15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 19:28:05.68 ID:PDTqnTBD0
ハルヒ「そう」

佐々木「僕か涼宮さんかどちらか好きなほうを選んでほしい」

ちょっと待て。この二人は一体何を言ってるんだ?
いつも通りの変わらない放課後のわれらがSOS団部室、一つ異なるところがあるとすれば、親友佐々木と、その友人だかの橘がいるが。
いや、駆け落ちの意味は知っている。
門下、因縁、その他諸々の事情により結ばれることのできない二人がそこから逃れるための逃避行。
俺が知りたいのは何故この二人がそんな前時代的な言葉を口にしているかということだ。

長門「私が説明する」

キョン「長門、いたのか」

流石長門だ。摩訶不思議な事態が起こると、気がつけばそこにいる。そしていつも通りに解説をしてくれるわけだな。
それで、今回はどういう不思議体験なんだ?

長門「簡潔に言うと、情報統合思念体の主たる所見が変化した」

所見・・・、変化・・・、?長門、それでは簡潔すぎて俺の理解が及ばん。
情報なんちゃら体の所見、ああ考え方が変わるということは、あの朝倉涼子をけしかけてきたやつらがトップに立ったということか?
それで俺はまた狙われるということなのか?

長門「半分正解。情報統合思念体は求める進化の糸口として涼宮ハルヒを観察していた。
    しかしながら現在では、4年前情報爆発が発生したときと比較して、現在の涼宮ハルヒには当時ほどそれを得られる可能性が低いという
    推測が現実味を帯びている。涼宮ハルヒの能力の弱体化並びにその能力の一部が転移していることが観測され、
    情報統合思念体ではこの事実を重要な変化と認識し、一層の観察への注力が決定された。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 19:51:14.67 ID:PDTqnTBD0
長門「一方で、現在の主たる所思とは異なるそれを持つ一部の派閥は、その観測された事実が
    自律進化を遂げる端緒としての彼女の能力を疑問視するものであると主張した。
    能力の弱体化により、大規模な情報発信がされなくなれば、手がかりは求められない。
    局所的ではなかったその変化への不安は彼らの立場を次第に確固たるものにし、現在では主流となっている。
    情報統合思念体は、再びの巨大な情報の発信を求めている。
    その手段として、涼宮ハルヒ並びにその能力の一部の転移が認められたものへ物理的および精神的な変化を与える事を決定した」

流石だ、長門。いつも通りやはり何を言っているのかさっぱりだ。

古泉「長門さん、説明を代わりましょう」

長門の不思議解説に頭を悩ませようかというところであったが、その間に古泉が来ていた。
相変わらずの業務用スマイルで、代わりに解説をしてくれるらしい。

古泉「長門さんの属する情報統合思念体でも、考え方や思惑の違う人たち、
   ―ここでは便宜上人といっておきますね―がいることはご存知ですね」

ああ。朝倉の件や朝比奈さんの件でもいろいろあったしな。

古泉「その中で、急進派と呼ばれる勢力が、最近俄かに発言力を増したようです。
    涼宮さんの力が弱まっている、このままでは進化の手がかりが得られないと。
    弱まっているということは本当のようです。実際に、最近では閉鎖空間の発生件数が減っています。
    情報統合思念体では、焦りを覚える人も増えたようでそのため、急進派の支持が増えたということです」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 20:50:09.29 ID:PDTqnTBD0
古泉「そして、もう一つ確認された事実があります」

・・・何故だろうか、俺はその先を聞きたくない。
何となくであるが、お前が話そうとしていることがわかる。

古泉「涼宮さんから失われている力、実はその一部が別の人へ転移しているのです。
    勿論、その転移も一般の人にというわけにはいきません。
    もし、涼宮さんの力を受け入れることができる人がいなかったら、それはいずれ消えていったでしょう。
    ところが、あなたもご存知の通り、涼宮さんの力、神様の力と言う人もいますが、
    それの拠りどころとなる人がもう一人います」

全く、何てことだ。
今日はいつもと変わらず、実際に何をしているんだかわからない、ひょっとしたら何もしていない団活をして、
日が暮れるかどうかというころに家に帰り、もうすぐ中学生だというのにいささか心配になる妹の相手をし、
普段通りに食事を取り、一緒に入るだのと駄々をこねる妹を制して風呂桶に浸かり、ちっとも身に入らない予習をした後、
翌日もまたいつもと変わらないだろうと布団に入るものだろうと考えていたのだが。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 21:05:48.78 ID:PDTqnTBD0
古泉「それが彼女、佐々木さんです」

全く、いつもはほんの少ししか気まぐれでないどこかにいる神様は、
今日に限ってはたいそうな気まぐれを起こしてくれやがる。

古泉「話を続けますね。情報統合思念体は急進派が実権を握り、そしてすぐに行動に移ることを決定したそうです。
    行動の目的は、4年前の情報の発信と同様のものを起こすこと、
    その手段は、涼宮さん、または、佐々木さんの間近で急な変化を発生させ、彼女たちに精神的な衝撃を与えること」

つまり――

古泉「具体的に例を挙げれば、彼女たちのすぐそばで貴方を殺すこと、などですね」

俺を殺す、か。えらく過激だな。
しかしそんなに浮世離れした出来事で本当に情報なんちゃらが起こるのか?

古泉「正確なことはわかりません。ですが、急進派の人たちにとっては衝撃は強ければ強いほうがいいということだそうです」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 21:25:59.72 ID:PDTqnTBD0
古泉「とにかく、急進派の彼らはこのままでは何も得られないのではないかと焦っています。
    なので、あまり紳士的な対応は望めません。だから、貴方にはとにかく逃げ回ってもらいます。
    我々機関としても、できる限りのサポートをさせていただきます」

自分の不思議状況への適応力にはいやになるが、なるほど大体の事情は飲み込めた。
逃避行か。まさにフィクションの世界だな。駆け落ち、いやちょっと待て、これは駆け落ちではないぞ。
それにハルヒや佐々木の前でこんな話をしていていいのか?

長門「それは心配ない。私が二人には違う話が聞こえているようにしている」

古泉「お二人には本当のことは話していません。ただそれとなく貴方と逃げ回るようにという程度に伝えてあります」

鮮やかなお手前だな。お前と長門が手を組めば大半のことは解決できるんじゃないか?

古泉「お褒めに預かり光栄です。ですが流石に大半とはいきませんよ、それに、僕も長門さんも
    所属しているところの支援があってこそ、ですから」

別に褒めているわけじゃねぇよ。ところでだ、今の話でふと思ったんだが情報なんちゃら体は朝倉みたいなやつらがトップに立っているといったな、
長門は大丈夫なのか?バックアップだとか同期だとかいろいろ繋がっているんじゃなかったか?

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 21:41:20.12 ID:PDTqnTBD0
古泉「それも心配ありません。長門さんは同期や結合を意図的に遮断することができますし、
    所属する中道派、前の主流派に基本的に接続しているそうなので」

そうか。

古泉「ああ、それとですね、駆け落ちというのは、お二人に今どういう状況なのか、
    そしてこれからどうするのかを端的に説明するのに使った言葉だったんですが、
    涼宮さんがえらく気に入れられたようでして」

それとだ、駆け落ちといったな、二人と逃げろということか?
何かの変化を避けるというのだったら、俺は別に逃げたほうがいいんじゃないのか?

古泉「それなんですが、先ほどあげたのは一つの例です。お二人の前で起きる出来事は、
    必ずしも貴方が殺されるということでなければならないわけではないんです
    それがご家族だったり、朝比奈さんなどの関係でもいいんです」

それはそれは見境のないことだな。

25 名前:遅筆謝意千万:2010/10/18(月) 22:05:36.06 ID:PDTqnTBD0
ちょっと待て、誰でもいいといったな。ということは、たとえ俺が逃げたとしても
ハルヒか佐々木かの家族をを連れてきて目の前で・・・ということにはなったりはならないのか?

