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<高校生編> わたしと魔女

<1>

 

結局、わたしにとって『魔法』って何なんだろう。

 

目の前の、赤い水晶のきらめきに自分の瞳を映し、わたしは考える。

ってゆうか、最近ボーっとできるような時間ができると、いつもそれを考えている。

魔法。

不思議な力。

・・・そう、これって、本当なら物凄くとんでもない力だ。

わたしはもう使い慣れちゃってる部分があって、その凄さを改めて感じるような新鮮味ある頭を持っちゃいないと思うけど、

魔法の力、魔法の成す事って本当に凄い。

凄い。 凄いんだけど・・・。

『でもなあ~』 と、心の中のもう一人のわたしがため息まじりに呟くのだ。

この凄い力は、所詮は『魔女界』の『魔女』が使う力であって・・・

この人間界に住む人間が使う力としては、どうなんだろう? と思う。

わたしは、人間にして『魔女』の力を使えるようになった。

最初・・・ そう、まだ『魔女』になる前の『見習い魔女』の時からそうだったけど、

わたしは随分と好き勝手な魔法を使ってきたな、と思う。

小学校の時はまだ見習いだったから、試験とか何やらと、色々なアクシデントを乗り切るための使い方が多かったけど、

中学生になって『魔女』として一人立ちした時なんかは、もう目も当てられない暴れっぷりだったなあ、

と、今のわたしはまるで他人事の様に思える。

まあ中学生っていったら思春期の真っ只中だし、何かと魔法に頼ろう出来事も多かった、というのが隠せない理由でして。

さすがに『人の心を変える』という禁忌の魔法だけは(なんとか)手を出さずに済んだものの、

結構スレスレな魔法はよく使ったかもしれない。

あの時も、あんな事さえも・・・。

・・・考えればたった2・3年前の事なんだけど、どれもこれも思い出すと顔から火が出るくらいにバカだったなあ

と、今の自分がそうクールに客観ぶれるくらいだ。

 

気付いたのは、いつなんだろう。

魔法を使うわたし達と、使わなかった他のみんなとの差を。

中学の時、何かあれば魔法に頼ったわたし。

魔法のような頼れるものがなくて、自力で悩んで、解決して、乗り越えていったみんな。

高校の受験が終わってから、わたしは愕然とした。

みんな、大きくなってた。 

中学が終わったとき、みんなはわたしなんかより遥かに大人になっていた。

そう、『人間』として、まるで魔女見習いの試験を一つ一つクリアーしていったように、

私の知るみんなはとても成長してて、まぶしく大きく見えていた。

・・・そしてわたしは、何も変わっていなかったように思った。

たしかに、魔法は随分上手になった。 貰った水晶玉も、ちょっとは大きく見える。

魔女服も似合うようになったし、簡単な魔法なら指を鳴らすだけで使えるようにもなった。

でも、わたしは『人間』。

私が生まれたのは人間界で、魔女界じゃない。

『人間』の『魔女』。

わたしは・・・  春風どれみは、最近『人間』でありたいと、思うようになっていたわけで。

そう考え始めたときから、結局『わたしにとって魔法って、何なんだろう』という壁が見えてきたのだ

 

