<7>
午後はHR。
大騒ぎだった屋上でのちょっとした昼食会、何だかんだ言ってクラスのほぼ全員があそこに集まってご飯を食べた。
新学期早々、クラス替えをしたばかりの環境としては異例のまとまりだと思う。
まあ、これも… ハナちゃん見たさというか、ハナちゃんにみんな興味深々だからだってのは分かるんだけど…。
それでも、私達は楽しかったからいっか。
ハナちゃんも別に自分が見世物のようになってる事を、そんな気にしてないみたいだったし。
ものすごく人当たりよくて、人の裏を探らないような素直な社交術は、何だか6年生の時のハナちゃんそのまんまだった。
…ま、それはいいとして。
その後、変な魔法を使って生徒を事もあろうに教室の外に放り出したってのはマズかったみたいで、
ハナちゃんは職員室に早くも呼び出されていたけど…。
今、隣に座っている彼女はいつものように、おそらく先々代の女王様譲りであろう優雅な微笑を浮かべながら
平然としているので、それほどこっぴどい事を言われた訳ではなさそうだけど…。
正直、先生もどう接していいか分からないんじゃないかな、とは思う。
私が先生だったとして、一体この摩訶不思議な方に何をどう注意しろというのやら。
考え事をしている間、HRの内容はどんどん進んでいる。
今日の議題は、各委員を決めることだ。
すでにクラス委員は最初に決められ、例によって先生の無慈悲な指名から一方的選ばれていた二人が議事をやっていた。
迷惑な推薦、適当な多数決が数回繰り返され、ハズレクジを引いた不運な人たちの名がどんどん黒板に羅列されていく。
こういう時、わたしみたいな特に目立たない生徒は得している。 …まあ、ちょっと寂しいモンがあるけどね。
「では、次… 体育祭実行委員に立候補する人は」
一応、お約束で委員長がそう発言する。 どうせ誰も手を上げる人間などいないのだが。
「ねえ、どれみ?」
退屈なのか、ハナちゃんが話しかけてきた。
「うん? 何?」
「体育祭っていうのは、運動会の事かしら?」
「ん、そうだよ。 小学生の時は運動会って言ってたけどね。
中学からは呼び名がもっともらしく変わってんの。 ウチの高校は春に体育祭をやるよ。
ちなみに秋は球技大会」
「へえ、そうなんだ。 …なんだか、楽しそうね」
「え、何? もしかしてハナちゃん委員やりたいの? 止めときな、委員って面倒くさくていそが…」
遅かった。
ハナちゃんは臆面無く右手をあげていた。
「あの、私がやってもいいですか?」
おおおおお、と、クラス中がどよめく。 …この2日で何回目なんだろうか…。
「ま、巻機山がか? 巻機山は、体育祭って分かってるのか?」
先生がちょっと慌てたように言った。
「あ、はい。 小学校の運動会みたいなものですよね?」
「そうなんだが… 巻機山、その… 委員ってなんだか分かってるよな?」
端から聞けば人を小馬鹿にしたような質問だが、先生の心配は最もだ。
「はい、これでも私、小学生の時は学級文庫係、修学旅行の班長をしたこともあります」
ハナちゃんは胸を張って(?)凛として答えた。
うおおおおおお!とクラスが再び唸り、満場の拍手が響き渡る。 …絶対にみんな、楽しんでる…。
「いいじゃんいいじゃん、巻機山さんにやらせようぜ! 俺、体育祭が楽しみになってきたよ!!」
「賛成賛成!! 巻機山さんがいいと思いまーす!!」
ふざけ半分、乗り半分、あんまり真摯な意見は無いような気もするんだけど、
ハナちゃんは凄く嬉しそうに『お願いします』と頭を下げた。
体育祭実行委員の下には、『巻機山 花』と名前が書かれた。
わたしは唖然としてハナちゃんの顔を見る。 ハナちゃんは凄く満足そうだった。
…ま、これも…ハナちゃんの思惑の内ってやつなのかな…。
こうしてその他色々な委員が決まっていき、最後の保健委員の名前も埋まった。
「あ、それとな」
全部の委員が決まったところで、先生は付け足すように黒板に文字を書く。
そこには、『巻機山委員』と、物凄く訳の分からない委員名が書かれていた。
「みんなも知ってる通り、何ていうかその、巻機山は普通と違う。 魔女だ。
話に聞けば、昔は少しだけ人間世界に住んでいたらしいが、その、な? 巻機山」
「はい」
よく分からない問答が先生とハナちゃんの間で行われている。
「つまり、今日みたいなああいう事をされると、ちょっと困る。
ついては、巻機山があんまり変な事をしないようにストップをかける人間、
巻機山が何か学校社会で困った事があった場合、クラスの中でフォローしてやれる人間が必要だ」
「恐れ入ります」
ハナちゃんは深々と礼をする。
「というわけで春風」
「は、はい?」
いきなりわたしの名前が呼ばれる。
「妹尾」
「は、はい」
「小竹」
「へ…」
「小泉」
「あっ、はい」
「オマエ達、小学生の頃巻機山と同級生だったんだろう?
