這是 Google 對 http://www.h6.dion.ne.jp/~osageya3/story/hs.doremi/hdhss/hdhss07.htm 的快取。 這是該網頁於 2012年2月10日 13:48:56 GMT 顯示時的快照。 在此期間,目前網頁可能已經變更。 瞭解更多資訊

純文字版
 
<高校生編> 幕間・妹尾あいこ

<幕間・妹尾あいこ

 

魔法。

とても不思議な言葉。

アタシが『魔法』と言って思いつくもの。

小学生のとき、アタシは出来たばっかりの友達・どれみちゃんによって、半ば強引な形で魔女への道を歩き始めた。

そこから今日まで、アタシは色々な形の『魔法』を使ってきたと思う。

それは数え上げれば切りがないくらい、『どんなもの』と形容するのも難しいくらい、

たくさんの『魔法』をこの手で使ってきたし、見てきもした。

だけど、今でも一つだけ自信を持って言える事がある。

『わたしが今までで一番、『魔法』を感じたこと』

それは・・・。

奇しくも、魔女の使う、アタシらの使う、ああいう形の『魔法』ではなかった。

 

それはもう4年前の事だった。

ハナちゃんが居なくなり、私たちはともあれ水晶玉を手にした魔女になり、そして中学生に進んだ年。

その頃アタシとお父ちゃん、そしてお母ちゃんはまだ再婚もせず、別居したまんまだった。

一度はまとまりかけた再婚の話だけど、お母ちゃんのお父ちゃん、つまりアタシのおじいちゃんが倒れたことにより、

お母ちゃんはその大阪の地から動けなくなってしまった。

思えば、もうその頃から『魔法』の影は見えていたんだと思う。

お母ちゃんをあれほど縛り付けるもの、目には見えない形にならない、説明もできない強い力がそこには感じられた。

中学1年生の夏、アタシとお父ちゃんはお母ちゃんに会いに、そしておじいちゃんに会いに大阪へ行った。

お母ちゃんを縛る力の源・・・ おじいちゃんの姿を、アタシは見たいと思ったし、そして感じたいと思った。

大阪の夏は暑く、伸ばし始めた髪が首周りにぺっとり張り付いて、なんだかイヤな感じだった。

そんな雰囲気の中、アタシらは無言でおじいちゃんと再会・・・した。

お母ちゃんに付き添われているおじいちゃんは、一言で言って『老人』だった。

昔、あれほどに感じた『畏怖』『嫌悪』などの感情は、一切湧いてこなかった。

どうして自分があんなにもこの枯れかけた人間を避けていたのか、信じられなかったくらいだ。

お母ちゃんはそんなおじいちゃんを、まるで宝物でも扱うかのようにしていた。

アタシはそんなお母ちゃんの姿に、何故か涙が出た。

お母ちゃん。

お母ちゃんは、なんでアタシらよりもおじいちゃんを選んでしまうんや・・・?

おじいちゃんが可哀想だから?

おじいちゃんが弱いから?

