『赤ちゃん』 暑い。開かないまぶたを擦りながら私は感じる。 そして私は瞬時でココがどこなのかを悟った。 ここは母親のお腹の中なのだろう。 私は赤子、いわゆる赤ちゃんである。 私はココを母親のお腹の中と判断した。 そうなると、私は赤子は赤子でも、胎児にあたるのであろう。 身体を揺らしてみると、肌に軟らかい感触が触れる。 これはお腹の中の肉の感触か。意外と硬い。 そしてこの身体に絡み付いている何か、 これは恐らくヘソの緒だ。思っていたよりキツイ。 出産時に邪魔になるのではないか? もし首に絡まったりなどしたら・・・。 まあ、大丈夫であろう。と証拠もない確信で自分を少し落ち着かせた。 それにしても暑い。 胎児にこの暑さは少々酷ではないのか。 ・・・いや、この暑さは誰もが通る道なのだろう。 皆が耐えておいて、私だけが屈するわけにはいかない・・・。 先ほどから何度「暑い」と感じただろう。 もはや暑さ以外考えられなくなってきた。 しかも、暑さは次第に増してきている。 これはもしや、出産の前兆なのだろうか? 私はもうすぐ生まれるのか? 生まれれたら涼しくなるだろうな。 早く生まれたい・・・・・・。 「早く私を生んでくれ!」 もし私が喋れるのなら、真っ先にそう口にしているだろう・・・。 ・・・もう私は駄目なのかもしれない。 視界が白くなってきた。 もっとも、まぶたは開かないので、視界が黒から白へ変わっただけだが。 身体もほとんど動かなくなってきた。 私はこの暑さに勝てなかったのか・・・。 全く神様とは残酷だ。 胎児である私にこんな試練を与えるだなんて・・・・・・。 「次のニュースです。 今日の午後2時ごろ、××県××市のパチンコ店の駐車場の車内で 生まれて間もない赤ちゃんが死体で見つかりました。 死因は熱中症と判断され、警察は母親を逮捕。母親は警察に 「子供を車内に放置してパチンコをしていた」と供述しています」