古泉「勿論その可能性はあります。ですから既に手を打ちました。
    貴方やお二人の家族は現在機関にて保護させていただいてます」

いつも通り根回しのいいことだ。いっそ俺たちも保護してもらえたら言うことないんだがな。

古泉「それは・・・、すいません。もし貴方たちまで保護するとなると、多分急進派の人たちは機関に直接くると思われます
    残酷なことを言うようですが、貴方やお二人には、あちらを引き付けておいて欲しいのです」

囮、というわけか。
毎度の如くの不思議体験だが、今回ばかりは胸を躍らせるスペクタクルというわけには行かないようだな。
朝倉もびっくりだ。
だけど、まあしょうがない。俺も腹を括ろう。
気がついたら世界が終わっていました、なんてのはごめんだからな。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 22:18:56.34 ID:PDTqnTBD0
古泉「本当にいつもいつも、貴方には頼ってばかりで本当にすいません
    できることならば、代わって差し上げたいところですが」

ふん。
まあいい、それで、あれだ。逃げ回る―駆け落ち―だが、一体どうすればいいんだ?
どこかへ辿り着くか、時間が来れば勝ちなのか?

古泉「一番聞きたくなかった質問ですが、結局どうせ話さなければならないことですよね。
    実は、我々も具体的な解決策を持ち合わせているわけではありません。
    一応、情報統合思念体に接触を図ってはいます。話し合いで解決するか、
    或いは、涼宮さんや佐々木さんの力が消えてしまうか、
    いずれかのことになれば、「駆け落ち」は終わりです。
    ですが、どちらも必ずそうなるとは言い切れない事柄です」



・・・・・・絶句、だな。
終わりのない鬼ごっこ。ますますもってフィクションじみてきたことだ。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 22:28:41.67 ID:PDTqnTBD0
古泉「本当に、申し訳ありません。
    勿論こちらも全力は尽くさせていただきます。
    しかし、本当にどうなるか・・・」

わかった、古泉、もういい。乗ってしまった舟だ。
もしかしたら、ここぞというときにとんでもパワーが何とかしてくれるかもしれないしな。
いささか楽観的過ぎるか。ははは。

古泉「・・・・・・。
    それで、どちらを選ばれますか?」

・・・なんだって?

古泉「貴方には、お二人のうちどちらかと一緒に逃げていただかなくてはなりません
    我々ができることや、長門さんの能力を考えると、それが限界のようなんです」

どっちか選べ、ああ、佐々木がさっきそのようなことを言っていたな・・・。
ハルヒか佐々木か。どちらかを選べというのか、俺に。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 22:35:22.06 ID:AQWBEA5+0
ハルヒはいい尻してるぞ

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 22:36:38.14 ID:JV541yxrO
佐々木以外の選択肢が見えない

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 22:51:52.09 ID:PDTqnTBD0
いや、待てよ。おい古泉、もし俺が片方を選んだとして、もう一人はどうなる。

古泉「一応、手は考えてあります、ですが・・・」

何故だ、何故そこで表情を曇らせる。
いつもの営業スマイルで案を示すんじゃないのか。
何故だ。


いつもよりも気まぐれな神様は、どこか虫の居所が悪かったのだろうか。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 22:56:41.68 ID:PDTqnTBD0
ちょっとどっちを選ぶのか迷っているので人がいるようでしたら意見下さい
明日の予習をしてますので。いないようでしたら適当に決めます。

1.ハルヒ
2.佐々木
3.無理を言って二人

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 23:00:30.15 ID:zr39uEcYO
2

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 23:01:22.73 ID:AQWBEA5+0
3

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 23:02:23.20 ID:onQ1oq/FO
むしろ長門

ダメなら2

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/18(月) 23:18:37.09 ID:aUikOd5uO
2を希望

40 名前:なんと1がない!ハルヒ涙目wwwwwwww最近人気急上昇中の佐々木ですね:2010/10/18(月) 23:52:45.27 ID:PDTqnTBD0
ハルヒか、佐々木か。
古泉の知っている限りでは、まだハルヒに残された力のほうが
佐々木に移っているそれよりも強いらしい。
仮に、俺が狙われやすいのだとしたら、それならば俺はハルヒから離れているほうが良いのではないだろうか。
佐々木を選んで、ハルヒへの危険の接近を避ける・・・

本当に頭にくる。  こんなときに打算的なことを考えてしまう自分に。
こんな考えで佐々木を選んだとしても、佐々木には勿論、ハルヒにも失礼だ。

だが。

キョン「・・・佐々木だ」

選ばなくてはいけないのだろう。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 00:01:53.78 ID:+pg/QrL50
古泉「・・・わかりました。僕にそれをとやかく言う権利はないのですが、
    本当に、それでいいのですね」

ああ。それでいい。

古泉「わかりました。涼宮さんは、我々が責任を持って守ります」

よろしく頼む。ああ、それとあくまでも俺は何の変哲もない一般人だから、色々と頼むぜ。
これでも何かと頼りにしてるんだ。

古泉「勿論です」

・・・こんなときぐらい、虚勢でもいいからいつもの営業スマイルで返してくれよ。

43 名前:>>41ごめん:2010/10/19(火) 00:13:50.48 ID:+pg/QrL50
ハルヒ「キョン、いつまで話をしているの、私待ちくたびれて死にそうよ」

古泉との会話に集中する俺にいい加減に痺れを切らしたのだろうか、
こっちをみているだけだったハルヒが話しかけてきた。
すまんな。今、ちょうど話がついたところだ。

ハルヒ「そう。それで、どっちを選ぶの」

これまでに何度か、ハルヒと口論したことがある。映画のとき、孤島のとき、・・・
今は言い合っているわけではない。だが、今から話そうとすることは、それらのどのときよりも、
口にしたくないことのように思える。

キョン「ハルヒ、俺は決してお前が嫌いというわけではない。
    SOS団の一員として、退屈することはなかったよ」

ハルヒ「キョン・・・?」

本当に悪いな、ハルヒ、佐々木。

キョン「佐々木だ。俺は佐々木と行く」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 00:21:03.15 ID:+pg/QrL50
ハルヒ「・・・・・・」

佐々木「ボクかい?」

そうだ、佐々木、お前だ。

ハルヒ「・・・そう」

悪いな。だが、俺にだって譲れない考えはある。

ハルヒ「・・・・・・」

佐々木「・・・・・・」

・・・・・・こういうのを、重たい空気というのだろうか。俺は全身に、部室の雰囲気を背負っているような気がした。

ハルヒ「・・・なによ、なに申し訳なさそうな顔してるわけ?それなら初めから私を選びなさいよ。
    私が悲しむとでも思った?そんなわけないじゃない、私を誰だと思ってるの、SOS団の団長、涼宮ハルヒよ!」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 00:41:47.52 ID:+pg/QrL50
キョン「ああ、そうだな。心配するまでもないな」

不思議や非日常を求めてはいても、彼女はいたって普通の常識人であるという
いつだったか古泉が言ったことを思い出す。

今、目の前にいるこの少しだけ普通でない女子高生は何を考えているだろうか。

ただ一言、すまんと心の中で呟いて、佐々木、古泉とともに、部室を後にする。

・・・古泉、閉鎖空間は発生したのか?

古泉「ええ、機関から連絡がありました。しかし、発生したのは空間だけで、神人は見られないとのことです
    最近はこういったケースが多いのですが、やはり、涼宮さんは力を失いつつあるということのようです」

そうか。しかし、どうしてハルヒから力が無くなっているんだ?

