〜参考資料〜 私は母親に叩き起こされた。 目覚まし時計を見ると、アラーム設定時刻からかなり時間が経っている。 「なんでもっと早く起こしてくれなかったのよ!!」 大急ぎで身支度を整えながら、私は母親に文句を言う。 「もう何度も起こしたわよ!全く、早くご飯も食べなさい!!」 母親はそう言いながら私の部屋から出て行った。 身支度を整え終わり、時間を見る。 「あぁ、急がないと!」 かばんを持って、2階の部屋からリビングのある1階までの階段を・・・  普通に降りる →駆け下りる。 階段を駆け下りたが、踏み外して落ちてしまった。 朝からついてない・・・ リビングの時計を見ると、リビングで朝ごはんを食べている時間はない! コップ1杯の牛乳を飲んで、食パンをくわえて玄関へ向かう。 「ちゃんと朝ご飯食べなさい!」 「いらない!そんな時間ないよっ!!」 そう言って、私は食パンをくわえたまま家を飛び出す。 (新学期の初日から寝坊するんて!遅刻しちゃう、急がないと!!) そんなことを考えながら、私はひたすら通学路を走る。 このまま順調に行けば遅刻にならなくて済むはずだ・・・! -ドンッ!- 「痛っ・・・!!」 十字路で何かにぶつかり、私は尻餅をつく。 (何なの?) そこには私と同じ学校の制服の男の子が立っていた。 「大丈夫?怪我はない?」 「あっ、は、はい!」 この男の子、かっこいい。 だから緊張して、会話で上がっちゃう・・・ 「ごめんね、ちょっと考え事してて前見てなくて・・・」 「い、いえ!私も急いでて、前よく見てなくて!!」 「そうか、怪我とかないみたいで安心したよ。」 「はい!あの、あなたは大丈夫ですか!?」 「うん、僕なら大丈夫だよ。」 「よかったぁ。」 「さ、急がないと遅刻しちゃうよ?」 「あ、そうだった!!」 私は再び走る。 (さっきの男の子、かっこよかったなぁ。) (かっこいいけど、私なんかじゃ不釣合いだよね。それにもうお付き合いしてる人いるよね、きっと。) (でも、あんな男の子、この学校にいたかなぁ。) そんなことを考えながら走っていると、いつの間にか校門だ。 時計を見ると、かなりぎりぎり。 私は急いで教室へ向かう。 教室に着くと、なにやらにぎやかだった。 聞き耳を立ててみると・・・ 「ねえねえうちのクラスに来る転校生ってさ、男の子?」 「知らなーい!女の子かもしれないよ?」 「部活の顧問の先生に聞いたらさ、転校生は何人かいて男女両方らしいよ!」 「えーっ!!本当ー?」 どうやらこのクラスに転校生が来るらしい。 でも今の私は、それどころじゃない・・・ 夏休み明け早々、全速力で走ってもう疲れ果てていた。 朝のホームルームが始まるまでの僅かな時間、ぐったりと机に突っ伏す。 チャイムが鳴り、クラスのみんなは大慌てで自分の席に着く。 少しして、担任の先生が教室に入ってくる。 「よし、全員いるな。まず連絡事項・・・(略)」 先生が一通り連絡事項を口頭で伝え、私たち生徒はそれに耳を傾ける。 いつも通りのことだ。 「さて。もうだいぶ噂になっているみたいだが、今日からこのクラスに転校生が1人来る。」 教室中が少しざわめく。 「仲良くしてやれよ!よし、入って来い。」 先生がそう言うと、教室の中に男の子が入ってきた。 (あれ?今・・・) 男の子が私のほうを見て微笑んだ、そんな気がした。 「えーっと、今日から皆さんと同じクラスになりました・・・(略)」 心臓がバクバクいってるのがわかる。 緊張しすぎて肝心の男の子の名前を聞きそびれてしまった・・・ 「よし、じゃあそうだな・・・」 男の子の自己紹介が済むと、先生が教室を見渡しながらそう切り出した。 「空いてるのは[私]の隣だな。[私]、いろいろ教えてやれよ。」 「え?あ、はいっ!」 男の子が私の隣の席に座る。 「よろしくね。朝も会ったよね?」 「は、はい!」 男の子といきなり仲良く話し出した私への、クラス中の女子からの嫉妬の視線を感じる・・・ 「さて、ホームルームはこれぐらいだ。次は体育館で始業式、解散!」 先生がそう言った途端、クラスの女子軍団がいっせいに私の隣の男の子へ駆け寄ってくる。 みんなものすごい気迫、私怖いよ・・・ 体育館に行こうと立ち上がったものの、これでは教室すら出れない。 「うーん、これは困ったなぁ・・・」 男の子は困惑している。 クラス中の女子が一気に群がってきては当然だろう。 「とりあえずさ、体育館いこうよ。始業式始まっちゃうよ。それと・・・」 一拍空けて、男の子は続ける。 「僕、もう好きな娘いるんだ。ここに・・・」 「・・・・!!!」 男の子が私を抱きしめた!! 「ちょっちょっと、何よいきなり!」 とっさのことに動転して、私は思わず男の子を引き剥がす。 「僕のこと、嫌いなのかい?」 「いえ、そういうわけじゃなくて・・・」 「じゃあ、好きかい?」 「え、えっ?急にそんな、こんな場所で・・・」 正直言って、私はこの男の子のことが好きだ。 でも周りにはクラスの女子ほぼ全員。 もし「好き」などと言ってしまえば、命の危険が・・・ 逆に「嫌い」などと言っても、やはり命の危険が・・・ 「えっと・・・」 考えを巡らせながら、私はそう切り出す。 が、どう続けていいか・・・ 「おい、何やってるんだ!始業式に出ないのかお前たちは!!」 担任の先生の怒鳴り声が突然響いた。 女子軍団はみんなしぶしぶと体育館へ向かい、教室には私と男の子の2人だけになった。 「これで、話せるよね?」 「え、えーっと・・・」 自分の心臓の鼓動がすごい聞こえる。 「もう少し、時間を下さい・・・」 「うん、そうだよね。急に無理だよね。」 緊張のあまり、私はうつむいてしまう。 「でも、僕の気持ちは本当だから。いつまでも待ってるよ。」 「・・・」 「じゃ、先に行ってるね。」 そう言って男の子は教室を出て行った。 「は、はぁぁぁーっ。」 一気に緊張が解け、全身の力が抜けた私はその場にしゃがみこむ。 (僕の気持ちは本当?) (いつまでも待ってる?) (それってつまり・・・) そんなことを考えていたら、だんだん意識が遠くなってきた。 ああ、体育館に行かないと・・・ 頭ではそう思っていても、体が動かない。 そして意識が急に途切れてしまった。 〜参考資料〜