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ハナちゃんが学校に通ってから、6日目の日曜日。
その満場の『ハナちゃんコール』は、この宴会が最高潮に盛り上がってきた今、まさに出るべくして出た。
本日何回目の『ハナちゃんコール』だろうか? ボーリング大会で2回、ゲーセンで一回、路上で一回…
そして、この居酒屋で今まさにプラス一回。
わたしは酔っ払いつつある頭を何とか働かせて記憶を掘り起こしていた。
クラスメイト、総勢30人。 ほぼ全員が声を揃えてのコールに、ハナちゃんは照れながらもにこにこしつつ立ち上がる。
わーっ、とさらに盛り上がった拍手が場を震撼した。
「えーっ、みなさま今日はクラスの親睦会を兼ねた、我等『ハナちゃん委員』の企画する
『ようこそ魔女さん!』歓迎会に全員ご出席いただき、真にありがとうございました!」
顔を赤くしてハイテンション一直線、の小竹がハナちゃんの脇に立って前口上を述べる。
あちらこちらから口笛その他が飛んだ。
結局あいちゃんに命を狙われた小竹は、自分で幹事をする事になった。
今回のボーリング場、そして大学生を偽って予約したこの隣町の居酒屋の手配もすべて小竹の手腕。
その働きに、ちょっと小竹ポイントを上げとこう。
「それでは本日のメインイベント、30人一本勝負!! ハナちゃんに質問コーナー!!!!」
事あるごとに、これ以上無いくらい盛り上がる。 お酒の力は偉大だ。
「みんな、不思議の少女・ハナちゃんに聞きたいことはたくさんあるだろう!
そんな疑問を、酒の力も借りてぶっちゃけて質問してみよぉー!!(わーっ)
一人一質問義務!! こっちのテーブル側から、ぐるっと一周順な!!
じゃあまずは俺が手本を見せます!!(いけー、こたけー)
巻機山さんにしつもーん!」
「はいっ」
ドランカー小竹のテンションもそうだが、ハナちゃんの平然としたいつものスマイルもある意味凄い。
ハナちゃん、ちゃんと飲んでたはずなのに…。 お酒、強いんだろうか?
ちなみにわたしはもうダメぽ、でこっそりソフトドリンクを飲んでいる始末だ。 高校生なんだから、仕方ない。
「巻機山さんは、魔女という事ですが!!! …好きな男性のタイプを教えてください!!!!」
お約束の質問だけど、場内はどっと沸いた。
だけど、何気に興味のある質問でもある。 やるな小竹。
「え? 男の人のタイプですか? …まさか一番最初にそんな事を聞かれるなんて、思いませんでした」
何やらもじもじしているハナちゃんの仕草が、どうやら男性陣のハートを速射したらしい。
ありとあらゆる処から、『オレー!オレー!』と指差し立ち上がる男の子が沸いて出る。
「アタシー!! アタシー!!」
…一部、勘違いした関西弁の女生徒もそれに加わっているが…。
「妹尾男ちゃうやん!!」
小竹に突っ込まれ、失礼しましたーと引き下がるあいちゃん。
コテコテの関西系も、皆には爆笑を持って受け入れられている。
…というか、今のこの場なら往年のSOSトリオでさえ受けをとれるのではないだろうか…。
「巻機山さん、どうですか!?」
小竹がマイクのつもりで見立てた割り箸をハナちゃんに近づける。
「や、やっぱり、愛があって優しい人がいいです」
ハナちゃんがそう言った直後、『オレだぁー!!!』と言ってほぼ全員の男子が立ち上がった。
…やれやれ…。
今のハナちゃんなら、おんぷちゃんに勝てそうだ。
こんなハナちゃんにとってはさぞや迷惑なノリで、次々とクラスメート一人づつが質問していった。
内容は半数受け狙い、半数マジメといったところ。
「ハナちゃんはどういう魔法を使えるんですか?」
「ハナちゃんは人間なんですか?」
「ハナちゃんは何処から来て、何をするために学校にいるんですか?」
などと、かなり核心を突いた質問も出た。
それに対しては、ハナちゃんは『最後にまとめてお答えします』と微笑んだだけだったけど。
ちなみにわたしは、
「ハナちゃんのお母さんはどんな人ですか?」
という自分で死に穴を掘ったようなモノ。 ハナちゃんはその質問にやけにニンマリしながら、
「とっても優しい人。 いつまでも傍に居て欲しい人です」
と答えてくれた。
『まかしときぃ!! ずっと傍にいたる!!』とあいちゃんが叫び、即座に小竹に突っ込まれていた。
…わたしはアルコールの入ってないグラスに口をつけ、更に顔を真っ赤にしていた…と思う。
質問はぐるりと一周し、小竹がエッヘンと声を整える。
「えー、それでは!! 巻機山さんから、我等2-Aのみんなに魔女として何か一言をいただきます!!