古泉「あくまで憶測ですが、貴方と過ごしてきたことが原因だと考えられます」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 01:04:49.99 ID:+pg/QrL50
古泉「彼女は非日常をを求めていながら、常識をわきまえている人です。
    一般的には宇宙人や未来人、そして超能力者はいるとはされていません。
    SOS団で活動をしてはいても本当に見つかるかどうか、見つけたいとおもっていたのでしょうか」

あくまで推測の域を出ませんが、と古泉は繰り返す。
なるほどな。SOS団での活動で満たされた・・・とかか?
まあいい。とにかく今は、逃げることが重要だ。

太陽は大分傾き、そろそろ山の陰に身を入れようかという頃合である。
校舎の外に出ると夕日が眩しかった。

古泉「こちらです」

古泉の言うように従ってついた先にいたのは、

「キョン君、お久しぶり」

朝比奈さん(大)だった。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 01:20:01.38 ID:+pg/QrL50
キョン「朝比奈さん・・・一体どうして?」

朝比奈(大)「詳しいことは禁則事項なんですけど、キョン君と、そこの佐々木さんには、今から過去に行ってもらいます」

キョン「過去に・・・?」

古泉「はい。逃げる一つの手段としてまず考えられたのが、時間を飛ぶことです。
    それなら流石に情報統合思念体も手を焼くでしょう」

朝比奈(大)「結構大変だったんですよ、話をつけるの」

なるほど、過去へ行くのか。確かにそれなら逃げやすそうだ。
だが、過去では古泉たちの支援が受けられそうにないが・・・
いや、ひょっとして過去というのは

古泉「お察しの通りです。行先は4年前、七夕の日です」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 01:42:51.38 ID:+pg/QrL50
ちょっと待てよ、よくよく考えれば、長門のなんちゃら体は過去に来た場合、
直接ハルヒに何かをするんじゃないのか?

古泉「それは、その可能性はゼロとは言い切れませんが、限りなく近いと思います。
    というのも、もしその時点での涼宮さんに接触した場合、
    いわゆる情報フレアに影響が出て、宇宙人などといった概念が否定され
    情報統合思念体の存在自体が揺らぐこともありえますので」

うむ、よくわらんが、おまえが問題ないというのなら、それを信じよう。
一つのときに俺が三人いるというのもいささか不安だが、まあいい。

佐々木「キョン、ちょっといいかな?」

キョン「どうした?」

佐々木「駆け落ちというのか、逃避行というのか、橘さんからある程度着ているのだけど
     結局のところ何をするんだい?」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 01:54:25.00 ID:+pg/QrL50
ううむ、それは俺の口からではなんとも説明できんな。
端的に言えば過去へ高飛びというわけなんだが、
詳しいことは後々でいいか?

佐々木「ふむ、色々と焦っていたりすることを考えると、どうやらその方がいいようだね」

話が早くて助かる。とにかく、急がなくてはならんらしい。

朝比奈(大)「じゃあキョン君、そろそろ行きますよ?都合上私はすぐに帰ってこなければなりませんが、
        キョン君なら大丈夫って信じていますからね?いなくなっちゃ嫌ですよ?」

勿論です。俺だって、二度と朝比奈さんに会えなくなるのはごめんですから。

古泉「あと、最後にこれを。長門さんが記したメモです。過去でみるようにと」

受け取った。長門のカンペか。色々と助けてくれそうだな。

朝比奈(大)「はい、じゃあキョン君に佐々木さん、目を瞑って下さい。いきますよ・・・」

大外刈を食らったような体への力を感じる。
体の内と外がひっくり返るような浮遊感ののち、気を失った。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 19:28:38.02 ID:+pg/QrL50
「キョン、キョン・・・・・・」

毎度のことだが、この時間を遡るっていうのは慣れないものだな。
体がひっくり返るというか、なんというか。
・・・どうした佐々木、そんなに不安げな顔をしているお前を見るのは久しぶりだ。

キョン「朝比奈さん(大)は?知ってるか?」

佐々木「ああ、彼女なら、僕を起こした後に帰っていったよ」

そうか。朝比奈さん(大)の甘い香りに揺り起こされたかったのだが、膝枕もしてもらえなかったとはな。
と、まあそんな冗談を言ってるほどの暇があるわけでもない。行こうか。

長門の家に。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 20:11:24.01 ID:+pg/QrL50
さて、今いる場所は流石にあの時と同じ場所ではないな。
だが見知った場所だ。長門のいるマンションまでそう時間もかからないだろう。

佐々木「キョン、そろそろ説明してもらってもいいかな?」

ああ、そうだったな。移動の間にでもかいつまんで説明させてもらうとするか。

佐々木「駆け落ちというのもなかなか時代錯誤のものだね。
     もちろん、それとこれとが違うことはなんとなくわかるよ。
     毎度毎度キミはおかしなことに巻き込まれているようだけど、
     今回ばかりは僕も高みの見物というわけではすまないようだね。」

本当に笑っているのか怪しいいつもの笑い方だ。
さっきはあんな顔をしていたというのに、切り替えの早いことだ。

・・・いや、強がり、というものなのか?

73 名前:>>71はい:2010/10/19(火) 20:44:26.38 ID:+pg/QrL50
とはいえ、何から話したものか。
橘やら藤原やらのことを考えると、大体の事情は知っているだろう。
となれば、今回のことだけを喋るのでも大丈夫だろうか。

ええとだな・・・



佐々木「・・・とりあえず、キミが説明を苦手としていることはよくわかった」

それは悪うございましたね。
だが、佐々木。ごく普通の一般人ではこれが当然だと思うぞ。
これは例えお前といえども変わらないと思うが。

佐々木「ふむ。まあ実際に長門さんから話を聞いたわけではないのではっきりとはいえないが
     要するにどうにかなるまで逃げ回るということだね」

そう、その通りだ。話が早くて助かる。

佐々木「それで、じゃあ僕たちはこれからどうするんだい?」

さあな。実を言うとさっぱりだ。だから、対処法を持っていると思しき人物のところまでいくというわけさ。

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 21:02:30.64 ID:+pg/QrL50
佐々木「・・・・・・」

キョン「どうした?」

急に佐々木が考え込むような態度を取る。

佐々木「いや、ちょっとね」

なんだ。気になるじゃないか。

佐々木「僕たちはこうして過去にいるけど、その長門さんの団体がそれを見越していないとは限らないのでは」

・・・何?

佐々木「それに、あの部室にいた長門さんとこの時間での長門さんは必ずしも同じとはいえないだろう?
     部室での長門さんが接続を絶っていたとして、ここのの長門さんはどうだろうか」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 21:19:13.15 ID:+pg/QrL50
・・・なるほどな。それも一理ある。
だがな佐々木、どの道選択肢はないんだ。虎穴に入らずんば何とやらさ。
行ってみるしかないだろう?

佐々木「・・・ふふ、そうだね。ところで、いつからキミはそんなに逞しくなったんだい」

くっくと佐々木が笑う。

さあな。俺はいつも通りのつもりでいるが。
それとも俺がいつも逞しいのか。

佐々木「そうだね、でも少なくとも、あの時よりもずっと、キミの背中は大きく見えるよ」

あの時・・・中学生のときか?
なら、あれだ、単純に成長しただけの話さ。

佐々木「・・・いいや、あのころとはあまり変わっていないみたいだ」

なんだ、急に色々おかしなことを言ったり。

佐々木「いつか、わかるときがくるよ」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 21:20:47.01 ID:8BiquL6nO
あのマンションには当然あの方も健在だしな

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 21:37:50.93 ID:+pg/QrL50
などと話をしているうちに、マンションに辿り着いた。
幸いなのかどうなのか、別段特に変わったことは起こらず。

長門のいる部屋を選び、部屋の主を呼び出す。

キョン「長門さんのお宅でしょうか?」

返事はない。

キョン「あー、なんと言えばいいか」

変わらない言葉。

キョン「涼宮ハルヒの知り合いの者だ」


ホールへドアが開く

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 22:03:15.92 ID:+pg/QrL50
長門「入って」

初めて入ったときと変わらない、何の変哲もない部屋だ。
いや、前にも来たことがあるから知っているか。

佐々木の手を引き、居間へとお邪魔する。

今の時間は、ああ、もう既に俺と朝比奈さんは長門に時間移動をさせられているときか。

キョン「驚かないのか」

長門「別に」

そうか。長門ならそれもそうだな。

古泉から預かっていた、長門からのメモを渡す。何を書いてあるかさっぱりだったということは
当然こういう使い道というわけだ。

とりあえず、これを。

長門「・・・・・・・・・」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 22:17:22.54 ID:+pg/QrL50
長門「理解した」

そうか、それはなによりだ。
それで長門、俺たちはどうしたらいい?