巻機山も、昔馴染みの者の方が気兼ねしなくていいだろう。 よって、オマエ達は『巻機山委員』に任命する。
主な活動は、巻機山が騒動を起こさないようにすること。 分かったな」
有無を言わさず、先生はその妙ちくりんな委員の下にわたし達4人の名前を書いた。
「は、はあ…」
ハナちゃんを見る。 ハナちゃんはにこっと笑って『よろしくね、巻機山委員さん』と呟いた。
…。
まあ、もともとそんな役職なんて与えられなくたって、ハナちゃんの面倒はわたしが見るつもりでいたんだから、
別にいいけど…。
でもなんか体よくハナちゃんの『犬の首輪』みたいな扱いにされたのは、やや気が重かった。
「よし、以上。 前期の委員はクラスの代表として責任を持って頑張るように。
クラスのみんなはそれを支えて協力するように」
先生がそう締めた処で、丁度終了のチャイムが鳴った。
決まったばかりのクラス委員が、『起立』『礼』の号令をかける。
今日一日の授業は、おしまいだ。
放課後。
放課になったらなったで、今度は色々なところから一目『魔女』ハナちゃんを見ようと、たくさんの生徒がやってくる。
中にはずうずうしくも勝手に教室に入ってきて、ハナちゃんを囲むグループ、
ハナちゃんに何故かサインをねだる人間もいたりして、適度に勘違いしている輩が次から次へとハナちゃんを足止める。
律儀にも、ハナちゃんはその全員に丁寧な受け答えをしていた。
「ハナちゃん、動かれへんなあ」
あいちゃんがカバンを下げて、わたしの机にやってくる。
「うん…。 でも、まあこれがハナちゃんのやろうとしている事なんだから、いいんじゃないの?」
「アイドルになるんなら、おんぷちゃんのトコに行って修行した方がえかったんちゃうかな」
「別にアイドルやりに来たわけじゃないでしょが…」
「冗談やて。 ほな、アタシは部活行くさかい。 どれみちゃん、ハナちゃん開放されるまで待ってるんやろ?」
「うん、そうだけど?」
「ほなら、ちょっと頼まれて。 ハナちゃんに、終わったら校庭のアタシんとこ来てって言っといてくれへんか」
「ん、いいよ。 何? 何かするの?」
「いや… 今日、ハナちゃん家に呼ぼ、思てな。 ウチの家族、揃ってるとこ見せるの初めてやろ」
「ああ… そだね」
「ちょっと人間愛について、ハナちゃんに深く語ろうかと思ってんねん。
なはは、ウソや。 ホンマはちょっと独り占めしたいだけやねん」
「あ、ずるーっ。 わたしもハナちゃん泊めよっと」
「早いもん勝ちやねん。 今日はもろたで。 んじゃ、よろしく!」
お互い手を振って、あいちゃんは教室をいそいそと出て行った。
…会話の間にも、ハナちゃんを囲む人間の数は減らない。 はぁ、と小さくため息をついた。
「春風」
そんなわたしに、今度は小竹の声。 後ろにはまりなちゃんもいた。
「やあ、委員の皆様。 おそろいで」
「何言ってんだよ。 オマエもだろ」
そう言って小竹は空いているわたしの前の席に勝手に座った。
「そんでさ、委員として一つ提案なんだけど」
「何よ」
「遊びにいこうぜ」
「はぁ??」
脈絡が無い。
「いやほら、なあ小泉?」
「あ、うん。 さっきちょこっと二人で話したんだけど、クラスの親睦会も兼ねて…