「はぁ~・・・ ホント、何なんだろ」

声にして、そうため息と一緒に吐き出した。

そんな切ない情景が似合う、夕暮れのMAHO堂店内。

電気を付ける気力もないから、窓からの夕日が自由に店内を赤と黒の世界に染め上げているアンニュイな雰囲気。

誰一人として(お客さんがね)いない店内の、静かなカウンターに一人佇む美少女。

まさに、知的な物思いに耽ってくださいといわんばかりの状況に、わたしはそうやって酔いしれて・・・

「こりゃぁ!! 何やっとるんじゃどれみッ!!」

いきなり入り口ドアが開いたと思ったら、そんな雰囲気を察する事もなくいつもの怒声・・・。 

はぁ・・・。

「おかえり~、マジョリカ」

「おかえり、じゃないわい! 電気もつけんで、これじゃあ閉店してると思われるじゃろうがッ!」

ずかずかと買い物袋を下げたまま、マジョリカは店の中央までやってきて指を鳴らす。

そして、先程までの雰囲気は完全に消えうせ、店内は人工的な明かりで埋め尽くされた。

「どうせ、あのままでもお客は来ないって・・・」

「オマエはなァー!!!」

顔を近づけて、怒鳴る。

ってか、マジョリカの怒鳴り顔は5年経ってもやっぱりマジョガエル時代の方がしっくりくるなあ、と頭の隅っこでいつも考える。

5年前、マジョガエルの呪いは完全に消えた。 

よって、マジョリカやマジョルカのようなマジョガエル達は、みんな元の魔女姿に戻ったのだ。

その時の喜びっぷりは、まあ敢えて語らなくても分かるだろうとは思う。

で、それから色々あり、現在このMAHO堂は再びオーナーの名前を冠した『マキハタヤマリカの魔法堂』に戻っているのだ。

勿論、初代魔法堂と同じで扱う魔法グッズは雑貨。

今まで色々やったけど、やっぱりこれが一番『魔女らしい』という事で落ち着いた。

わたしは以前の小学生・中学生の時とは違い、今じゃ正式に従業員(ってか、バイトねバイト)の身。

ちゃんと出る時給の報酬が、わたしの毎日の小遣いの生命線であったりもする。

マジョリカと比べられるとナンだけど、これでも一応『魔女』だから、

昔よりは大分グッズの効果もあがってると思うんだけどね(頭髪が少しづつ無くなってはいるけど・・・)。

・・・でも、さっきチラっと言ったとおり、相変わらず魔法堂はMAHO堂、

ヒマな時は思いっきりヒマなんでありました。

「さっき、表の通りではづきを見たぞ」

マジョリカが買ってきた日用品をごそごそ出しながら言った。

「えっ?はづきちゃん?」

「そうよ。 学校の友達と一緒だったみたい」

買い物袋の中から、マジョリカの妖精・ララが顔を出しながら追述。

「はづきちゃん、寄ってくれればいいのに・・・」

「・・・学校の友達と一緒じゃったからな。 ここには寄りづらいじゃろうて」

マジョリカがちょっと寂しそうに言った。

はづきちゃんの通う高校は、わたしやあいちゃんが通う高校と違う。

わたしとあいちゃんは、公立の美空高校に受かるのが精一杯だったんだけど、

はづきちゃんは一人、本格的にバイオリンを修行する事を決心して、東京の音楽学校に通っている。

ちなみに言えば、ももちゃんは中学1年のときに再びお父さんの仕事の関係でアメリカへ戻り、

おんぷちゃんも中学から別々。 今はアメリカに留学してる。

つまり、この魔法堂に集まる『魔女』は、今のところわたしとあいちゃんくらいになってしまったのだ。

「はづきちゃんも、向こうの友達に営業してくれてるといいのに・・・」

そういえば最近、はづきちゃんと会ってないなあ・・・と、わたしは物悲しい事を考えていた。

高校一年のときは、たとえ違う高校であったって、よく通ってくれてたのに・・・。

そう、丁度今くらいの時間に・・・ と、私が時計を見上げた時、

カラン、とドアのベルが鳴った。

「いらっしゃ~い!」

ベルが鳴ったら『いらっしゃい』。 何とかの犬のように、わたしは無意識のうちにそう口から出していた。

ドアを開けて立っていたのは、女の人だった。

・・・以上。

わたしがそれを認識した直後、凄い勢いで入り口のドアはバタン!と閉められていた。

思わず、目が点になるみんな。

「・・・何だったの?」

不思議な静寂を一言目に破ったのは、ララの素朴でいつつ的を得た言葉。

「な、何かあたし、おかしかった??」

『いらっしゃいませ』を言ったのはわたし。 まさか、その声が、態度が、とても気に入らなくて出て行ったとか・・・

「オマエの接客が全然なってないから逃げられたのじゃっ」

と、マジョリカ定番の小言。

さっきまでチラっと自分でそう思って不安になっちゃってたけど、マジョリカに指摘されると却ってそんな事ちっともないように思える。

「なにさぁっ!! そんな事全然ないもん!! きっと、マジョリカの顔が怖くて逃げちゃったんだよ!!」

「この顔のどこが怖いっていうんじゃ!!」

「マジョガエルのほうがよっぽど愛嬌あったっつーの!!!」

 

・・・。

この時一旦魔法堂の戸を開けた彼女は、まだその扉のすぐ前に佇んでいた。

彼女は中の騒がしい声を耳にして、なんだか再び取っ手を引くのがすごく居心地悪いような気分になった。

「・・・。 変わってない・・・」

何故か涙声になりながら、彼女はそう一言扉の前に残すと、身を翻して魔法堂を後にした。

 

 

 

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