長門「ここにいるのが最善と思われる」

・・・なに、ここで待機なのか?
てっきり逃げ回るとでも思っていたが。

長門「状況把握や協力を考慮すると、それが最善と考えられる」

なるほどな。
だが、隣の部屋には俺と朝比奈さんがいるだろう?
何かあったとき、大事には至らないか。

長門「問題ない。既に対策を講じた」

そうか。頼りになるな、長門。ありがとう。

長門「礼には及ばない」

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 23:05:33.86 ID:+pg/QrL50
なんというか、掴みにくい、1年の4月ごろの長門みたいだ。
ああそうか、今の長門の表情が読み安いのはSOS団で活動をしているうちになっていったんだっけな。

キョン「なあ長門、これからどうなる?どうすればこれは終わる?」

長門「現時点である情報では結論を下すことは不可能
    また、有用な結論が出る可能性は低いと考えられる」

そうか・・・。やはり終わりが見えない。
長門や古泉がどうにもできないことならば、俺はなおさらだ。

佐々木のほうを見やると、俺と長門の話に入ってこれないのか
壁に背を預けこちらを見ている。

そんな心配そうな顔をするなよ。

キョン「少しばかり聞きたいことがある」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 23:14:05.45 ID:g94tGUSF0
佐々木かわゆすなぁ

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 23:32:23.60 ID:+pg/QrL50
さっき佐々木と話をしていたんだが、お前は今どういう状態なんだ?

長門「それはどういう意味」

長門、お前は情報なんちゃら体のインターフェース、そうだよな。
情報なんちゃら体と連絡を取り合っているんだと思うのだが、違うか?
それで、連絡があるとして、ハルヒや俺たちのことはどう伝わっている?

長門「問題ない。確かに私はヒューマノイドインターフェースとして
    普段は情報統合思念体と同期している。
    しかし先ほどの紙媒体による連絡によって同期を終了。
    接続は絶っている」

なるほど、4年後の長門はそこまで手を回していたというわけだな。
それともう一つ。なんちゃら体が手がかりを求めていろいろやっているようだが、
あいつらはこの時代に来ることができるのか?
それと、もしそうだとして今は来ていないか?

長門「情報統合思念体から直接ここへくることは可能。
    しかし現時点までではそれらの到達は観測されていない。
    また、接近があった場合は私が感知できる」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/19(火) 23:46:56.16 ID:+pg/QrL50
佐々木、良かったな。
前の心配は杞憂に終わりそうだぞ。

佐々木「そのようだね。ただ、それは今の時点での話ではないかい?
     これからどういうことが起こるかはわかったものじゃない」

まあな。でも、とりあえず一息はついてもよさそうだ。

佐々木「それは、そうだね。流石に僕も少し疲れたかな」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 00:04:19.12 ID:6+IN9uQL0
ああ長門、それとだ。
紙に書いてあったかどうかはわからんが、こいつは佐々木、俺の親友だ。

嘘か本当かは知らないが、ハルヒのような神様の力を持つ候補でな、
話によるとハルヒの力が失われつつあり、そしてその一部が佐々木に移っているんだそうだ。

長門「把握している」

早いな。それで、今なんだが佐々木には力は転移しているか?

長門「・・・・・・確認できない」

・・・そうか。いや、悪いな。

佐々木「キョン?僕がどうかしたかい」

ああ、ちょっとな。

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 00:10:55.44 ID:6+IN9uQL0
なあ長門、仮にハルヒの能力が全部なくなって、
移るだけ佐々木に移ったりしたら何か変化はあるか?

長門「・・・それは現時点では判断できない」

・・・・・・。

長門「ただ、涼宮ハルヒとの性格の相違を基に推測するところでは
    大きな変化はないと思われる。しかし、涼宮ハルヒと異なり
    彼女は能力についての知識がある。それは大きな不確定要素となり
    判断がつかない」

そうか。
佐々木、お前は望んでいなかったよな、神様になることを。
それが今はどうだ。

佐々木「・・・・・・」

いや、別に何か悪いといいたいわけではない。
ただ世の中意図しないことだらけだと思ってな。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 00:29:04.30 ID:6+IN9uQL0
確かにな、不安を覚えたりもするかもな。
神様のような力などといわれても、よくわからないし、
それを人間という器に入れても良いものかどうかもわからん。
だがな、一年をハルヒと一緒にいたが、あいつはあれが普通のようだ。
なんとなくそんな気がするだけだが、
神様の力があることを知ったとしても、何か特別起こるとも思えん。
きっとそうだ。
だから、大丈夫だろう。俺だってここにいるじゃないか。
逃げろとは言われたが、勿論俺はお前を守るつもりでだっているさ。

佐々木「・・・・・・ふふ」

な?

佐々木「ひょっとして、僕は口説かれているのかな?」

・・・いやそういうつもりでいったわけではな[佐々木「だとしてももう少し言葉を選ぶべきではないだろうか」

佐々木「女性に真剣に話をするときは、他の女性を引き合いに出すものではないよ
     いや、それとも僕はキミにとっては女性ではないのか」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 00:33:14.61 ID:6+IN9uQL0
いや、だからな、佐々木。
そういうつもりとかではなくてだな・・・

佐々木「・・・ふ、ふふふ。あはははは
     キョン、もしかして本気に受け止めてくれたのかな?
     いや実に面白い」

くっくっくと笑う。

このやろう。人が真剣になっているというのに。

佐々木「いやいや、やはりキミは面白いね。
     馬鹿にしているわけではないよ。
     僕もなかなか愛されているということか」

・・・ふん。まぁ、いつもの佐々木に戻ったようだということにするか。

ただ少し、
佐々木を選んだときのことを思い出して、
少しだけ胸が痛む。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 00:40:41.20 ID:6+IN9uQL0
すまんのう明日は1コマ目からあるけん
もう眠いのじゃ

ちょっと時間切れです。ごめんなさい
これからの展開について意見をくださいね

1.エンド1
2.エンド2
3.バッドエンド1
4.バッドエンド2
5.バッドエンド3
6.バッドバッドエンド

保守とか支援とかどうもありがとうございました
明日は今日よりは早く帰ってこられる予定です。

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 00:42:49.54 ID:R+PikYle0
幸せな話が好きだよ

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 01:11:22.82 ID:a4UXxpUE0
ハッピーエンドが見たいものだ



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 01:57:52.33 ID:hpDoNwPYO
6を選んでみる

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 02:57:26.18 ID:sVegDyYYO
ラブラブ展開が好きっさ

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 03:51:58.19 ID:ONO363+MO
>>94
キョンは1
佐々木とくっついてハルヒ除くSOS団と佐々木団が統合される

ハルヒは6
伊藤誠とNiceBoat

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 05:58:24.07 ID:vpa+NKb60
佐々木スキーだけど1,2以外を選ぶぜ!
あえて言うなら6

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 06:16:22.59 ID:PeI8R9JMO
2ってどういうこと?

