<12>
居間で寝っ転がりながら、テレビのニュースをわざわざ選んで観ていた。
「・・・どれみ。 あからさまなズル休みじゃないの」
私のそんな姿に呆れ半分怒り少々、といった口調でお母さんが洗濯物を運びながら言う。
・・・たしかに、誉められた格好じゃない。
だらしない着こなしのパジャマ、手の入れてない髪。
3人掛けのソファーを余裕で占領して、心持ち寂しかった右手がそろそろつまむ物を探そうか、というところだった。
ボーン、と時計が2時を指した。 勿論、午後の二時。
今日、私は学校を休んだ。
口実としては、『具合悪い』という極めて捻りの無いものだった。
小学生では使えない、大人の女の最終手段なモノもある事はあるのだが、
それはつい一週間ほど前に使用済みだったから使えなかった。
訝しげなお母さんを強引に説得してでも、今日は休む必要があったのだ。
ふと、携帯を取る。
新しい着信も、メールもない。 最新のメールは今日の朝9時。
1件。
あいちゃんの、
『今日ハナちゃんやっぱり休みや。また連絡する。 暇だったらニュースチェックしとって』
を、もう一度読む。 ・・・内容が変わるわけではないけど。
ハナちゃんは休み。
という事は、昨日の夜にあの『内閣調査室』の室長さんが言っていた通りに、
ハナちゃんはどこかで日本の偉い人達と未だ会談中、という事なのだろう。
会談、だって。
ホント『彼女は大統領や書記長クラスと同じ扱いなんですね』だ。
急にハナちゃんが遠い人のような錯覚を受けるから、言葉って不思議だ。
だけど、それが本当だとしても・・・ ニュースでは、一向にハナちゃん関連の情報を流さない。
ハナちゃんの『ハ』の字、魔女と魔法の『魔』の字も出てこない。
まるで退屈だった。 ハナちゃんの事が流れないニュースなんて、真っ当な女子高生の見る番組ではない。
「どれみ、元気なんだったら居間の掃除手伝ってちょうだい」
子供が成長しても、どうしてか母親の小言は全く変わらない。
わたしはダレきった体をムチ打つように起こし、
「・・・まだ調子悪~い・・・。 もっかい寝てくる」
と、再びダレダレな一日を仕切りなおすために耳を塞いで自分の部屋に戻る。
階段を上がる途中、手打ちで作った『お着替え音楽』が携帯から流れる。 新しいメールだ。
私は階段の途中で立ち止まり、それを開いた。
はづきちゃんからだった。
『授業終わり。 これから調べにいきます。 報告を待ってね。
できたら、ハナちゃんの居場所を調べたり、直に会ってきたいと思います。
遅くなりそうだったらもう一回メールするので、レレよろしく』
お願いします、とわたしは非常に申し訳ない気持ちになって、携帯メールに頭を下げた。
・・・わたしが今日休んだ理由。
それは、全部はづきちゃんの意向に沿ってのものだった。
「・・・あのね」
と、東京タワーの光がもう大分小さくなった所で、はづきちゃんが口を開いた。
内閣府、という建物から逃げてきたわたし達。
ここに来るまで誰も一切口を噤んだままだったから、その発言はわたしが待ち焦がれたものだったものだった。
わたしがウルトラ級のドジをやらかしたせいで、みんなは考え込むハメになってしまったのだ。
いらない不安を抱かせてしまって、心が押しつぶされそうだったわたしは即座にその空気を新しいものに変えたかった。
「なに? なに?」
わたしの声に、先頭のはづきちゃんは振り向く。
もう東京圏を外れていたので、魔法を解いてほうきでの飛行になっている。
「さっきのことなんだけど・・・ どれみちゃん、魔法が解けたとき、誰かと目を合わせたりした?」
・・・勿論、必死で記憶を掘り起こす。
「・・・ん、ううん・・・ ドアに挟まれたとき後ろから声はかけられたけど、挟まってたから振り向けないよ。
俯いて地面を見てたと思うし、向こうもわたしの背中とおしりくらいしか見てないと思うな・・・」
だから平気平気、とわたしは心の中で唱え、無理に安心を得ようとした。
「でも、あの室長室じゃなくて広い部屋にいた人は、どれみちゃんの顔じゃなくても頭は見てるでしょ?」
「広い部屋・・・最初のオフィスの部屋? ・・・ひ、人いたっけ??」
わたしのその心もとない台詞に、あいちゃんが「いたいた」と大きく頷いた。
「・・・もし、見られてたら・・・そのお団子頭、すごく特徴あるから・・・ きっと、バレてると思う」
「こ、これだけで!? なんで??」
わたしは長年付き合ってきたわたしのチャームポイントを両の手で押さえ、弁護するかのように叫んだ。
「たしかに、その頭をしている女の子なんて結構・・・いると思うの。 全国で言えば、珍しくもない髪形だとは思うし。
・・・でもね、ハナちゃんの周りにしる人間として特定した場合、どれみちゃんしかいないのよ。 ものの見事に。
わたし、ずっと考えていたんだけど・・・
もし、向こうが本当にあの場に人間が『居た』として調査を進めた場合、
きっとハナちゃんの身辺の人間から当たると思う。
だって、いきなりあの場に文字通り『沸いて出た』なんて、魔法以外に常識では考えられないでしょ?
