俺「・・・あ・・・あのですね」
なんだ、このいきなりなシチュエーション。
なんなんだ。この放課後の教室、目の前にいるオレンジ髪の少年。
・・・ここ、氷帝ですよね??
〜レモンキャンデーはいかが?〜
千「フフッ、いたいた」
俺「・・・何の用ですか、千石さん」
千「待ち伏せ♪」
俺「即刻に帰れ」
千「怖いなぁ・・・折角跡部君にバレずここまで来たのにさぁ」
絶えないバカらしい笑み。
本当にコイツの頭は大丈夫なのか。
俺「・・・何のための待ち伏せですか」
呆れてとりあえず理由を聞く。
千「ん〜とねぇ・・・告白?」
俺「・・・だから帰れって、いい加減輪廻の果てに」
千「ねぇ〜ちゃ〜ん・・・なんでそう時々敬語忘れるの〜?」
俺「知るk・・・コホン。知りません。それは敬意を感じていないからでしょう」
千「ちゃん、俺の事尊敬してくんないの?」
俺「悪いお手本として」
千「ガーン・・・俺ってアンラッキー・・・」
悪い奴じゃない。
分かっているが・・・
ふざけている。
しゅんとしたその表情が、見ていられなく、
俺「・・・なんの告白ですか?跡部さんのおやつでも食べちゃった的な?」
千「ちゃんでもバカな事言うんだね。違うよ」
俺「あ、今ちょっとグサっと何か刺さった。激しく謝れ」
千「も〜・・・機嫌悪いならゴメンって〜・・・」
俺「告白とやらのためだけにここまで来たんですか」
千「ん〜、それとねぇ・・・はい。ホワイトデーのお返しだよ」
飴とクッキーと・・・なんかいろいろ詰まったブーツを渡された。
俺「・・・そんな子供じゃないんですけど・・・まぁ、甘いの好きなんで有難う御座います」
千「うん。じゃあ暗いし危ないから、送るよ」
俺「えぇ。心強いです。誰かのせいでレギュラーのみんな先行っちゃったんで」
千「・・・だからごめんって〜!!あ、でも心強いなんて言ってもらって嬉しいや」
・・・単純だ、コイツ。
たくさんの女の子連れまわして、
たくさんの女の子をナンパして、
最終的に別れて、今度の被害者は俺ですか。
はぁぁ・・・と深いため息をつく。
薄暗い道を歩いていると、こんな時間に歩くのは久々なのを思い出した。
千「ねぇ、ちゃん好きな人、いる?」
歩きながら、心臓が、1mmだけ跳ねた気がした。
ドキリ。
俺、そういや恋愛なんてした事ねぇなぁ・・・
クラスの女子は皆俺を羨ましがってるのに。
確かに、俺の周りには、カッコいいと思う人はいっぱいいる。
毎日格闘とプロレスで大変な事になってる跡部だって、カッコいいとは思う。
でも、男子と遊ぶなんて、日常的。
むしろ、女子と遊ぶ方が慣れていない。
俺「えーと・・・恋愛とか、分からないです」
千「本当、男らしいよねぇ、キミ」
俺「仕方ないでしょう。13年間そう育てられたんですから」
正直言うと、最初、親は女の子らしくしようとしていたらしいが、
あまりにも趣味などが自然に男方向に歩んで、リボンだとか可愛い物も目もくれないため、
諦められたっていうのが本当の話。
あ、でも、可愛い物は身にはつけないけど見るのは好き。
沈黙が続いて、家に着いた。
広い割には、親が海外で働くため、ひとり。
別にそれはちっとも悲しくも、寂しくもない。
親なんて、むしろ嫌い。
そうだ。そもそもこの実家と親の判断のせいで、俺は氷帝に転校したんだった。
嫌な事、思い出したな。
俺「有難う御座います・・・あ、遅いからついでに飯作りますよ」
千「え!マジ?ちゃんの手料理!!?ラッキ〜♪」
別に、今日はリョーマも泊まりに来ない日だし、1人だったから。
少しぐらいにぎやかな方が、いいよね。
俺「んー・・・と、めんどいし、アンタの好物がスゲェ手軽なもんで助かった」
千「え?なになに?」
俺「今日は疲れたし、久々にプレートでお好み焼き作りましょう」
千「うわっ、俺今日ラッキーすぎる!涙出そう」
俺「そのまま一生分の運使い果たして涙も枯れろ」
千「・・・すいません、大人しくします」
俺「それでいいです。唾かけられたお好み焼きなんて、食べてられないですから」
小さい子を慰めるが如く千石の頭をポン、と軽く叩いた。
材料は簡単。好物がお手軽すぎて本当助かった。
おまけにコイツ、単純だし。
久々に手抜きだぁぁぁぁ!!!と、心の中で歓喜がわいていた。
でも、一緒に作ってると、楽しい。
千「ん〜とね、俺が美味しい焼き方教えてあげるよ!」
俺「えぇ、お願いします」
にこにこと柔らかく笑う千石の横顔。
微笑ましく見守っている、俺・・・?