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 07:31:48.01 ID:lyn62PMvO
佐々キョンでもっとも熱いハッピーエンドをお願えしますだ

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 07:37:06.43 ID:HFGM8+4i0
ハッピーエンドならば
バッドエンドはやめてくれ

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 07:42:40.75 ID:PeI8R9JMO
ハッピーエンドならなんでもいい

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 08:55:07.60 ID:NMoau3J+O
佐々キョンラブラブエンドしか見えない

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 09:01:16.72 ID:sVegDyYYO
>>108
Gガンダムが使いそうだな

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 10:16:01.32 ID:PeI8R9JMO
イチャイチャさせてやれ

112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 11:04:23.84 ID:AY+Mo6Jr0
ハッピーエンドならなんでもいい

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 13:03:46.78 ID:ONO363+MO
佐々キョン成立
ハルヒは失明してラピュタから転落死でいいだろ

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 15:13:30.06 ID:8eNaPKBWO
イチャイチャしてくれれば悔いはないッ!!

126 名前:>>124特にどのキャラがではないです。でもちゃんと佐々キョンで書かせてもらいますよ:2010/10/20(水) 16:56:43.12 ID:6+IN9uQL0
特に話すこともなくなった。特に何かを話そうとも思わない。
そんな感じになって、部屋に静寂が訪れる。

古泉と話していたときの緊迫感を忘れてしまうくらい・・・暇だ

キョン「長門、ちょっと台所を借りるぞ」

長門「・・・・・・」

沈黙を肯定と受け取っておこう。

可もなく不可もないようなシステムキッチンだ。
お湯を沸かし、茶葉を取り出し、急須に注ぐ。

多くのことを考えなければならないような気がするが、それほどの気力も出ない。
キッチンに落ち着くような緑茶の火織がひろがり、しみじみとした気分になる。

128 名前:×火織 ○香り です。すいません:2010/10/20(水) 17:08:17.32 ID:6+IN9uQL0
居間に戻ってみると、長門に借りたのか佐々木までも本を読んでいた。
卓に湯飲みを置き、急須からお茶を注ぐ。部屋が緑茶の香りで満たされる。

ありがとうと軽く言って佐々木が湯飲みを取る。
朝比奈さんほどの味は保障しないが、と言おうとしたがやめておいた。

黙って俺も湯飲みを手に取る。

三つ用意したがどうやら長門に手をつける様子はなさそうだ。
何も言わず、表情の読み取れない顔でページをめくる。
佐々木も視線を本に戻していた。

紙の擦れる音だけが部屋に響く。
逼迫した空気とは縁遠い雰囲気が部屋を覆う。

追われているというのにただじっとしているだけ。
それは勿論、長門の能力など都合がいいからそうなのであるが、
ただでさえ欠ける現実味が一層感じられない。

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 17:45:32.21 ID:6+IN9uQL0
ふと、佐々木のほうに目をやる。

透き通るような肌。細くしなやかな指。

読書に傾倒しているのか、俺の視線には気づいていないようだ。

蛍光灯の光を受けてきらめく長い睫毛。それに守られる瞳は文字を追って
右へ左へ動いており、その奥には知性と感性が感じられる。

「十人中八人が一見して目を惹かれる」

何となく、古泉が言っていたことを思い出す。

なるほど、これが魅力というものなのか。
吸い込まれてしまいそうなその雰囲気には、ハルヒとは正反対の何かがあるように思える。

ページをめくる手。時折お茶を啜ると動く喉。

ただ、佐々木を見ていた。

132 名前:ちょっとおでかけ:2010/10/20(水) 17:59:32.31 ID:6+IN9uQL0
顔に目を戻すと、佐々木がこちらを向いていた。

自分の顔に何かついているのか、そう言いたげな表情である。

感想でも言ってやろうかと思ったが、うまく口が動かない。
なんだか見詰め合ってるような気分になり、恥ずかしくなって窓の外に目をやる。

日はすっかり落ちて、街の灯りが闇夜に映える。

本に意識を戻したのだろうか、再びページをめくる音がする。

湯飲みに残った少しを飲み干し、床に寝そべる。

このまま目を閉じれば、何もかも終わるんじゃないか。
あのときのように俺はベッドから転げ落ち、翌日変わらぬ登校をするんじゃないか。

そんな風に考えたりする。

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 18:58:54.61 ID:6+IN9uQL0
長門「伏せて」

耳に入ってから長門のその言葉を理解するのに若干の差があったが、
理解する前に体が動いていた。

佐々木の上に覆いかぶさるようになった瞬間、窓が派手な音を立てて割れる。

長門「ヒューマノイドインターフェースの進入を感知。
    場所は・・・特定できない」

お茶、飲み干していて良かったなどと暢気なことを考えている自分に驚きつつ、
窓の他には何もなかったことを確認する。

佐々木「キョン、重いよ」

すまん、気がついたときには体が動いていた。
大丈夫か、どこも痛くないか?

佐々木「なんともないよ。強いて言えば頭を打ったかな」

そりゃ悪かった。



136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 19:15:08.43 ID:6+IN9uQL0
立ち上がり、佐々木の手をとる。
長門は窓の外を心なしいつもより鋭い目つきで見据えている。

キョン「とうとう来たのか?」

長門が無言で頷く。

どうすればいいか、そう尋ねようと思った瞬間、
長門が小柄な体を振りかぶる。

割れた窓の枠に合うように白いもやのようなものがかかったかと思えば、
その瞬間に先ほどよりも派手な音を立てて砕け散る。

破片から守るように佐々木を抱きしめたが、
飛び散る欠片は長門と、その後ろの俺たちをを避けながら拡散し部屋を蹂躙する。

眩しさを感じて窓を振り返ると、ちょうどその光が途切れるところだった。

外には、黒のスーツにサングラスをかけたいかにもな容貌の男が何人か浮いていた。

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 19:59:11.47 ID:6+IN9uQL0
長門が一歩前へ出る。

相手も長門をじっとにらみ返す。緊張が走る。

どれだけの時間が流れだろうか、
不意に男の一人が腕を振り上げる。

長門もそれに応じようと更に一歩、相手に近づこうとし、

長門「深刻なエラーが発生」

小石につまずいたかのように、


倒れこんだ。

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 20:17:57.80 ID:6+IN9uQL0
長門、そう叫ぼうとしたとき、
爆音が鼓膜を突き破るかのように響き渡る

佐々木を抱く腕に力が入る。

長門「情報の組み換えが正常に行えない。
    接続が正常ではない。操作の過程で何者かに割り込まれている。
    初期化では間に合わないと判断。
    それ以外での状態の回復法は現在不明。

    残存するリソースを用いサポートする。
    現在選択可能な対処は、離れること」

長門、再び叫ぼうとしたとき、二度目の爆発が起きた。

部屋の中での爆発に、先ほどよりも強い衝撃が俺たちを襲う。
気がついたときには俺は宙を舞い、佐々木とともに窓の外を真っ逆さまに落ちていった。

最後に目に入った顔の見えた長門は、にげて、と言っているように思えた。

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 20:54:53.15 ID:6+IN9uQL0
佐々木を抱きかかえたまま、俺は落ちる。
目に入ってくる景色は非常にスローモーな動きで、
走馬灯というのはこんな感じなんだろうかと考えた。

体が植え込みに突き刺さる。
あの高さからの落下だと言うのに痛みはなく、体に異常も感じられない。
あれほどいた男たちが迫ってくる気配もない。

長門が何かしたのだろうか。

深く考えることはやめて、這いずり出、佐々木の手をとり走り出す。

あてはないが、とにかくここから離れよう。

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 21:12:33.18 ID:6+IN9uQL0
どこへ向かうか・・・

無意識のうちに選んでいたのは、駅への方向だった。
駅の周りなら人が大勢いる。それならきっと奴らも手を出しにくいはずだ。

佐々木の手をもっと強く握り締め、走る。

追われている。
          勝算なく走り逃げている。

なるほどこれなら駆け落ちらしい。

長門は大丈夫だろうか。
この時代に来たと言うことはもとの時間はどうなっているのだろうか。

考えたくはない。
走ること、周りの気配を察知することに意識を集め、他のことは気にしないように心がけた。

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 21:23:56.07 ID:6+IN9uQL0
次第にと夜の街を照らす明かりが強くなり、駅が近づいていることを俺に教える。
何も具体的な解決があるわけでもないというのに、俺にはなぜかそれが希望の光のように思えた。