向こうは魔法に対してとりあえずの理解はあったみたいだから、幻覚だとは思ってない・・・と、わたしは判断するわ。
そうすると、きっと魔女の身辺から当たる。 そうなると、どれみちゃんを特定するのに全然時間がかからないのよ」
わたしは唖然とした。
・・・自分で犯した失敗なのに、今までいないハナちゃんに謝ることだけしてて、そんなところまで全く考えてなかった。
「・・・テレビ、絶対に見られると思う。 ホラ、あの番組って今のところハナちゃんの姿を撮った唯一のものじゃない。
その番組に、どれみちゃんは『ハナちゃん委員』として出たし、インタビューも受けた。
それを見たら、間違いなくどれみちゃんに追求の手が伸びると思う・・・」
「・・・それに、どれみちゃんは魔法堂でバイトもしょっちゅうしとるしな・・・。
『全然関係ありまへん』て、言える状態やないもんな・・・。
向こうだってプロや、絶対にその辺も掴んで来るやろ・・・」
わたしはほうきから落ちそうになっていた。
何とか、何とか・・・ならないの・・・かな??
人間、追い詰められると火事場のバカ力が覚醒するようになっている。
わたしもこの時、最大最高の閃きが突然覚醒した。
「・・・そ、そうだ! むこうはさ、このお団子を目印にしてるわけでしょ??
だったら、このヘアースタイルを変えればいいだけじゃん!!
ね??
それに、今日着てたジャケットもスカートもすぐ捨てれば!!
そうすれば、声だって顔だってわからないんだから、絶対にバレないよ!!」
我ながら盲点を突いた逆転のアイデアだと思った・・・のだけど。
「・・・どれみちゃん・・・言ったでしょ? 向こうは、あのテレビを絶対に見るに決まってる。
そしたら、その日『お団子頭の子』だった子がハナちゃんの近くにいるって掴むのよ。
そして、その日以降いきなりヘアースタイルを変えたどれみちゃんを知ったら、ますます怪しまれるに決まってるでしょ?」
「・・・あう・・・」
かろうじて、グゥの音くらいは出せた。 『あう』だけど・・・。
「でも・・・ はづきちゃん? ちょっとええか?」
あいちゃんがそんな絶体絶命のわたしに、救助船を発進させてくれたようだった。
「アタシが向こうの立場だとしてな・・・?
それだけでどれみちゃんをそこにおった人間だ、と確定するんは早計なんとちゃうかな?
はづきちゃんも言ったとおり、お団子の女の子なんて結構おるやろ?
どれみちゃんはたまたまハナちゃんの近くにいたお団子で、それだけの子や、
という可能性もあると考えてもええんとちゃう?
・・・まあ、これはメッチャこっちにとって都合のええ考えやけど」
あいちゃん・・・ 大好き・・・。
「ええ。 そうなの。
だからね、どれみちゃん、もし何かどれみちゃんの方にそういった人が接触してきたら、
『知りません、わたし全然知りません』
って押し通すのが一番いいと思うの。
だって、今日だってここに来る前はドドに代わり頼んできたんでしょ?
