『Picture』 彼にはある趣味がある。 児童の死体の写真収集だ。 自分が異常だとは重々感じている。 自己嫌悪に押しつぶされそうになる時もある。 しかし、もう手を引けない所まで来てしまった。 彼のパソコンには児童の死体の画像が大量に収まっており、 部屋にはその画像を写真化したモノが壁一面に貼られている。 深夜、ネットで画像収集を終えた彼は眠りにつく。 大量の死体に囲まれて・・・。 何故彼は児童の死体に引かれたのか? 理由は彼もよくわかっていない。 児童の脆い身体が無茶苦茶になっているのを見ると 一般人は不快を感じるだろう。 しかし彼が感じるのは、興奮と快感なのである。 ある日の深夜。 彼のパソコン一通のメールが届いた。 題名は無く、送信者のアドレスに見覚えが無い。 そして、添付ファイルがひとつ。 ウイルスか何かだろうか? そう思い彼はそのメールを無視した。 次の日。 同じ時間にメールが届いた。 送信者は同じで、題名はなく、添付ファイルがひとつ。 しつこいな。彼はまたメールを無視する。 その次の日、同じ時間にまた同じメールが届いた。 一体何のメールだ。好奇心が一線を超えてしまい、 彼はメールをついに開いてしまった。 飛び込んできたのは、両腕が変な方向に曲がっている 血まみれの女の子の死体の画像。 黄色い帽子、死体の傍には黄色いカバーが掛かった 赤いランドセル。小学一年生なのであろう。 顔と右手にタイヤの跡がある。となると、 この女の子は車に轢かれて死んだのだろう。 とにかく保存保存・・・。 はっと彼は我に帰る。 どこに、見知らぬ人から子供の死体の画像を送りつけられ 喜んで保存する人間がいるのだろう・・・。 いや、いるのである。それが彼だ。 全く自分は最低な人間だ・・・・・・。 そう呟いたのは、彼が画像をプリントアウトした後のことだった。 壁にまた死体が増えた。 このメールを送った奴は、まさか自分が こんなに喜んでいるとは思うまい。 返信してざまあみろと言ってやろうか・・・ 彼がメールを見直していると、添付された画像の他に 文が書かれていたことに気付いた。 「貴方の趣味を理解する者です。 明日23日の16時に、××交差点に着て下さい。 カメラを必ず、忘れずに持ってきてください」 理解する者? 一体誰だ? 何故自分が××交差点の近くに住んでいることを知っている? この趣味は家族、友人に誰にも話していない。 行き着けのサイトの住民なのだろうか? しかし、そのサイトの住民には住所は勿論、 メルアドも教えていない。 そして何故カメラ・・・・・・? まあ明日行ってみればわかるだろう。今日はもう寝よう。 彼はあっさりと眠りにつく。 23日 15時50分 彼は久々に外出したので、眩しさで若干ふらふらしている。 カメラを手に彼は、××交差点にある 信号機の横に立って待っていた。 待っているといっても、誰が来るのかわからない。 そもそも、誰か来るのかすらわからない。 まあとにかく、この交差点にいればいいのだろう・・・。 55分 ランドセルを背負った子供がよく横切る。 ちょうど下校時間なのだろうか? 「この子達が死んだら・・・」無意識に彼が呟くと、 隣に信号待ちで立っていたおばさんに睨みつけられた。 59分 そろそろ、誰か来てもいいんじゃないのか? 彼はキョロキョロしだしたその瞬間、 交差点に、車の急ブレーキ音と、何か鈍い音が響いた。 何事だ。彼が向かいの横断歩道の方を見ると、 停止している車の傍で女の子が血まみれで倒れていたのだ。 両手が変な方向に曲がっている。 黄色い帽子に黄色いカバーが掛かった赤いランドセル・・・。 カメラを構えた彼の動きが止まった。 この女の子、昨夜メールで送られてきた画像の女の子と 全く同じ子じゃないか。 一体何故?わけがわからない。 まさか、未来からあのメールが届いたというのか? そう考えたのは、とっくにシャッターを下ろした後だった。 その日の深夜 例の送信者からまたメールが届いた。 彼は躊躇いを忘れ、すぐさま内容を確認する。 「私に従えば、あなたの欲望は満たされます。 次は、4日後の27日午後3時46分までに、××区の踏み切り前に来て下さい。 もちろん、カメラを忘れずに・・・」 彼に渦巻くのは、不安ではなく、期待である。 そして27日の午後3時46分。 ××区の踏み切り前で、トラックが積んでいた鉄骨が、 傍を歩いていた幼稚園児へ落下。幼稚園児は死亡した。 もちろんその現場に、カメラを持った男がいたことは言うまでも無い。 以降、不定期でメールが送られてきた。 2日連続で来る時もあれば、約1ヶ月空くこともあった。 また、メールは「予言」だけではない。ある日 「××駅のロッカー 108番 番号は××××××」 と書かれたメールが届いた。ロッカーには一本のビデオテープが。 内容は凄まじいものだった。 薄暗い部屋で、男の子の児童が複数の男に虐待を受けている。 彼はDVDに焼き、男の子の叫び声をケータイの目覚まし音にし、 ここぞという場面を写真化し、ギャラリーに追加した。 約1年後 届いたメールはだいたい、60通ほどだろうか。 壁の死体もメールの数だけ増していった。 彼がメールにより手に入れたのは、 今までの死体より、よりリアルで、より興奮するものばかり・・・。 メールが届いた。 「これが最後のメールです」 彼は戸惑う。そんな、もう終わりなのか? もっと俺に、死体をくれ・・・・・・。 ひとつのファイルが添付されていた。 そのファイルを開くと、大量の画像が。 画像はいつものように、死体の画像。 顔の半分は割れ、中身が飛び出し、骨という骨はすべて折られている。 その他、切り傷や火傷の跡などに覆われた、凄まじい死体の画像。 しかし違和感があった。それは死体が大人の男性であることである。 彼は死体を凝視し、動きをピタリと止める。 滅茶苦茶になった顔は、辛うじて誰の顔か判断できた。 この死体の顔は、彼と全く同じもの・・・・・・。 彼はかつてない量の冷や汗を流す。 目は見開かせ、画面から離さない。 他の画像も確認する。全て、彼の死体の画像である。 かつてないほど恐怖で身体を振るわせた。 その動揺で、彼の背後に立つ、大量の児童の存在に気付いていない。 彼がその存在に気付くのは、ゾンビのような児童達に 一斉に襲われた時だった・・・。 深夜の薄暗い部屋。 この部屋には大量の児童に覆い尽くされている。 そのわりには、不自然なほど静かな空間。 児童は部屋の中心をぐるりと囲んでおり、 中心には大人の男の死体が。 児童達はどこからともなく、カメラを取り出した。 そして、一斉にシャッターを切る。 何も喋らず、何も表情を作らず。 深夜の撮影会は、しばらく続いた。