その、巻機山さんを中心にして、みんなでどこか遊びにいこうかなって」
「あ、いいねそれ。 ハナちゃんもきっと喜ぶんじゃないかな」
「だろ? 俺は妥当なところでボーリングがいいと思うんだけど」
小竹はすでに遊びモードにスイッチが入っているようだ。
「その後軽く一杯飲んだりしてさ」
「あのねー。 サッカー部の打ち上げじゃないんだから。 んなことできるわけないでしょが」
「まあ何にしろいいじゃんか。 んじゃオマエもOKって事でいいんだな?」
「別に構わないよ。 幹事は小竹やってよね」
「あー、俺ぇ? オマエが仕切れよー」
「自分で言うのもなんだけどさ、わたしがそんな事出来ると思ってんのアンタ?」
「…ま、まあそうだよな」
素直に納得されてもなんか腹立たしい。
「じゃ、妹尾だ。 アイツなら得意そうだし。 言われなくても仕切りそうだし。 関西人だし」
「殺されるよ…」
「ま、まあまあとにかく今はそういう企画あるって事だから。 明日もっかい4人で集まって話さない?」
まりなちゃんが無難にまとめた。
「そうだな。 あ、んじゃ春風ぇ、妹尾に一応話通しててくれよ。
あと、それとなく巻機山にどういう遊びがしたいか聞いといてくれねーか?」
「あ、うん。 それくらいなら」
「オッケー。 頼んだぜ。んじゃ俺部活」
「じゃ、明日ね。 どれみちゃん」
あいちゃんの時と同じように、来客は言いたいことだけ言うと去っていった…という感じだった。
ハナちゃんは、と言うと… 相変わらず、騒がしい人山の中に埋もれているらしい。
こりゃ、まだ時間がかかりそうだな…。
わたしはそう思って、カバンを机の上に置いて席を立つ。 何処かで時間を潰してこよう。
そう思って教室を出ようとすると… 教室の入り口で、とんでもない人と鉢合わせした。
「!! …マジョリカ!?」
「どれみ??」
わたしとマジョリカは、とりあえず屋上に上る。
まだ風のやや冷たい屋上には、人は居なかった。 二人でフェンス越しに美空町を眺める。
この屋上からの風景は、おそらく美空町で1・2を争うほどの景色なはずだ。 伊達に長い坂道を登らせている訳ではない。
「どしたのマジョリカ。 そんな似合わない洋服なんか着ちゃって」
ぷぷ、とわたしが吹きだすと、マジョリカは恥ずかしいんだか怒ってんだか、顔を赤くして答えた。
「仕方ないじゃろう。 ワシが一応ハナの、この世界での身元引き受け人という事になっておるんじゃ。
あまり魔女魔女しい格好をして怪しまれたらかなわん」
「…え? マジョリカがハナちゃんの身元引受人?」
「そうじゃよ。 今のところ、ハナにはこの世界で自分の存在を証明するものが何一つ無いからの。
魔法で騙すもの限度があるじゃろう。 だからワシが買って出た」
「え、でもいいの? それだとマジョリカにも何かしら影響があるんじゃないの?」
「あるじゃろうな。 じゃが、まあ心配いらんわい。
一応ワシもこの世界で50年根付いている魔女じゃ。 簡単にボロは出さん。
丁度戦争のどさくさで、人間界の戸籍も取っておる。 近所にも『魔女好きの変わり者のばあさん』で通っておるから、
ハナの身元を引き受けるのにさしての面倒もないわい。