ちょうど列車が到着したのだろうか。
駅前には勤め先から帰ってきたであろう人々でいっぱいだ。

駅前広場のベンチで一息をつく。
息も絶え絶えな俺たちに通行人が奇異の目を向けるが構ったことではない。

死ぬかもしれないと言う瀬戸際なのだ。
本当に、構ったことではない。

佐々木はがっくりとうつむいて表情が見えない。
そばの自販機で飲み物を買い、手渡そうとするとやっとこちらを向いた。

走り回ったことで紅潮した頬を目にしたとき、こんなときに不謹慎ながらも
色気を感じ、目をそらす。

お互い何も言わず、350ml缶を飲み干す。

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 21:47:03.45 ID:6+IN9uQL0
これからどうしようか、そう問いかけようと思った矢先、爆発音が辺りに響く。
長門のマンションで聞いたものと、同じ音。

振り返ると、駅前ビルの一階が抉り取られたかのように消えていた。
人に人が叫び声をあげている。

ところどころ赤く染まった路面や、ひっくり返っている乗用車。
余りの惨状に頭の処理が追いつかない。

やっとの思いで向き直ると、佐々木は直前までとは打って変わって蒼白な顔つきになっている。

自分を責めているような表情で俺を見上げる。

ばかやろう。お前の責じゃねぇよ。

そういってやりたかったが、口が動いてくれなかった。
黙って佐々木の手をとり、その場から逃げ出す。

149 名前:>>146自分でも何かいているかわからなくなってきている:2010/10/20(水) 22:01:04.89 ID:6+IN9uQL0
最早わけがわからない。
他の人がいれば躊躇するか、そうか考えていたのは甘かったのか。
相手は何の躊躇いもなく攻撃してきた。

今度こそあてはない。
右に左に、ある道をでたらめに、ひたすら走るだけだ。

どれぐらいの距離を走ったときだろうか。

不意に佐々木の手を引く右手にかかる抵抗が大きくなった。

キョン「どうした、佐々木!」

振り返った俺の目に映ったのは、アルコールでも回ったかのような紅い佐々木の顔だった。

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 22:32:42.31 ID:6+IN9uQL0
佐々木は俺の手を振りほどき、誰かの家の塀に寄りかかるようにして立ち止まる。

キョン「佐々木、大丈夫か!?」

答えない。

キョン「どうした!?」

佐々木「・・・すまない。・・・なんだか、体が熱いんだ」

熱い・・・?風邪でも引いていたのか?

佐々木「いや、風邪を引いていたつもりはない。
     長門さんの家にいたときから、なんだか火照るような感じがしているんだ」

そう告げる佐々木の顔は確かに紅い。駅前のときよりもその赤色は鮮やかで、
瞳は潤んで軽く充血している。

何かあったのか?奴らが何かしたのか?

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 22:46:07.94 ID:6+IN9uQL0
佐々木「わからない。ただ、何かがわた、僕の中に入ってきているような気がするんだ」

何かが入ってくる・・・?どういうことなんだ・・・。

佐々木「それはそうと、このみち、さっきも来なかったかい?」

なに?

佐々木「この家、さっきも前を通ったと思うんだけど・・・」

言われてみれば、そんな気がする。レンガ風な外装のこの家には見覚えがある。

佐々木「なんというか、同じような場所を、ぐるぐると回っているような」

・・・・・・しまった。

やられた。よくよく考えたら、相手は長門や朝倉のような存在じゃないか。
ここは、奴らがどうこうして外から切り離した空間か。

辺りを見れば、街灯以外に明かりの着いた場所はない。

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 23:02:51.23 ID:6+IN9uQL0
まるで網に迷い込んだ魚だな。
相手が用意した檻の中で、そうとは気づかず闇雲に走り回る。

奴らはこんな俺たちをどこかで嘲笑っているのだろうか。

佐々木「・・・っ!」

キョン「佐々木!」

倒れそうになる佐々木を抱き止める。
熱い。佐々木の全身から熱を感じる。一体何だというのだ。

佐々木「・・・キョン、ちょっといいかい?」

なんだ

佐々木「ここから先は、二手に分かれていかないか?」

馬鹿を言うな!
二手と言うが、どうみてもお前は満足に動けそうにないじゃないか。

佐々木「じゃあ、正直に言うよ。僕を置いて行ってくれ」

156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 23:13:20.67 ID:6+IN9uQL0
ますますもって聞くわけにはいかないだろ。何考えているんだ。

佐々木「彼らは、僕が目的なんだろう?だったら、せめてキミだけでもと」

ここまで来て今更そんなことができるものか。
それに、守ってやると初めに言っただろう。

佐々木「でも、キミはどうにか打開する方法を持っているわけではあるまい。
     ならば少しでも被害を抑えたほうがいいじゃないか」

キョン「ふざけるな!!」

佐々木「っ」

キョン「あの時俺はお前を選んだんだ!それを今更!
    お前はそれでいいかもしれないが、俺はどうなる。
    お前を見捨ててぬけぬけとしていられるわけがないだろう!
    古泉や長門、朝比奈さん、そしてハルヒも、俺を信じてお前を預けた。それを裏切れと言うのか。
    それに、」

俺はお前が好きなんだ、そう続けようとした俺の体に、佐々木の細い腕が巻きつく。

佐々木「・・・そうだね。・・・悪かったよ、キョン」

157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 23:26:12.03 ID:6+IN9uQL0
佐々木「じゃあ、僕と一緒にいてくれるかい?
     僕を置いて、どこにも行かないでくれるかい?」

勿論だ。

俺は佐々木を抱きしめ返す。



佐々木を背負い、遅い足取りながらも確かに道を進む。
半年前でありながら4年前であるあの時。ここ一体には微かに見覚えがある。
少しの可能性にかけて、歩く。

佐々木「ねぇ、キョン」

背中越しに佐々木が話しかけてくる。
なんだ。

佐々木「僕たちが始めてであったときの事を覚えているかい?」

・・・あいにく、記憶に残ってないな。

159 名前:だんだんどうなってるのかわからなくなってますね:2010/10/20(水) 23:35:27.97 ID:6+IN9uQL0
佐々木「そうかい。いや、別になんでもないんだ」

佐々木「学習塾が同じだったよね。それで、よく自転車の後ろに乗せてもらっていた」

ああ、そうだったな。それでクラスの奴らやら何やらが勘違いしていたな。

佐々木「実はだね、あんなに親しく接した男の人と言うのは、キミが初めてだったんだよ」

そうかい。そいつは光栄だな。

佐々木「それで、前で自転車をこぐキミを見て、よく思ったのさ。
     男の人と言うのは、こうも逞しい、頼りたくなるようなものなのかなと」

ほほう。・・・なんだか照れるな。

佐々木「恋愛感情は病気の一種、といったよね。でも、実際は恋愛と言うのが
     どういうものかよくわかってなくてね」

なんだ、頭の言いお前にしては変な考えだな。

佐々木「僕は解析力は優れていないからね」

ああ、そんなことも言っていたかな。

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/20(水) 23:52:20.40 ID:6+IN9uQL0
佐々木「星が綺麗だね、キョン」

ああ、そうだな。辺りが暗いこともあるせいか、いつもより何となく光が強いな。

佐々木「キミは自転車を漕ぐのに必死だったかもしれないけれど、
     僕はいつも後ろでこれくらいの星を見ていたんだよ」

そいつは羨ましいな。
・・・あった。ここだ。

ジョン・スミスがド派手な模様を描いたことで有名な、東中学校。

都合よく門が開いていたので、佐々木を負ぶったまま、中に入ることができた。

間近で見ただけではなんだかわからない無数の白線。それはこの異空間でも変わらずあった。

そして、その中心に一つの赤く光る球体が見える。

それがなんだか、よくわかる。
いつも営業スマイルを欠かさない、SOS団副団長にして最大のスポンサー、古泉一樹だ。

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 00:06:47.75 ID:Yxv6oOjb0
古泉「涼宮さ・が・・・死にました・・・・・・」

は?

