文字の書いてあるところを重点的に。

なかなか取れないときは、黒板消しの作用面?のはみ出た台紙(角あたり)を使って抹殺。

次に縦に往復。右端から左端まで上下運動。

結構これは運動になる。特にふくらはぎ。

ここで一度黒板消しのクリーニングを行う。

仕上げに横往復をして、黒板のクリーニング終了。



消している途中、いろんな思いを巡らせていた。

一人だと余計に色々と考えるもんだ。


この消え行く黒板の汚れのように私のこの想いも消えてなくなればいいのに。と。

それこそいっそのこと私なんか風化して消えてしまえばいいのに・・・と。


いつからこうなってしまったのだろう。


ダメだ。やっぱり一人だと色々と嫌なことを考えてしまう。

やっぱり、ひとりは寂しい・・・。


そう思い、早く帰ろうと、残りの仕事も自分なりの精一杯のスピードで、でも丁寧にやった。


仕事が終わってもうそろそろ帰れる。と思ったそのとき、ふと、跡部君の席に目をやった。

そして、彼の席に近づき、そっと椅子を引いて座ってみた。

前からちょっと座ってみたかったんだ・・。


(今は誰もいないし、誰も見てないよね。ちょっとだけ・・)


へぇ・・・。跡部君ってこんなに高い椅子に座ってるんだ・・・。


私は比較的、背が低い方だから、床に足は着かなかった。


この床に届かない私の足のように、この気持ちがどんなに強くたって、跡部君にはきっと届かないのだろうな・・。


そう思うと自然と涙があふれてきた。



私は跡部君には悪いと思いながら、彼の机に顔を伏せて泣き続けた。声を出さないように、静かに。



それから五分程経った頃だろうか。いきなり教室のドアが開けられた。


まだ涙は止まってはくれない。




―――?まだいたのか?






そこに立っていたのは、跡部君だった。


私は驚いて、何かに気づいたようにハッと顔を上げ、ドアのある方に顔を向けた。



「!?おまっ・・泣いてるのか?」


バレた?!どうしよう、こっち来る、こんな顔見せられない・・。


あわてて手で顔を覆い固まってしまった。


「べっ、べふひっ、なひてふんぎゃっ、なっひっ(べ、別に、泣いてるんじゃ、ない  と言いたい。」

あ〜〜何言ってんだ私(ちゃんと喋れ。


「泣いてんじゃねぇか!・・しかも俺様の席で」


あ!そういえば・・・!と思い、あわてて立ったら足がうまく地に着かず(短いから)、少しバランスを崩した。

・・・何か恥ずかしい・・・。どうせ私なんか恥ずかしい生き物ですけど。


気付くと彼は横にいた。


「っていうか、何で?!え、どうしてここに?!跡部君が?!」

完全にパニック状態。


「いちゃいけねぇのかよ!?」


そういって、理由は教えてくれなかった。


「何泣いてんだよ!・・全く、お前らしくねぇだろ!」

「え?!」

「えじゃねぇだろ?いつもヘラヘラ笑ってるお前がよ・・」

「ウソ・・」

こんなこと跡部君の口から聞くとは思わなかった。


「ア〜ン?ウソって何だよ?」

「で、だって・・」

「だって?何だ?言いたいことがあるんなら言えよ・・・全部聞いてやる」

「え、何?全部言っちゃっていいの?」

「言えよ。」



これってチャンス?



「私ね・・跡部君が好き・・///」


いきなり言っちゃったよ私・・・

どうしよう、驚いてるよ跡部君・・もういい。勢いに任せよう。


「跡部君を最初に見たときから・・去年、同じクラスになったとき、すごく嬉しかった・・

いつも跡部君の周りにいる女の子達が羨ましかった・・みんな頭良いし、美人ばっかだし、いつも持ってくる弁当とかお菓子とかおいしそうだし・・

何より、跡部君といろいろ話ししてそうだし・・もしかしたら、あの子達の中に跡部君の彼女とかいたりするのかな・・とか思ったり・・

私なんか、友達も少ないし、頭悪いし、見た目も中身も鈍感だし、あの子達には全然適わないし・・跡部君には似合わないし・・

きっと、私のことなんか見てな「おい、!」



それまで私の話を黙って聞いてくれてた跡部君が痺れを切らしたように声を出した。

いきなり名前で呼ばれてびっくりした私は口を半開きに、目は腫れながらも大開きにあいたまま跡部君に視線を向けた。



「さっきから聞いてれば散々な言われようだな」


「・・・え?」

「そうか・・お前にはそう見えてたんだな・・ま、隠してきたからムリもねぇが」


「どういうこと?」

何?跡部君は何が言いたいの?



「もう隠す必要は無くなった。」


それだけ言って跡部君の右手は私の顎を少し上げ、左手は私の頭を支えた。


「え?何?」

「いいから大人しくしてろ」


混乱してる私にそう吐き捨てて、とりあえず私は言うとおりにした。


すると跡部君の麗しい顔が近づいてくる。

恥ずかしさに耐えられなくなりギュッと目を閉じた。




―――ジワリと唇にしっとりとした温度を感じた。




これは、キ・・キス?(以外に何があるか




しばらくして離れた彼の唇が動き出した。


「俺はをずっと見てきた。誰にも気付かれないように。俺は何事にもへこたれず一生懸命に生きるお前が好きだ」


・・え?


「いつもヘラヘラ笑ってるお前が好きだ。・・だから、泣くな。ずっと俺様の前で笑ってろ」

「あ・・ありがとう」

そう言って精一杯の笑顔を見せたはずなのに涙が今までの倍の量、倍の勢いで流れた。

その涙を彼は指で拭いこう言った。





「俺様のものになれ、




夕日という名のオレンジ色のスポットライトを浴びた彼の不敵な微笑みはどこか眩しかった。




「こんな私ですが私物にしたければ喜んで。」




――――――――――――――THE END――――――――――――――


20070715,presented by玄



あとがきという名の戯言


人生初!短編夢が完成しました!

いや、今まで完結した試しがないんだよ、ほんとに・・・


でも終わってみて、何か妙な達成感は感じるけど

描写少ないのがやっぱり文才のなさを物語っているようで・・。


ただね、完璧な景ちゃんと氷帝の中でも庶民的なヒロインを書きたかったんですよ・・。

結構、自分の経験見え隠れさせてあります。

読んでて、あ、こんなことも玄はしとったなと思う人、2人ほどいると思います。(少ねぇな



こんどはこれの跡部サイドで書いてみたいと思います。

その方がなんか書きやすそう・・・;



では、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!


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