だから調べればアリバイだって」
わたしはそのはづきちゃんの言葉を、もう少しで気楽にスルーさせるところだった。
くらっ、と目の前が揺れた。 ほうきが風に煽られたからじゃない。
わたしの意識が、足場を失って頭の中でフラついている揺れだ。
そんなわたしの様子を見ただけで、はづきちゃんもあいちゃんも言葉を失っている。
「・・・ど、どれみちゃん、もしかして・・・」
わたしはまともに顔を合わせられないまま、彼女達に対して帽子のてっぺんをむけて、
「・・・魔法堂にいくからって・・・普通に飛び出してきた・・・まんま」
と、遠く小さな明かりが見える地上に向けて、二人にとってその驚愕の事実を告げた。
情けなくて、本当に要領が悪くて、恥かしくて・・・
二人の呆然とする顔を見るのがとても怖かった。
「・・・となると・・・」
はづきちゃんの声。
責めるようでもなく、本当に困ったようでもなく、真剣に・・・わたしのフォローをしてくれる声だった。
ますます、わたしは申し訳なくて、自分がみじめで、涙が溢れてくるようだった。
「・・・どういう対応をしたらいいのか、もっとよく考える必要があると思う。
もしかして、あの人達は真剣にどれみちゃんを探さないかもしれないし、
もっと根本的なところでどれみちゃんの姿を確認した人がいなかったかもしれない。
なんにせよ、わたし、もう一度明日あの調査室行ってどういう調査をしているのか確認してくるわ」
「わ、わたしが行くよ・・・はづきちゃん! だって、これはわたしがやっちゃった事だから」
わたしが弾けるように顔をあげてそう叫んでも、はづきちゃんは黙って首を振った。
「ひょっとしたら、調査の手は明日すぐにでもどれみちゃんの家に行くかもしれないのよ。
そのとき、どれみちゃんがどこにもいない状態だった場合、かえってもっと怪しまれると思う。
ドドを身代わりにしても、ダメ。 きっと質問されるわ。 ドドじゃ受けられないでしょ」
はづきちゃんは話している内に考えがまとまってきたのか、どんどん問題点と『次、どうすればいいのか』をあげていく。
わたしとあいちゃんはただただ黙って聞くのみだった。
「私達が一番気をつけないとならないのは・・・ハナちゃんに不利な働きをしない事よね。
だから、もうやっちゃった事は仕方ないけど、
『ハナちゃんの他にも魔女らしい人物がいる』
と向うがハナちゃんに詰め寄ったとき、ハナちゃんがどう答えるか、に私たちはそれと矛盾した行動をしてはいけないの。
向うが『春風どれみという者は、魔女ですか?』とハナちゃんに質問する可能性は大いにあり得るわ。
もしハナちゃんが『ええ、そうです』と答えた場合、
私たちが必死に隠す事は返ってハナちゃんや魔女に対して不信感を与えてしまう。
ハナちゃんが『違います』と答えた場合、逆に私たちは全力で正体を隠さなければならない。
・・・とにかく、やっぱり早急にハナちゃんと会って、話し合わなければならないわ」
ごめん、とわたしは自分でも聞き取れないほどの小さな声で呟いた。
「・・・だから、どれみちゃん、悪いけど明日学校休んでほしいの。体調不良、ということで。
事がハッキリするまであまり迂闊な行動や言動はみんなの前でしないほうがいいと思うし、いつボロが出るか分からない。
体を悪くしていれば、もし明日に調査の手が回った時時間を稼ぐ事ができるから。
とにかく、私明日学校終わったらすぐに調べてくるから、それまでじっと待ってて。 ・・・辛いでしょうけど」
はづきちゃんがわたしを気遣ってそういう。
迷惑かけているのはわたし。 余計なお仕事を増やしてしまったのはわたし。
それなのに、はづきちゃんは自分がすまなさそうにそう言う。
「・・・はづきちゃん・・・あいちゃん・・・ ほんとうに、ごめん・・・」
わたしはそれしか言えなかった。
わたし達は魔法堂に戻ってきた。 上空から建物を見下ろす。
「たしか、盗聴器とかが仕掛けられてるんやったな・・・」