古泉「あな・が過去にと・でから、僕はきか・のメンバーと連絡・取り、
    すぐに涼・やさんの移動を・いししました。
    長門さんにともに・て頂いていたので、ある程度は大丈夫だ・うと
    考えておりましたが、どうやら甘・ぎたようでした・・・
    相手は数で来ら・たようで、初めの・ちこそしのいでい・ものの、
    少ししたところで長門さんの・・力を無効化され、
    ちか・で押し込・れるように・・・・・・」

おい、古泉、何を言っているんだ?
それは新手のドッキリか?
責任を持って守ると言ったじゃないか!どういうことだ古泉!

古泉「本当に・・・申し・けありません・・・・・・」

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 00:14:46.85 ID:Yxv6oOjb0
ハルヒが死んだ・・・?
そんなことあるわけないだろう!
あいつはいつも傲慢で、唯我独尊の変人なんだぞ!
自分に都合の悪いことなど、いつもの変態的パワーでどうにでもなるんじゃないのか!?

古泉「それが・・・、最後の・うではほと・ど失われていたようで・・・」


ははは・・・。
そんな簡単にか。
こうも簡単に、俺は愛している人を一人失ったことを告げられた。


古泉「・・・・・・」

ふと、あることに気がつく。そんなことには気がつきたくもないことであるが。

キョン「なぁ、ハルヒは本当に・・・?だったら、情報フレアだかというのは、どうなったんだ・・・?
    ここは、なんともないようだが、もとの時間は・・・」

古泉「長・さんがいうには、情報フ・アは観測され・かったと言うことです。
    ただ、涼宮さん・ら、強い志向性を・った情報の発信があっ・と」

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 00:19:37.97 ID:9cGCv5AxO
いいなあ駆け落ちとか


168 名前:書くごとに文が陳腐化かつ雑化している・・・(;ω;) ×志向性 ○指向性:2010/10/21(木) 00:20:01.87 ID:Yxv6oOjb0
強い、指向性・・・?

古泉「はい。あたか・、どこかも行きさ・でもあるかのよう・あると、
    長門さんはいって・ました。それと、元の世か・ですが、長門さんの
    話をいたら僕はす・にここにいたので、はっき・とは、わかりません・・・」

行き先・・・?

まさか!


佐々木「・・・ん、んぅ?キョン?何・・・?」

そのとき調度、いつの間にか眠ってしまっていた佐々木が目を覚ました。



     ”涼宮ハルヒの力が転移している”

169 名前:>>167内容は駆け落ちではないですけどね^^;:2010/10/21(木) 00:25:17.73 ID:Yxv6oOjb0
〜〜〜〜〜〜〜〜

ねえ、キョン。今、どこにいるのかしら。

私は自分がどこにいるかわからないわ。
古泉君の言うまま、車に乗って、どこかへ向かおうとしていたようだけど、
気がついたら車がひっくり返って・・・。

わかるのは、体が全然動かないと言うこと。

ねえ、キョン。貴方が部室を出て行ってから、何となく感じることがあったの。

私の、普通とは何か違うこと。

そして、それが色々と引き起こして、それから引き起こしつつあること。

全部、私が関係あるのね。
今回のことも、それのせいなのね。


ねぇ、貴方は今、どこで何をしているのかしら。

170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 00:31:06.62 ID:Yxv6oOjb0
あの時、貴方は私を選んではくれなかったけれど、
それはそれでしょうがないことなのかもしれないのね。

・・・いいえ、大丈夫よ。

私を誰だと思っているの?
北高最強のSOS団・団長、涼宮ハルヒよ。

佐々木さんは無事でいるかしら。
迷惑をかけて、本当にごめんなさい。

キョンをどうかよろしくお願いします。

キョンは、いつでも格好良くて、逞しくて、頼れる私の自慢の団員よ。
    ・・・・・・平だけど。

うん。きっと、大丈夫ね。

キョン、愛しているわ。
貴方と一緒にいたこと、七夕やスキーや南海のバケーション。
本当に本当に、大切な思い出よ。

貴方と一緒にいたことがあるから、私は大丈夫。

何も心配要らないの。

愛しているわ、キョン。

171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 00:39:31.57 ID:Yxv6oOjb0




        嘘。



確かに私は退屈することが多かったわ。
世の中、周りは普通のことだらけで、私はちっぽけな人間で。

でも、貴方と出会って、SOS団を作って、有紀やみくるちゃんや古泉君と出会って、
毎日が楽しかった。そりゃ、ちょっとはいらいらする日もあったわ。でも、どこか満たされていた。

こんな力、欲しくなんかなかった。貴方といられるだけでよかった。
貴方と一緒にいて、貴方を感じて、貴方に感じられて、それだけで、良かった。

本当は全然大丈夫なんかじゃない。
本当は貴方ともっといたい。
本当は貴方とずっといたい。
本当は今すぐ貴方を抱きしめたい。
貴方を感じ、感じられていたい。
貴方に抱きしめられて、貴方の耳元で愛していると囁いて、

    貴方に愛されたい。

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 00:45:01.06 ID:Yxv6oOjb0
でも、
          もう、
    だめね。

だんだんと前は見えなくなってきて、
あんなに痛かった体中は今では何も感じなくて、
誰かが私に話しかけているようでも全く聞こえなくて。

だんだん、なにがなんだか、わからなくなってきたわ。

あなたをおもうことはもうでき、なくなってきたのか、な

あいして、いるわ。だか、ら、ほんとうにすこ、しだけど、

わたしに、のこっているぜん、ぶをあげ、るわ

さいごにのこった、ほんの、すこし、だけど、

ぜん、ぶぜんぶあなたに、あげるわ

きっと、あなたを、たすけ、てくれるとおも、うの

じゃあ、ねきょん

あいして、いる、のよ、きょん

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 00:57:34.10 ID:Yxv6oOjb0
〜〜〜〜〜〜〜〜

さっきから佐々木が体が熱いといっていたが、もしかして・・・

古泉「はい、多ぶ・そうだとなが・さんもいってま・た
    す・宮さんが、最後の・からでおこ・ったこと・とすいそ・されます」

ハルヒ・・・・・・

古泉「ほ・とうに・しわけない・ですが、ぼくもそ・そろ、時間・れのよう・す。
    しだい・あな・をに・し・できな・なってき・・た。
    これからど・すればいい・は、ぼ・にもわ・りません。
    かさ・が・ね、ごめ・なさ・。
    さ・ごにひ・つだけ、なが・さんが・ばっく・っぷを・・たと・・・・・・・・・

バック、アップ
だんだんと弱まっていた光は、最後に雑音混じりにそれとだけ残して拡散した。
空を仰ぐと、東のほうが薄っすらと青みがかっている。

古泉も、もうお手上げのようだ。誰からの連絡も感じられない。
バックアップ、一体何のことだろうか。

ハルヒに対する佐々木のことか・・・?
いや、そう単純なものじゃないはずだ・・・。

根拠があるわけでもなく、そう思った。

174 名前:これは確実に俺の黒歴史に・・・!(^q^):2010/10/21(木) 01:11:37.80 ID:Yxv6oOjb0
校庭いっぱいに描かれたメッセージ。
そのど真ん中で、俺は座り込む。
背負っていた佐々木を胸の前で抱える。

再び眠ってしまったのか、瞳を閉じて、胸を軽く上下させている。

力を入れてしまえば折れてしまいそうなぐらい、細くしなやかな肢体。
知性の存在を感じさせながらも、どことなくあどけなさの残る顔。
安心しているかのように俺に体を預け、安らかに眠っている、
その全てが愛おしくて、愛おしくて、俺はその唇に顔を寄せ、そっと、

            口づけをした。


佐々木「ん、・・・あ、あぁ、キョン・・・」

それのせいなのか、佐々木が目を覚ます。
なんとなく気恥ずかしくなって、日が昇る方向を見やる。

175 名前:ひとりでもつづける:2010/10/21(木) 01:19:29.50 ID:Yxv6oOjb0
佐々木「ねぇ、キョン」

どうした?