人間界に一人で来た本物の魔女を、魔女マニアの変なババアが保護するのはおかしい話ではないじゃろう?」
「そうだけどさ…」
風が吹いた。 冷たいそれに、わたしとマジョリカはちょっと身を縮める。
「ハナはな、今学校から試されておるんじゃよ」
「え…?」
「最初の編入の時はな、魔法を使ったおかげで何の問題もなかったのじゃが、
自分を魔女と明かしたと同時に、 この学校に魔法を使って入ったという事も自ら校長含む教師達にバラシおったんじゃ」
「…」
「ハナにしてみれば魔法を使って人間達をだましつづける事は、
自分のやろうとしている事に何の意味も成さない行為なんじゃろう。
人間の社会に溶け込む事に、一つの嘘も不正もあってはならないそうじゃ。
ハナは魔法の力を借りず、この人間界に『巻機山花』の証明を刻みたいんじゃと。
そこから初めて、広い交流を目指していける…とな。
あやつが最初にここに来て、ここの校長相手にそう言って必死に頭を下げ説得したそうじゃ。
わしも今その事で、会ってきたところでの」
「そうなんだ…」
あの時のハナちゃんの試練って…そういう事だったんだ。
こうして改めてハナちゃんのしてる事を言われてみると、とんでもなく難しい事のように思える。
わたしはこうして今、何の疑問もなく登校しているハナちゃんをにこにこしながら見ているけど、
その事実一つ取っても、ハナちゃんは一苦労をしているのだ。
あまりの自分の浅慮に、少しやるせなくなった。
「ハナは1ヶ月の検分期間を与えられておる」
「1ヶ月…? そんなに短いの…!?」
「いや、ワシは何も予備知識が無い一学校の校長という身分にしては、破格の決断だと思うぞ。
本来なら、ハナの言い分も何も理解しようともせず放り出されてもおかしくない。
ここの校長が頭の柔らかい人間でよかったわい」
「1ヶ月…」
「その期間、ハナがこれと言って問題もなく、普通の生徒として…人間として、皆と生活していけるようじゃったら、
特別に市の方にも話を通して、どんどん上にハナの事を認めさせるよう協力もしてくれるらしい」
「本当?」
「…話ではそうなっとる。 まあ、人間のそういった政治の事なんぞ、ワシにはよう分からん。
じゃが一つだけ確実なのは、ハナの言う通り小さな社会から少しづつ人間に認められ、
根付いていくしか方法は無いという事じゃ。
すなわち、この1ヶ月ハナがしっかりそれを踏まえた生活ができるかどうか。 それだけの事じゃ。
しかも、普通に人間として暮らしていったのでは、認められるのはハナ個人だけになってしまう。
ハナの目標は魔女全体が人間にもう一度認められる事。
そのためには、魔女として人間社会に溶け込まなくてはならぬ。 問題なのは、そのバランスじゃよ。
魔法を使いつつ、人間として生活する。 ハナの今の試練は、そこなんじゃ」
マジョリカの言葉に、わたしはただただ絶句するだけだった。
聞けば聞くほど、ハナちゃんのやろうとしている事… それがどんな大きさなのか、形も見えてこないくらいになってくる。
「ねえ…」
「ん?」
「わたし達の出来ることって…何かな?」
「…」
「わたし達、どうやったら… どんな助けをしなきゃならないのかな?