みなさん拍手!!!」
拍手喝采、雨霰。 ハナちゃんは丁寧に一礼し、小竹がみんなの拍手を静めた。
「…みなさん、私は今とても幸せです。
改めてお話しますが、私は魔女です。
厳密に言うと人間ではないのですが、姿形や人間界で言うと『生物学』的に、私は人間と変わりありません。
違うのは、魔法を使える事ぐらいです。
私の使う魔法は、自らを変化させること、ほうきに乗ったりして飛ぶこと、かんたんな物をその場に出すくらいの事です。
以上は、もうみなさんに既にお教えしてある事です。
それにも関わらず、私をこんなに暖かく迎えてくれて、本当に、本当に嬉しいです。
みなさん、本当にどうもありがとう」
ハナちゃんが改めてお辞儀をすると、盛り上がるだけとは違う暖かい拍手が少し続いた。
「先程も質問があがった事なのですが、すべてお話いたします。
私はこの『人間界』の住人ではありません。
私は、私のような『魔女』だけが住む、いわば『魔女界』という世界から来たのです」
おおお、と当然ながらの声があがる。
確かに、ここからはみんな…いや、事情を知らない人間にとって、理解の及ぶのが難しい話だ。
「昔私達魔女は、この人間界で人間と仲良く暮らしていました。
ですが当時の悲しい出来事により、魔女は人間に迫害され、魔女界も人間界との交流を止めてしまったのです。
それがおよそ、500年前の事。 これは人間界でも歴史に記された出来事です。
私達魔女は、魔法を使えます。
おそらく、今の人間界の科学という力を持ってしても及ぶことの無い、万能な力であるでしょう。
それゆえ、私達は『自分一人の力で何でもでき、生きていける』という観念が心にあるのです。
魔女は一人で普通なのです。 生まれる時も、一人です。
魔女に生みの親、というものは存在しません。 魔女は魔女界の花から生まれるのですから」
みんな、ポカーンとしてハナちゃんの言葉を聞いていた。
わたしにしては、それは全く嘘偽りの無い、真実の内容。
体験して知っている身としては、正直酔いも吹き飛ぶ程に暴露しているのでハラハラである。
だがみんなにしてはどうなんだろう。 これは単なる、お酒の席でのメルヘン話にしか聞こえていないんじゃないだろうか?
「私達魔女が、そんな魔法という一見万能な力を持ちながらも、人間の世界に来て、
こうして人間と交流するのは何故でしょうか?
