【闇鍋の中身は?】 闇鍋パーティ、それは自身の一番怖ろしいと思ったものを入れるパーティである。 「闇鍋と言ったら何を思い浮かべるかね?」 「闇鍋…ですか?」 暗い闇の中で男二人が鍋を囲み話している。 「そう、例えば目の前にあるこの鍋」 鍋を指を刺す中年の男。 「この暗闇で材料が何かも分からず突付く鍋、これも闇鍋だ」 「はぁ…」 若者は急な話に相槌をうつ。 「私にとっての闇鍋とは少し前にさかのぼる。  あの日はいつもの様に家族で鍋を囲み夕食を楽しんでいた。  中身は前日に余らせた野菜と、妻がパートで貰ってきた賞味期限ギリギリのお肉。  そして子供達が養鶏所から貰ってきた卵だ。  それは何気ない会話から始まった。  『ねぇあなた、そろそろ私の働いている賞味期限を過ぎたらラベルを張り替えるような   職場でも何でもいいから働いてくれないかしら』  それを聞いたとたん私は身も凍る程の悪寒を感じたよ。  さらには息子達もだ  『パパァ、この前ひよこが欲しくて10日ぐらい卵をあっためたんだけどダメだったの   養鶏所の人に聞いたらね、この卵は無性卵だから暖めても無意味なんだよ   それはパチンコでお金を稼ごうと言うくらい無意味な事なんだよって教えてくれたの』  この話にもぞっとしたね。するとどうしたことだろう  先ほどまで何ともなかった筈のお腹が痛み出したんだ…キリキリと…  これが私にとっての闇鍋さ、君には君にとっての闇鍋はあるかい?」 中年の男は若い男に尋ねる。 若者は少し考え、間を置いてから答えた。 「そうですねぇ、闇鍋になるかは分かりませんが  先日田舎に帰ったとき――そこは付近の井戸で死体がみつかってニュースになった地域で  母親が心配で顔を見に行ったときの事です  久しぶりにあった母は元気そうで、折角帰ってきたんだから父妹も合わせて  皆で鍋をして話でもしようじゃないかと言ってきたんです  しかし貧乏性の母はなるべくお金をかけまいといつ頃から放置されていたか分からない  古びた無人販売所に置かれていた白菜やネギ、その他ガス代や水道台もケチって  近くの森で枯れ枝を集めて焚き火したり井戸水を使ったりして  気づけばとてもすごい鍋料理になっていました  そのときの鍋を食べた時は普段丈夫な僕でも気分が悪くなりましたよ…」 そう言い終わると若者と中年男性は目の前の鍋に視線を落とす。 そして互いに鍋に手を伸ばしたのだった。 闇鍋パーティ、それは自身の一番怖ろしいと思ったものを入れるパーティである。 今日もまた色々な形の物が鍋に入れられていく・・・・・・ fin