・・・お母ちゃん・・・。

おじいちゃんはこの頃、麻痺がひどくなって喋ることも難しくなっていた。

だからアタシたちは、おじいちゃんを前に終始無言だったような気がしていた。

そんな、おじいちゃんの言葉・・・。  アタシが最後に聞いた言葉は、今でも耳の奥に焼きついている。

それは、アタシが偶然聞いてしまった言葉だ。

おじいちゃんの病室に、花瓶に水を入れて戻って来るときのこと。

部屋は窓が全開に開かれ、冷房の無い部屋の濁った空気を少しでも新鮮なものにしようとしている。

おじいちゃんは車椅子に座り、お母ちゃんがその後ろに立っている。

窓のカーテンが大きく揺れ、滅多に無い涼しい風が部屋に吹き込んできた。  

その風に乗って、その言葉が聞こえてきた。

『あつ子、幸せか?』

『どしたん、急に』

『おまえの娘・・・あいこ、か。 あれは幸せか』

『・・・』

『オマエが駆け落ちしてまで手に入れたかったのは、これなんか』

『・・・』

小さく、聞き取りづらい言葉だったはずだ。

だけど、アタシは間違いなく、それを部屋の入り口で耳にした。

お母ちゃんのすすり泣く声、そして何度も繰り返す『カンニンして』の声まで、鮮明に頭に響いた。

アタシは部屋に入れなかった。

花瓶をそのまま入り口に置いて、有無を言わさずにお父ちゃんの手を引き、

別れも言わずに帰ってしまったのを今でも昨日の事のように思い出せる。

もしも。

もしも魔法があったなら。

アタシのように、魔法が本当にある事を知らない人間だったら、絶対に今こそそう思っているだろう。

アタシも、何度も手の中の水晶玉を見た。

この力があるなら、今にでもアタシ達親子は幸せになれる。

幸せになれる。

幸せになれる。

幸せになれる。

そう繰り返す度に、アタシは自分の水晶玉を叩き割りたい気持ちになった。

何が、

何が魔法や。

魔法の、どこが魔法やねん!!!

人の悲しみを癒すことができないなんて、人を幸せにできないなんて、

自分も幸せになれないなんて、 魔法なんか

全部嘘っぱちなんや―

 

 

その一年後。

おじいちゃんは、亡くなった。

アタシ達は再び、重い足を大阪に向けた。

お葬式は小さく、ささやかに執り行われた。  その中で、アタシはお母ちゃんを見るのがとても怖かった。

あんなにお母ちゃんを縛り付けていたおじいちゃん・・・

それが無くなった時、一体お母ちゃんはどんな人間に変わってしまっているのだろう。

想像するのが、とても嫌だった。

アタシは悲しい振りをして、なるべくずっと俯いたまま、お母ちゃんを見ないように・・・していた。

「あいこ」

そんなアタシだったけど、お母ちゃんの方は見逃したりはしなかった。

お母ちゃんはゆっくり近づいてきて、そして・・・ そっと、アタシの体に手を回した。

お母ちゃん。

アタシはそこで初めて、今のお母ちゃんの顔をまじまじと見た。

お母ちゃんは、とても・・・晴れやかな、キレイな顔をしていた。

「おじいちゃんな、許してくれたんや」

「・・・」

「最後に、おじいちゃん、とっても不思議な魔法、使っていきよったんや」

お母ちゃんは涙混じりにそういい、耳元でその『魔法の言葉』を囁いた。

「『今度はオマエが幸せになれ』」

小さいその言葉。

・・・いや、お母ちゃんにとってみれば、それは呪文だったんだろうか。

「・・・お母ちゃんな、なんでやろ。 お父ちゃんからその言葉を聞いたとき、体の表面が全部割れたような気がしてん。

  アタシから、ずっと・・・アンタと別れたあの時から背負っていたものが、スッポリ取れてしもうてん。

 それでな、気付いたんや。

 『ああ、アタシはずっと、この言葉をお父ちゃんから聞きたかった』

  んやって・・・。

 たしかにな、死に際の遺言みたいなモンや。 そやから、言葉に重みもあるのかもしれへん。 

 自分が感情的になってたもの分かる。 でも、それはそれだけのモンやないんや。

  アタシにとって、その言葉は・・・ 魔法やったんや」

アタシは泣いていた。

何故だろう。

この時、すでにアタシはお母ちゃんが、次に言うべき言葉を聞いていたような気がして、先に泣いていたんだと思う。

そうとしか考えられない。 これも、後から考えれば・・・一種の魔法の効果みたいなものだったんだろうか?