なんだ、俺は千石さんの母ちゃんか。
自分でボケて自分でツッコんでみたが、悲しくなったのでやめた。
千「〜〜・・・」
俺「・・・(ぼ〜・・・)」
千「!!!」
俺「わっ!びっくりした・・・」
千「できたよ〜♪はい、口開けて〜」
俺「え?え?・・・んっ・・・///」
いきなり言われ、条件反射で口を開くと、そのままお好み焼きを食わされた。
俺「・・・美味・・・しい・・・です」
千「ホント!?やった!ちゃんにほめてもらった!!」
俺「あの・・・いや、美味しいんですけどね。聞いていいですか」
千「何〜?」
俺「俺の事、なんて呼んでます?」
千「え?ちゃん・・・?」
俺「うん。それは俺や人に対してだとすると・・・今さっき、なんて言いました?」
千「・・・?」
俺「・・・呼び捨てかよ、チッ(小声)まぁいいですけど、ビックリしたって話です」
千「ごめんごめん、一回呼んで返事なかったからさ〜」
俺「・・・千石さん」
千「あ!そーだ!さっき『あーん』やったから、キミからやってよ」
俺「・・・喧嘩売ってる?」
千「わっ!目が怖い!違うよ!そういう意味じゃないから!・・・だって」
俺「だって・・・?」
そのまま手を握られ、押し倒された。
俺「・・・??ひっ!ちょ・・・体勢!やっぱタイマン?」
千「・・・・・・やっぱ、なんでもない」
俺「おのれよくも!!」
千「わわっ!!!」
そのまま変な体勢で千石の腹にキック、立場逆転〜・・・って言ってる場合か!!!
俺「・・・ったく、変っすよ、今日のアンタ」
千「いい加減、気付いてよ」
俺「何にですか」
千「・・・」
無言。
顔が、近いところにある。
俺「・・・///だっ・・・何・・・」
千「・・・やーめた。また今度言うよ、次は逃がさないもん」
俺「・・・??・・・千石さん、口開けて」
千「ん?・・・むっ・・・」
俺「言われた通りやりました。美味しかったですよ、じゃあそろそろ片付けますから」
そんなこんなで(ある意味)ドキドキ2人だけのお好み焼き☆パーティ、終了。
いつのまにか、時刻は夜8時を、まわっていた。
俺「今日、どうします?明日は俺、オフだし、休日だから、泊まってもらってもいいですけど」
いい加減、本気でそろそろ帰って欲しくなったが、生憎、
ベタな事に外は雨が降り注いでいた。
千「ん〜・・・今日は壇君の家にお泊り予定だったんだよね〜」
俺「外、ひどい雨ですね」
千「泊まっていい?壇君の方に電話入れるから」
俺「まぁ、こんな酷い天気の中、夜に走らせるほど俺も邪道じゃないですから」
第二ラウンド、決行。
千「アリガト。着替えもあるし、ラッキ〜♪」
本日何回目かの口癖を言い、
千「お風呂借りるよ〜」
そういい、バスルームに消えた。
俺「・・・はぁ。やっと1人〜・・・ったく、疲れるな、あの人」
でも、なんか楽しかった。
お泊り・・・って、あの人とは合宿以来だったな・・・
確か、俺、跡部さんやその他レギュラーに散々からかわれたっけ。
必死で長太郎先輩が止めてて、
で・・・その後俺、何したんだっけ。
あ、そうだ、気がついたら、跡部さんと忍足先輩・・・そうだ、後岳人先輩が死んでたっけ。
・・・本当に何したんだろ、俺。
日吉先輩が、「さんのオーラ、怖かったです」とか言ってたっけ。
そんなつい最近の思い出を頭の中でリピートしてたら、後ろから何かがのしかかってきた。
俺「・・・っ!!!」
千「終わったよ〜んじゃ、入ってきてね〜」
言われたが首にまとわりつく手が気持ち悪くて、はねのけた。
俺「もう、驚いたじゃねーすか!今ので心臓0.01mmくらい動いた!」
千「ゴメンゴメン、じゃ、行って来てよ」
俺「・・・はぁ・・・もう嫌だ」
さっきの、シャンプーの匂いが忘れられない。
いやに、ドキドキした。
俺「・・・・・」
俺、病んでるのかな・・・熱でもあったり・・・
さっきっから、顔が熱い。
お湯のおかげで、もっと熱い。
俺「あ〜っ、もうチクショー!」
軽く呟くと、無造作に髪をバシャバシャ洗い、湯にもつからず風呂を出た。
千「おっ、早かったね」
俺「・・・いつもこんなもんです」
千「ダメだよ〜俺くらい入っておかないと、髪の毛乾かさなきゃ、風邪引くし」
俺「・・・そのうち乾きます」
千「おいで、こっち」
俺「・・・・・・・わーりましたよ」
千石の方に行って座ると、後ろにまわってドライヤーで乾かしてくれた。
俺「・・・すいませんね」
千「ん〜?何が?」
俺「俺も、なんか今日おかしいです」
千「・・・そう?あ、もう終わったよ」
短髪でもフワフワとしているの髪を、ちょっとなでて言う。
俺「どーも、あ、もう9時になってる」
テレビをつけて・・・
千「え?何?そんな必死になって見たい番組なんてあるn・・・」
声は、途中で途切れた。
何って・・・だって、
「大奥」
千(え・・・えぇぇぇぇぇぇぇ!!!?)