怪訝な顔であいちゃんがポツリと呟いた。
「カメラも、よ。 とにかく、ララやトトにそれを知らせなきゃ。
おそらく妖精という生き物も、みんなにとっては魔女と同じくらい仰天な存在だから。
見つかったら厄介かもしれないわ」
カメラが仕掛けられたのは随分前だ。 ひょっとしたら、もう手遅れかもしれないけど・・・
わたし達は再び小さな虫に変身して、窓の隙間から真夜中の魔法堂に侵入した。
「ララー? トトー??」
虫の声だから、あまり大きくはない。 もっとも、本当に大きな声だったらどこかに隠されているマイクに拾われてしまう。
あんまり効率がいいとは言えない探し方で、わたし達は魔法堂内を飛び回った。
いつもララ達がいるマジョリカの私室にも、台所にも、居間にも、店内にもいなかった。
捜索中、チラリと魔法堂店内の時計を見る。
・・・もう、夜中の1時を楽に回っている・・・。 家に帰ったら、一体何を言われるか分からない。
もしかして、捜索願いなんか出されていた日には・・・ 早速輪をかけて目も当てられない状況になる。
「は、はづきちゃん。あいちゃん。 ゴメン、わたし先に帰っていいかな? さすがにこの時間・・・」
と、わたしは脳内に浮かんださっきの最悪の状況を二人に話した。
「そ、そうね。 どれみちゃん、とにかく後ですぐメールするから」
「うん、こっちも状況を伝えるよ。 ・・・二人とも、本当に、今日は・・・ごめんね・・・」
「あんまり考えすぎんといてな。 どれみちゃん、とりあえず今日はおばさんにこってり叱られた後、とっぷり眠っとき」
あいちゃんがわたしの肩をポンポンして、そう明るく答えてくれた。
はづきちゃんも、『気にしない気にしない』と優しく微笑んでくれた。
何事も、なければいいと思う。
そう、本当に何事もなければ。
二人がこうして気を利かせて優しく言ってくれてるのの裏側には、
途方もない不安の雲がドヨドヨと湧き上がっているのをひた隠しにする為の事だと、鈍感なわたしでも感じる事ができる。
「じゃあ、お母さんに叱られてくるよ」
と、わたしも偽の笑顔を作って二人と別れた。
・・・家。 の、前。
玄関の明かりはおろか、外から家の中の明かりは全く確認できない。
・・・娘の帰りを心配するまでもなく、寝てしまったのだろか、我が両親は。
・・・それはそれで今はありがたいけど、なんだかちょっと切ないものを感じる。
ドアノブに手をかけた。
・・・って、カギ閉まってるし!!
180度回転しないノブは、完全に不良娘を締め出す意向を真正面から誇示していた。
「そ、そりゃないよ・・・」
わたしは更にさめざめとした気分になる。 今日は本当にどうしようもない一日だ・・・。
どうしようかちょっと考えたが、ボケっと突っ立っているわたしに攻撃するかのように吹き付ける風が決断を早まらせた。
やっぱり、カギをあけて中に入っちゃおう。 まあ、どうやって入ったか、などの言い訳は適当にごまかそう。
『寒い、もう寝たい』の自然的欲求は、意思や理論を超越する。
わたしは水晶玉を握り、小さく『ピーリカ』と唱えた。 カチャリ、とノブが返事をする。
そっと、ドアを開ける。
もちろん、玄関は真っ暗。
入ったら『こーらー!』と、タイミングよく両親が鬼モードでお出迎え、のようなお約束的展開もない。
普通に、寝静まっているようだった。 ドアをそっと閉め、カギをかけなおす。
もう一度、『ピーリカ』と唱え、今度は時間を止める。
止まった時の中を、わたしは疲れた足取りで2階の自分の部屋まで歩いていった。
ほんのちょっとの魔法が解け、わたしはぽっぷの部屋の前で進みはじめた時間の中に戻る。
ぽっぷの部屋から、薄い明かりがもれていた。 机の蛍光灯のだろうか。
家の前からは見えなかった。
ああ、ぽっぷは起きているのか、と思った。 とりあえず、自分の部屋に戻ろう。 もう、今日は何も考えたくない・・・。
そうドアを開け、電気を付ける。
・・・。
・・・。
