深夜の街は人気が無く、街灯だけがポツポツと道を照らしていた。 「流石に夜の街は恐いな・・・」 基本夜はベッドで寝てしまうため、こんな時間帯に出歩くのは初めての経験である。 「それにしてもどこにおるねん、あのヘンテコ動物」 頭の中に直接声が聞こえていたので方角までは把握できていなかった。 とりあえず夕方に投げ捨てたであろう場所を目指し歩く。 「さぁ〜てここら辺に投げ捨てたと思うんやけど・・・」 辺りを見渡してみるがそれらしき姿は見えない。 すると、 (――右に行くんだ) 「!」 またもやあの動物の声が頭の中に響いてくる。 どうやら誘導してくれるらしい。 「み、右!?」 とりあえずはやては言われた方向に歩く。 (ごめん、僕から見て右ね) 「えぇ!?とりあえず逆方向か?」 はやては歩いてきた反対の方向に向かいなおす。 (違う違う、右だってば) 「だからどっちや!こっちか?」 今度は最初の位置から前進する道を進む。 (だ〜か〜ら〜、何ていうかなぁ・・・下かな?) 「下・・・って地面やないかい!」 (だから僕から見て右だよ右) 「だぁぁぁぁもう方向やなくて方角で言わんかぁぁぁぁぁぁぁい!!」 辺りに響き渡る怒声。 静寂に包まれた街にはやての声と近所の犬の遠吠えだけが木霊していた。 (・・・・・・とりあえず北でおねがいします) 「・・・北やな」 流石に恥かしかったのか、声のトーンを落としつつ北に向かうはやてであった。 それからはスムーズなものだった。 (そこを東に) 「はいはい」 態々方角に変換しなければいけないものの、変な誤解も生まれず正確に道を進んでいく。 (そこの十字路を南) 「南・・・南・・・」 (そうしたら、そこの路地を東に) (はいはい) (その路地を抜けたら立ち止まって――) 「抜けたら――立ち止まって」 (左手をあげて、右手も軽く腰の位置ぐらいまであげると) 「左手を・・・えぇ!?こ、こうか・・・?」 (天地魔闘の構え!) 「やかましいわ!」 バシィ!と誰もいないが空中に突っ込みを入れるはやて。 「次は上着を脱いでぇ――ハァハァ」 「しつこい――っておったんかい!」 前を見るとそこにはあの時投げ捨てたフェレットもどきがいた。 「その次は下をぉ」 「ええ加減にせい――って」 その時、ズシンッと地面が揺らいだ。 顔を上げるとそこにははやての二回りはある大きさの黒い生物が立っていた。 「あーごめん、僕追いかけられてる途中なんだった。テヘッ♪」 「テヘッ♪じゃなぁぁぁぁぁぁぁい!」