実は、そんな一人ぼっちの魔女だからこそ、人間の持つ『愛情』にあこがれるのです。
人が人を思いやり、支えあい、協力しあい、共に幸せになれる。
そんな人間であれば普通にある、愛という感情。 私達には、それが欠けているのです。
故に、私達はそれがとても羨ましいのです。 ですから、私は―」
ハナちゃんは、ゆっくりとみんなを見回した。 そして、優しい笑顔。
「魔女がみなさんと、お友達になれるように。
魔女が、人間の持つ愛に一人でも多く触れられるように。
人間のみなさんが、私達魔女に愛の素晴らしさを教えてくださるように。
現在閉ざされている、魔女界と人間界の交流の復興を目指して、 私は代表でこの世界にやってきました」
場が、妙にしーんとしている。
空気が先程までの宴会のものと、まるで違う。 わたしはその変化に微かな不安を覚えた。
「ですからみなさん。 どうか、私は魔女ですが、たくさん仲良くしてください。
人間の持つ暖かさ、私にたくさん教えてください。
魔女とみなさんが共に仲良く出来るように、どうかみなさん、よろしくお願いします」
ぺこり。 最後のお辞儀だろう。
ハナちゃんの話は終わったのだ。
にしても、静かな空気…と、思ったのもつかの間。
「…うぉぉぉ!! すげえぜハナちゃーん!!」
誰が言ったのか知らないけど、その言葉と共にノリだけではない、
ものすごい拍手がわたしの感じていた空気を見事に吹き飛ばした。
わたしは全員を見る。
みんな、優しい目、真剣な目で拍手をしてくれている。 輝きのない拍手は一つも無い。
同じようにキョロキョロしていたあいちゃんと、わたしは目が合った。 喜びが、胸の内から溢れて出た。
次の瞬間、私も持てるあまりのエネルギーで手を鳴らしていた。
「オレはハナちゃんを応援する!!」
「ハナちゃーん!! 私達がついてるわよ!! がんばれー!!」
「ハナちゃんに一票!! みなさん、巻機山ハナ議員を国会に上げようー!!」
様々な声援が乱れ飛んだ。
中には勘違い炸裂したおバカでおおげさなものもあったけど、それは自然に一つの声にまとまっていった。
『ハーナーちゃん!! ハーナーちゃん!! ハーナーちゃん!! ハーナーちゃん!! …』
拍子に乗せての、ハナちゃんコール。
ハナちゃんは何時の間にか涙目になっていて、小さく『みんなありがとう』と言って顔を俯かせた。
みんなもそれを聞き逃さず、さらに大きな拍手でハナちゃんを暖かく包んだ。
2-Aのクラスのみんなの中という小さな小さな社会ではあるが、ハナちゃんは最初の一歩を見事に踏み出せたのだ。
わたしも思わず、涙をこぼしていた。
「いやー、今日は最高やったなあ…」
帰り道。
途中一緒だった小竹、まりなちゃんと別れ、わたし・あいちゃん・ハナちゃんの3人は清清しい裏町の夜道を一緒に歩いている。
「そうだね。 宴会も無事脱落者が出なくてよかったし」
わたしは自分の水晶玉を見る。
今日はクラスメートが悪酔いしないように、こっそりあいちゃんと二人で魔法を使っていたのだ。
せっかくのハナちゃん歓迎会、男子が大暴れでもしてブチ壊されたらたまったものでもない。
…でもあの様子を見ると、ウチのクラスにはそんな事をしそうな男子はいないようにも思える。
「にしても、本当に今日はおもろかったわ。 ハナちゃんには色々笑わしてもろたし」
「ひ、ひどーい… あいこ…」
「あー、たしかに最初のボーリングでは笑っちゃったね。
ハナちゃん、レーンを歩いていってピンの目の前から投げようとするんだもん」
「だ、だってみんなルール教えてくれなかったじゃない!