・・・『わたし』とハナちゃんが、ベッドで寝ていた。
・・・。
予想だにしなかった光景に、わたしはしばらくバカみたいに立ち尽くした。
・・・ハナちゃんは、しばらくして復帰したマイブレインが『これは人間モードのトトです』と答えを打ち出す。
そう、わたしと絡み合うように妙な寝相で寝ているハナちゃんは、あの小学生モードのハナちゃんだったからだ。
ということは、このスッゴイ寝相でだらしなく寝ているわたしは、ドドなんだろう。
どうでもいいけど、ヨダレを遠慮なく流して堂々とお腹をご開帳してる寝相で、わたしの代わりをしてないで欲しい。
・・・は、置いといて。
どういうことなのか、一体。
・・・。
ちょっと再び些細な問題で悩み、その次わたしはもう一度廊下に戻って、ぽっぷの部屋のドアを開けていた。
ゆっくり、そっとだけど、開いたドアに妹は気付いたようだった。
「わ! お姉ちゃん!! ノックくらいしてよ!! ちゃんと!!」
小声だが、叫んでいる。 ・・・まあ、怒る雰囲気は分かる。
「ごめんごめん・・・」
わたしも今日何回謝っただろうか、いい加減言い飽きた『ごめん』を口にしてぽっぷの部屋に入った。
「あ、どれみ。 お帰り」
ぽっぷは机のライトで本を読んでいたようだった。
その傍に、同じく雑誌を広げてその上で寝てたのか読んでたのか分からないけど、ララがいた。
「ララ・・・ここにいたの? 探したんだよ??」
「私だって探したわよ!! もう、どれみ達、どこいってたの!?」
ララが逆に憤慨しながらそう言った。
「ど、どこって・・・ それは・・・」
「なんかね、大変なのよ。 魔法堂に変な奴等が続々やってきちゃって、
家のあちこちに怪しい道具を隠すようにとりつけちゃって、
なんかヤバイと思ったからこっちにトトと二人で避難してきたのよ!」
説明を頼んだわけでもないのだけど、ララは私が必要な情報をすべて口にしてくれた。
「ララ、偉い。 それ正解」
わたしが手を打ってそう誉めると、ララはなんだかよく分からない、という顔をした。
「お姉ちゃん、遅いでしょ? そう思ったら、ララがそう言ってウチきちゃってさ。
なんかちょっと面倒なことになってるのかなって思ったから、とりあえずドドを変身させておいたんだよ。
あまりにも遅いし、魔法堂にも行ってないって、どういうことよっ?
もう、連絡くらい入れてよ。 私も携帯あるんだからさ。
ハナちゃんの事心配なのは、私だって一緒だよ」
ぽっぷが口を尖らせてそう嫌味ッ気たっぷりに言った。
普段ならその態度に少しはカチンとくるんだけど、この時はそんな態度でもぽっぷが天使のように見えた。
「ぽっぷ、アンタも超偉い。 アンタのおかげでちょっと救われたよ・・・」
ララもぽっぷも、わたしの言動にさっきから『???』出まくりだ。
ぽっぷの頭をいとおしくナデナデしているわたしに、二人はついにガマンできなくなって、
「・・・だから、どういうこと!? 説明しなさい!!」
と見事に声をハモらせて怒鳴った。
わたしが今日の事を説明すると、二人とも口をアングリあけて、呆れの『あ』の字を上手く表現しつつ、
のちにわたしを責めたのは当然の結果で・・・。
とにかく、はづきちゃん達の代わりにぽっぷら二人の説教を頭ごなしに頂戴したわたしは、
ララ達の事とぽっぷがドドを身代わりにしててくれた事を、はづきちゃん達にメールした。
そして、ようやく・・・ベッドにつけたのだった。
昨日あれほど遠かったベッドが、今日は寝放題の好き放題。
いいのかな、わたしだけこんなにグータラしてて・・・。
と、今日何度目かだろう、そう思いながら、ベッドの中ではづきちゃんに返信のメールを打つ。
『はづきちゃん、無理はしないでね。 何かあったら、すぐに呼んで下さい。
何回も言うけど、ゴメンナサーイ! (T T)』
パタン、と携帯を畳む。 メールの着信音ですぐに起きれるように枕の横に携帯を置き、
わたしは再び惰眠の中に沈もうとしていた。