お母ちゃんは、続けて言った。

「あいこ。 今から、アンタにも魔法、かけたる」

「・・・アタシに・・・?」

「うん。 これは、魔法をかけられたアタシだからこそ、分かる事や。 アンタも、随分・・・ 背負ってきたんやろな。

 カンニンな。 ホンマ、かんにんや・・・」

お母ちゃんとアタシ、さらにお互いの喪服を熱い涙で濡らしつつ、強く抱き合った。

そして・・・ お母ちゃんは、『魔法』を使った。

「あいこ―

 ― 今度は、アンタが幸せになるんや。

 アタシらの事は、もう気にかけないですむ。

 アタシもあいことお父ちゃんのいる、美空町に住む。

 もっかい、妹尾の家に戻る。  せやから、あいこ。

 自分の人生、気にせず歩いて行き。

 今度こそ、お父ちゃんとお母ちゃん、二人で見守ってるさかい・・・」

じぶんの・・・

じぶんのじんせい。

お母ちゃんの口からそれを聞いたとき、アタシの中の何かが・・・崩れて消えた。

それはきっと、止め処なく溢れる涙になって、全部零れ落ちたんだと思う。

これは魔法だ。

人を幸せにする、言葉の魔法。

人は多分、『この言葉を誰かから聞きたいから』というのを無意識に探して生きているのかもしれない。

きっと、人の内に魔法というのはあるものなのだ。

アタシはまだ、感じているだけで言葉にして上手く説明できないけど・・・

・・・いや。

説明できないからこそ、魔法なんだろう

今、この時アタシの目の前に開かれた広い道も、絶対に人には見えなく、そして説明したってしきれないものなのだから。

「お母ちゃん」

「何? あいこ」

「・・・魔法、ありがとう」

 

そしてしばらくして、お父ちゃんとお母ちゃんは再婚した。

 

 

 

「いってきまーす!!」

アタシが玄関のドアを開けつつ、踏み潰したくつの踵に指を入れ、片足で外に出ようとする。

「あいこ、弁当忘れとる!!」

居間の方からお母ちゃんの慌てた声が聞こえてきた。 ・・・しもた、またやった。

「ったく、毎度毎度お約束なボケかましよるなウチのぢょしこうせえは。 あつ子、貸しや」

お父ちゃんが面倒臭そうに立ち上がり、お母ちゃんからアタシの弁当入れを手渡される。

託されたバトンは、待機中のアタシの元へ。

「あはは、すんまへんな、毎度毎度」

「全く、体鍛えるんもええけど、ちったあ頭も人並みに鍛とかんかい」

「お父ちゃんに言われとうないわ! ・・・と」

そこでふ、と思い出す。 危ない危ない。 

本当にお父ちゃんの言う通り、大事な事まで忘れる程のボケ加減を見せるとこだった。

「おかーちゃーん? お父ちゃんも」

「なんやの?」

「あんなー、今日、友達家に泊めたってもええ??」

「友達?? 誰?」

「それは連れてきてのお楽しみや!! な、えやろ?」

「別にかまへんけど・・・ ・・・その」

「なんやお母ちゃん? ・・・あー、心配いらんて!! 女やさかい!!」

「せやせやあつ子。 こんアホに惚れる男なんて、そうそうおらへん」

アタシは無言でお父ちゃんのドテッ腹に一発お見舞いした。

「ほな!! 再びいってきまーす!! 今日は部活あるさかい、7時くらいになるわ!

 晩御飯、期待しとるでー!!」

何も言えないお父ちゃんの分まで、お母ちゃんは『いってらっしゃい』と手を振った。

アタシはいつもの道を、走る。

今日は、ハナちゃんにたくさん話そう。

ウチの家族を見せてあげよう。

そして、今アタシらがこんなに幸せな訳を、たくさん教えてあげよう。

魔女にはない、人間だけの魔法。

不器用で、不恰好で、脆くて、危なっかしいけど・・・

人を幸せにできる魔法が、人間にもあるんだって事を、家族を交えて話したい。 そうしたら、きっと―

ハナちゃん達魔女が、人間界でも上手くやっていけるような、ヒントが見つかると思うから。

 

「どれみちゃーん!! おはようさん!!」

アタシはいつものように、憂鬱そうに坂道を登り始める親友の背中を押すようにして、精一杯の声を出した。

 

 

 

戻る▼ 次へ▲ TOPへ