いきなり『最初の記念すべき一投目は、巻機山さんに行っていただきます』って言われて、それっきりだし…」
「わたしが教えたじゃん」
「どれみには『ボールでピンを全部倒すだけだよ』としか言われてませんっ!」
「ってか、小学生の時にやらんかったけ? ボーリング」
「トゥルビヨン様の記憶とまざってしまって、あまり細かい事はよく覚えてないのよ」
むくれたようにハナちゃんは言った。
「でもえらいよハナちゃん。 魔法使ってないし。
わたしだったらさすがに1ゲーム全ガーターは避けたいから、最後には使ってでもピン倒したね」
「伝説を生んでしもたもんなあ… 魔女はボーリング苦手やと思われるで」
「ほかにも色々あったよね~」
「もう… 二人とも意地悪なんだから…」
頬を膨らませて、スネた。
…ああ、このクセ、すごく変わってない。 わたしはちょっと胸の内が熱くなった。
あいちゃんもそうみたいだ。 二人でハナちゃんをスネさせ、ときめいているという変な図が出来ている。
「…みんな、いい人ばっかりみたいだね。 ウチのクラス」
何とは無しに、そう言いたくもなる。 あいちゃんも『そやな』としみじみと頷いた。
みんなの暖かい拍手。 あれは本物だ。
あれが、ハナちゃんが人間界に戻ってきて、魔女として、初めて貰った仕事の報酬。
これ以上ないくらいの成果だとわたしは思う。
都合のいい考えではあるかもしれないが、この先のすべてにおいて、
ハナちゃんがあんな拍手を貰いつづければいい、と強く思う。
人間にはたしかに色々な人がいて、色々な考えを持っている。
こう簡単にハナちゃん…魔女を受け付けてくれない人も、勿論いるだろう。
でも、ハナちゃんが言った通り… 人間には、誰しも『愛情』というものがある。
わたしはそれだけは同じ人間として強く信じたい。
情に訴える、という言い方は好きではないけど、ハナちゃんはまさに人間の持つそこに期待しているのだろうと
今日ようやく分かったから。
愛の無い人間はいない。
それを大前提において、ハナちゃんは必ず人間と魔女は仲良くなれるという確信を得て道を歩んでいるのだと、思う。
「人間は… みんな、誰だって優しくなれます」
わたしの心の言葉を繋ぐように、ハナちゃんはポツリと夜空を見上げ、そう言った。
「私はそんな事を… 5人のママに教えてもらったのですから、ね」
ちょっと駆け出したハナちゃんが、振り返る。
笑う月のぼんやりとした明かりが、ハナちゃんの微笑みをほのかに照らしていた。
次の日の、朝。
実は、とても不安だったのだ。
あの出来事は、単なる宴会上での盛り上がりの末にすぎない事だったのではないか…と。
みんなは、本当に理解してくれているのか、と。
いつものようにホウキで登校するハナちゃんは、相変わらず注目を集めながらわたしたちの上を通り過ぎていく。
そのみんなの視線が、一体どのようなものなのかは未だ形に見えてこない。
だけど、2-Aのみんなだけは、その視線が暖かいものであるはずだ、とは信じたい。
わたしとあいちゃんは、ハナちゃんに遅れること数分で教室に入った。
「おはよう、どれみ、あいこ」
ハナちゃんが私達に気付き、いつものように笑顔を混ぜての挨拶。
「おはよう、ハナちゃん」
「おはよーさん」
ハナちゃんの周りには、すでに数人の女子が集まっていた。
新しいクラスメート。 その子たちとも、わたしたちは挨拶を交す。 笑いながら、ハナちゃんは穏やかに会話していた。
「おーす、ハナちゃん」
「おはようございます、ハナちゃん」
「ちっす、ハナちゃん」
「ハナちゃん、おはよう」
…心配して、損した。
クラスメート達は、みんなハナちゃんの笑顔を見つけては挨拶をあげていた。
よかった。 みんな、あのままだ…。
本当に、みんな、ハナちゃんを受け入れてくれてるんだ。
「…よかったわ。 アタシの考えすぎで。 みんな、ハナちゃんをちゃんと受け入れてくれとる」
あいちゃんの小さい呟き。 ママ同士、どうやら心配事は一緒だったようで。
「そだね。 このまま、上手くいくといいね」
「ホンマやな。 …時に、みんな何時の間にか『ハナちゃん』って呼んどるなぁ」
「そういわれればそうだね… あれって何で?」
「何言うてんのん、昨日どれみちゃんが『ハナちゃんハナちゃん』連呼しとったから、みんなそう呼ぶようになったんやろが」
