『早川優貴子の日記』 これは、僕が埼玉にある自宅マンションのゴミ捨て場に何故か落ちていた紙袋の中で見つけた品物を少しばかり拝借したものである。 その品物というのは緑色の表紙の日記帳の様な物で、表紙には『優貴子(ユキコ)とインコのカナの日記』と書かれており、中には丸文字でいろいろと興味深い事が書いてあったのだが、 そんな事の他にも、なんだか怪しげな事がつづられていたので、拾ったはよい物のどうすればよいのか分からなくなっているのだ。 まあ、とりあえずどんなものかここに記してしまおうと思う。元はネタ探しで始めた事。そして大物を見つけたのみだ。 では、書き始めようか。 --- 3月27日。 今日は朝から頭がスッキリとしていて気分がよかった。 何時も良い声で鳴くカナが愚図っていたが、そんな事はどうでもいい。 きっとご飯がまずいのだろう。いつか美味しいご飯を上げようと思う。 でも、カナの好きな食べ物って何なのだろう。 仕事の方も順調だ。バイト先の店長に手際を褒められ、ボーナスも貰った。 暫くは生活に困らないだろう。 3月28日。 今日もカナは愚図っている一体どうしたというのだろう。 最近優しくしてあげなかったからか?私には分からない。 とりあえず今夜はかまってあげようと思う。そうしないとかわいそうだ。 久々に一緒に遊んであげた。カナは喜んでいた。 やっぱり遊んであげないとストレスを感じてしまうのだろうか…。 3月29日。 彼氏の彰洋(アキヒロ)が遊びに来た。 でも、彼といても楽しくない。私の友達はカナとバイト先の瑞穂(ミズホ)と店長位。 私は知っている。彼は私の金に興味があるのだ。 彼が帰った後、たまにお財布の金がなくなって居る事がある。きっと盗んでいるのだ。 3月30日。 今日ほど清々しい日はもう来ないかも知れない。 この日の快感を永遠に忘れないためにも、ここに記す事にする。 今日、私はこの部屋に彰洋を呼んだ。 そして、のこのこと現れた彼を自室に入れて、首を絞めて殺した。 その時の興奮!病みつきになりそうだった。 暴れだす彰洋の首をロープで絞めて窒息させた。呻き声が未だに耳に残っている。 私の部屋にはまだ、死体となった彰洋が転がっている。 でも、別に処理をするつもりはない。私の部屋に置いておこうと思う。 生きている時の彰洋は嫌いだったけど、死んでいる彰洋君は何か格好良い。 殺人。またやろうっと。 ---  僕の拾った日記帳に書いてあったのは大体こんな事だ。 早川なんて住人は知らないし、僕の住んでいるマンションには住んでいないことは分かっているのだが、こんな人間が近くに住んでいるとは考えたくない。 ところで、なぜこの日記帳がマンションのゴミ捨て場にあったのか…。 本格的に逃亡の準備をしたのであれば持っていくはずだし、自首するから捨てるというのもおかしな話だ。 悩んでいても仕方ない。とりあえずこれは警察へ持っていくこととする。  自宅でボーっとしていた僕に警察から電話が入った。 近くの公園で絞殺死体が見つかったらしい。 そしてその犯行現場に、ユキコと書かれた赤いハンカチが落ちていたのだとか。 ああ、彼女はやはりこの近辺に潜んでいるのだ。猟奇的な快楽に取りつかれ、人を殺し続けているのだ。 追記。恐ろしいニュースが入った。 また死体が見つかったらしいのだ。それも、僕の通う高校の近くで。 現場にはユキコと書かれた赤いハンカチが落ちていたのだとか。早川優貴子の仕業に違いない。 --- 3月31日。 私の部屋には三つの死体が転がっている。 彰洋君と、瑞穂ちゃん。あと、カナも殺しちゃった。 インコだったけど楽しかった。弱っていくカナは可愛かった。 カナは旅行に連れて行こうかしら。 町にはいっぱい人が居るはず。きっと楽しい旅行になるわ。 『早川優貴子の日記』end.