俺「すんませんね、こういうドロッとして、最終的に天狗になってるウザいのが潰れてくのを見るの楽しいんで!」
黒い。
趣味が黒すぎる。
千「・・・ねぇ」
俺「・・・何ですか」
千「なんなの、その笑みは・・・」
俺「え?ホラ、今浮かれたこのババァが裏切られたんで、爽快だなぁと」
千「・・・・・・・・そ・・・う」
それで爽快ならホンマもんの極道だ。
絶句、というのもあたりまえだ。
俺「あ、そーだ。そろそろなんか男と女的なシーンなんで、お笑いに回します」
千「あ、一応そういう細かい所は気にするんだ・・・」
こういうのを見てるのに、俺の気持ちには気づいてくれないんだ。
そう思うと、本当ににとってアウト・オブ・眼中なんだなぁと悲しくなった。
千「あ、何食べてるの」
口がモゴモゴしている。
俺「え?あぁ、夕方アンタにもらったキャンデー。レモンでした」
千「・・・」
黙って千石は、リモコンを取って、TVを消した。
今度こそ、迷わない。
千「ねぇ」
俺「あ、何消して・・・r」
突然、キスされた。
頭は、真っ白。
変な体勢が5秒ほど続き、やっと口が開放された。
俺「な・・・!!!何をするんですか///」
千「キャンデー、も〜らった♪」
俺「・・・・・・・・・・!!!」
そういえば、口にあったハズのレモンキャンデーが無い。
千「欲しいなら、もっかいね」
俺「・・・・・・・・・・・・・・千石さん」
千「・・・清純って、呼んでくれる?」
俺「・・・清純さん」
千「さんとか、もういらないからさ」
俺「・・・・・・・・・やっと分かりましたよ。俺、恋愛疎いんですよね」
千「ゴメンね、俺も恥ずかしくてさ。清純だけでいいから、呼んでよ」
俺「・・・清純。ちゃんと日本語で言って下さいよ」
千「や〜だっ!・・・だって離れてるんだもん」
俺「嫌じゃない。ここまで俺を屈辱な目に合わせておいて・・・」
千「分かってるよ」
抱き寄せた。風呂上り独特の暖かさと、シャンプーの匂い。
そっと、耳元に、囁いた。
千「好きだよ」
俺「もしかしたら、俺もアンタに惚れてるんでしょうね。きっと、こんなドキドキした事ないから」
千「じゃあ、からも言ってよ」
俺「好き、清純」
千「有難う、キャンデー、あげるから」
そういって、口付けをした。
爽やかなレモンの味が、
残ってる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドリームメーカー第二弾。
へタレた俺の恋愛夢も第二弾。
書けません。
この前の日吉といい、
キスだのなんだの、本気で分からない。
だからベタに初キッスがレモンキャンデーの味です。
これが初めての恋愛成就ドリです。
まさか初で、お相手が千石さんとは・・・!!
いや、嫌いじゃないです。むしろ好きですけど。
いや、最近弟がテニプリそんな見ないくせに
偶然俺のいぬ間に神尾VS千石見てましてですね、
千石負けたのに、ファンになっちゃってまして。
女の子好きを知らなかったらしく、言ってやっても
「それでも俺は千石のファンだもん」
と言い切るもんで、正直その千石愛には負けました。
一番下の弟ですけど。現時点もうすぐ小5ですけど。
ちなみにもう1人は跡部派です。
ことあるごとに「ブギウギ」言ってます。
むしろテニミュなので加藤和樹派です。
そんなこんなで、恋愛系、手を伸ばしていこうと思いますので、
暖かく見守っていてください。
2008.3.1 UP miha