「あ、あれっ… そうだっけ…」
と、そんな朝の会話。 そんな折、予鈴の前にスピーカーからは校内放送の『ぴんぽんぱんぽーん』が流れた。
『2-A組の巻機山花さん、2-A組の巻機山花さん、おりましたら校長室まで御出でください』
おおおおお、と昨日散々聞き飽きた例のどよめき。 一瞬また宴会場にいるのかと思ってしまった。
「ハナちゃん、ほとんど毎日呼ばれてないか?」
「仕方ないっちゃ、仕方ないよね…」
わたしとあいちゃんが顔を見合わせてため息をつく。
ハナちゃんはクラスのみんなに『いってきます』と明るく手を振り、我等2-Aの盛大な送り出しを受けて出陣して行った。
予鈴が鳴り、いつもよりも遅い間が過ぎた後、先生と一緒にハナちゃんが教室に戻ってきた。
「何だった?」
「うん… ちょっと」
わたしの小さな問いに、ハナちゃんは複雑な表情で煮え切らない返事をした。
「えっ… テレビ??」
「新聞!??」
「うん…」
HR明け早々の休憩時間。
とりあえず巻機山委員がハナちゃんを囲み、校長室出頭の理由を尋ねたところ、
ハナちゃんの口を割って出たのはそれだった。
「地方の放送局なんだけど、どうやら私を取材したいみたいなの…」
わたしたちは思わず顔を見合わせる。 わたしとしては、ついに来るべきものが来た、ってカンジなんだけど…。
「ま、まあそうだろうな。 なんたって、魔女なんだからなぁ。 そりゃテレビも新聞も来るだろ」
小竹が頭を掻きながら確認するように呟く。
「ハナちゃんは、どうしたいの?」
まりなちゃんがちょっと心配そうに覗く。
ハナちゃんの表情はいつもとそんなに変わらないのだが、何だか微妙に陰があるように思える。
「うん… 私の目的、昨日ちょっとお話したでしょう?」
「ええ、そうね。 人間と魔女の交流の為だって事でしょ?」
「そうなの。 だから、もっと多くの人間に魔女を知ってもらう為には、テレビや新聞の力を借りるのは必須だと思うわ。
でも…」
「でも? 何?」
ハナちゃんは本当に困ったような顔をして、わたしたちを見上げながら言った。
「…昨日、私たちでその、お酒…飲みに行っちゃったじゃない。 高校生は、本当はお酒飲んだらいけないんでしょう?
一度生徒手帳を見せてもらったけど、学則によればそういうのが発覚した場合、謹慎とか停学とか…
私がテレビに出ちゃったら、きっとその事が」
もう一度、わたし達は顔を見合わせた。 そして女性3人委員の視線が男一人委員の顔に突き刺さる。
「…誰よ、宴会なんか企画したのは!」
「な、なんだよ!! 今更そりゃねえだろ?? おい!!」
「せっかくのハナちゃんのテレビデビュー、どないしてくれるんや!!」
「うわ、汚ねえぞオマエら!! 昨日あれほどごきげんだったくせに、手の平返したように…
…ってな。 巻機山、心配いらねえよ」
小竹は突然しれっとした口調でハナちゃんに言った。
「実はあの店、サッカー部の先輩の親父さんが仕切ってる店なんだ。 俺たちもよく行くし、素性も割れてる。
騒ぎを起こして店の迷惑にならなければ結構ノリよく飲ませてくれるトコだからさ。
勿論、学校にチクるような事だって今まで一回もされてないって。 安心しとけよ」
ポン、と小竹はハナちゃんの頭に手を置いた。
「本当ですか?」
「本当本当」
「なんだ… もう、最初からそう言ってよ小竹~。 このこのっ」
「まあ、さっすが小竹やな。 アタシはそういう裏があると最初から思っとったで」
「…ホント、調子のいい奴だなぁ…おめーら…」
「ハナちゃん、取材はいつ受けるの? 私達が手伝う事とか、ある?」
「…うん、とりあえず取材を受ける、受けないの返事は明日に延ばしてもらっておいたから。
今日一日、もうちょっとゆっくり考えてみるわ」
ハナちゃんはにこっと笑ってそう言った。 話が一段落つくと同時に一限目の予鈴が鳴る。
「どれみ」
みんなが席に戻った後、ハナちゃんは小さく声をかけてきた。
「ん? 何?」
「その事で、もうちょっと話がしたいの。 今日、あいことはづきも一緒にMAHO堂へ集まってくれるかな…」
どうやら、ハナちゃんが気にしている事はさっきの事だけでは無かったようだった。
私は小さく『分かった』と答える。
時間に正確な担当授業の先生が教室に入ってきたので会話はそこで止み、
わたし達はみんな同様に椅子を鳴らして起立していた。