わたし…全然分からないよ。 そんなハナちゃんの仕事、正直理解するのだけで精一杯で…」
マジョリカは寒くなったのか、屋上の出口の方に歩き始めた。
「どれみ、ハナに今一番必要なのは… 具体的な知恵でも、魔法でも、助けでもない。
おまえ達のような信頼できる人間が、ハナを見守っていてくれるだけでええんじゃ。
ハナに必要なのは、心の拠り所なんじゃからな」
こころの…拠り所。
「誰しも、寒くなったら帰る家がある。 その家がオマエ達じゃ。
ほれ、いつまでもこんな寒いところにいたくないわい。 いくぞどれみ」
「…うん」
わたしとマジョリカは二人、屋上を後にした。
教室に戻ると、多少閑散としていた。 そろそろ赤くなり始めた太陽の日差しが窓に色づいている。
ハナちゃんは2・3人の女子生徒とまだお話中だった。
「…あ、どれみ。 …と、マ…リカおばあちゃん」
ハナちゃんがそう言って立ち上がると、女子生徒達は気を遣ったのか『じゃあね』と言ってハナちゃんを解放してくれた。
「なんじゃ、友達か」
「ええ。みんなとてもいい子ばかりだわ。 …まあ、多分まだ珍し半分っていうのもあるんでしょうけど」
微笑むハナちゃん。 少しか弱い陰を感じたのは、気のせいだろうか…。
「お話は?」
「ああ、済んだぞい。 一応、信用してもらえたわい。
ま、こうして正式に身元引き受け人になったんじゃ、何処に住んどるのか知らんがまた魔法堂に住むとええ。
本物の魔女がおるとなれば、客足も売上もウッハウハになること間違い無しじゃからのう!」
カカカカカ、とマジョリカは卑しい笑いをあげた。 …ため息。
「…な、ハナ。 遠慮はいらん。 一人で寝るのは寂しかろう」
ポン、とハナちゃんの肩に手を置く。
ハナちゃんは少し俯いた後、小さく『ええ』と答えた。
「ハナちゃーん!」
影が長くなっているのがハッキリ分かる、校庭。
そのわたし達に向かって伸びている影を追いかけるように、Tシャツ・ジャージ姿のあいちゃんが走ってきた。
「あいこ、練習ご苦労さま」
「あいちゃんまだ部活?」
「あ、うん。 なんや、結構遅かったやん。 何してたん?」
あいちゃんは爽やかな汗をふきつつ運動部特有の元気一杯さ加減でそう言う。
「ハナちゃん、全校生徒につかまっちゃって。 なかなか抜け出られなかったんだよ」
「色々な人と、お話ししたのよ」
「あ、そうそうあいちゃん。 ハナちゃんも。
実はさ、今度クラスのみんなで親睦会を兼ねて、どこかに遊びにいこうっていう話が出てさ」
「へー、ええやん。 それええわ。 パーッと遊んで、みんなでとりあえずの体育祭に向けて結束を固めるちゅうんやな?」
「ま、それもあるけど。 巻機山委員としては、ハナちゃんに少しでも高校生の遊びとゆうものを理解してほしくもあり」
わたしの声に、ハナちゃんは目を輝かせた。
「え? 私も一緒に行くの?」
「あったりまえじゃん!!
大体、この企画は小竹とまりなちゃんが立てたんだよ。 明日にでもみんなに聞くから。
あ、幹事はあいちゃんやって、って小竹言ってた」
「ああ?? なんでアタシやのん??」
「黙ってても仕切りそうだから、関西人だから、だって」
「…アイツ、明日殺す」
「あはは… まあ、とにかくそういう話があるんだよ。 基本的に、ハナちゃんが行きたいところってゆうことで」
「え? 私が…選ぶの???」
「うん。 まあ、今日一日あいちゃんとじっくりお話してみてよ。 ね?あいちゃん」
「あ、そう! そやそや!! ハナちゃん今日な…」
夕日が落ちていく。
わたし達三人の影は、一つになって校舎の方に伸びている。
ハナちゃんは嬉しそうに、笑いながらあいちゃんと話している。
わたし達の、できること― それは、きっと…今は良く分からないけど、
このハナちゃんの笑顔がいつまでも続くように、ハナちゃんがハナちゃんに戻れる場所であり続ける事なんだ、と思う。
がんばれ。 ハナちゃん。