佐々木「僕はね、本当はキョンと同じ高校に行きたかった」

そうかい。

佐々木「本当はね、キミと一緒にいたかったんだ」

そうかい。

佐々木「高校生になっても、君のこぐ自転車の後ろに乗って、どこかへ行ったり・・・」

そうかい。

佐々木「サークルを作ったりして、放課後も楽しく過ごしたかったかな」

そうかい。

177 名前:こんなキョン、キョンじゃないやい・・・:2010/10/21(木) 01:26:00.11 ID:Yxv6oOjb0
佐々木「本当は、キミと一緒にいたくて、・・・」

佐々木「キミが、・・・好き、で」

ははは、そんなに恥ずかしいのか。顔が真っ赤じゃないか。

佐々木「ねぇ、キョン、どうして泣いているんだい?」

・・・しらねぇよ。だが佐々木、お前だって涙で顔がぐちゃぐちゃじゃないか。

佐々木「あれ、そ、そうかな?」

ああ。俺もお前も、涙で前がよく見えねえな。


泣いているのか笑っているのか、自分でもよくわからなかった。

青みがかった空はだんだんと朱に染まり、新しい一日の始まりを告げる。

そんななか、ふと、俺は誰かが近づいてくるのを感じる。それも、一人や二人ではない。

178 名前:そうか、ここに色々書くからしらけるのか:2010/10/21(木) 01:38:28.75 ID:Yxv6oOjb0
佐々木、ごめんな。散々あれだけ行っておいて、
もう俺にはどうすることもできない。どうすればいいかわからない。

古泉が最後に残した言葉、それが何を意味しているのかもわからない。

本当に、ごめんな。もしも次があるとしたら、そのときは絶対に約束を守るから。

せめて、最後まではここに、一緒にいるよ。お前を置いてどこかへはいかないからな。


一人、黒服の男が、すぐそばまで寄ってくる。


佐々木「ねぇ、キョン。僕は・・・私は、何も恨んだりしないわ。
     君が私にしてくれたこと、全部本当に私のことを思ってくれてのことだって、わかるもの。
     今はただ、君がそばにいてくれるだけでいいの。それ以上、もう何もいらない。
     このおかしな力だって、欲しい人に上げもいいわ。
     だけど、最後に一つだけ。 キスを、頂戴。
     君がここにいて、私がここにいることの証に、一度でいいから、下さい」

最後の願いがそんなことでいいのか。
やっぱりお前は変わった奴だな。
いいさ。キスぐらい、何度でもしてやるよ。

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 01:42:13.65 ID:Yxv6oOjb0
俺にとっては二度目の、佐々木にとっては最初の口づけを、交わす。

なんとなく恥ずかしくなって、お互いすぐ顔をそらしてしまう。

佐々木「ねえ、キョン」

なんだ

佐々木「私は、キョンを愛しているわ」

ああ、俺もだ。


また一歩、誰かが近づいてくる。
俺と佐々木は瞼を閉じ、お互いにしっかりと抱き合って、次に起こると思うことに身を備える。

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 01:46:36.23 ID:Yxv6oOjb0
だが、身を硬くして待っていたことは、いつまでたっても起こらなかった。


「キョン君、いつまでそうしているの?」

声が、する。

「君はそれでいいのかな?まだ、やりたいこと、やっていないことがあるんじゃないのかな?」

聞き覚えのある声だ。

閉じていた目を、ゆっくりと開ける。

「早くしないと、本当に終わっちゃうよ?」

昇る朝日を背に、見知った人が、立っている。

181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 01:50:33.37 ID:Yxv6oOjb0
キョン「朝倉・・・涼子・・・?どうしてここに?」

朝倉「ああ、待ってよ、そんなに身構えないで。
    今回はそういうわけでいるんじゃないわ」

周りを見ると、近づいてきていた男たちがみな倒れている。

これは、朝倉がやったのか・・・?

朝倉「もー、長門さんも人遣いが荒いのよ。
    バックアップの復元をしたかと思えば、すぐに飛んでけだの」

長門・・・?バックアップ・・・?

あ、ああ。そういうことだったのか。

長門は最後に、バックアップを送った、そう言ったのか。

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 01:57:35.78 ID:Yxv6oOjb0
朝倉「長門さんからの伝言。
    『今、はっきりと認識できる。進化の可能性、発展の可能性、継続の可能性。
     可能性は、無数に存在する』
    だって。なんのことだろ?
    それで、貴方に時間を与えろ、だってさ。
    そんなわけで、あちらさんの相手は私がするから、
    後はなんだか知らないけど、頑張ってね」

進化の可能性?発展の可能性?継続の可能性?無数に存在する?
つまり、どういうことだ・・・?

長門が意味もない伝言をするはずがない。
きっとなにかの手がかりなんだ。

可能性・・・。

無数・・・。

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 02:07:08.87 ID:Yxv6oOjb0
もしかすると、俺がハルヒを選んでいた可能性・・・。
ハルヒの前の席ではなかった可能性、北高には行かなかった可能性。
佐々木と同じ塾にいなかった可能性、佐々木と出会わなかった可能性。
俺が今の俺として、生まれなかった可能性。

つまり・・・。


朝倉「わわっ!ちょっと、キョン君!制限時間はそうそう長くないわよ!
    ちゃっちゃとやってくれないと、私にも限界ってものがあるんだからね!」

ああ、わかっている。わかっているさ。


なぁ、佐々木。
さっきお前は言ったよな。

俺と同じ学校行きたかったこと、不思議なサークルを作りたかったこと。

今はどうなんだ?まだそう思っているのか?

だとしたら、俺もお前も、諦めるのはまだ早かったのかもな。

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 02:14:18.50 ID:Yxv6oOjb0
佐々木、想像するんだ。
本当はこうありたかったこと、なってほしかったこと。

現在がお前の思うようだったかもしれないだったかもしれない可能性、
それをしっかりと考えるんだ。

どうだ、考えられたか、そんな可能性は。

その可能性の未来が、欲しくはないか。
欲しかったのなら、作り出せばいい。そう、お前にはできるのだから。

お前にはあるだろう、ハルヒから貰った力が。
可能性を実現させる、神様の力があるだろう。

だから、可能性に満ちているんだ。



佐々木が、ぱちりと目を開ける。

その瞬間、俺はいかんとも形容しがたい無重力間に襲われる。
体の中がぐるぐるとかき回されているような浮揚感を感じ、ゆっくりと気が遠のいていく

186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 02:25:31.27 ID:Yxv6oOjb0
〜〜〜〜〜〜〜〜

いつもと変わらない放課後。
人のいなくなった教室をのそのそと出て、下駄箱を通り越して外へ出る。

誰も来ることはないだろう裏庭に、小さな小さな盛り土があり、これもまたそれほど大きくない石が、置いてある。



佐々木に与えられた力が発動し、世界が改変された。
改変と入っても、世の中のほとんど全ては変わっていないのだと、長門は言っていた。

ただ、涼宮ハルヒという存在の変化を除いて。

長門の言うところによると、今回の情報改変の引き金となったために、新しく構築されてここにはいられないということなのだそうだが
もっと詳しく言っていたことは、さっぱりわけがわからなかった。

佐々木の力による情報の大規模な発信に、情報なんちゃら体は満足したそうだ。
本当は、できるならそいつのそばまで行って、力の限りに、目一杯に殴りつけてやりたい気分だが。
しかしただの人間である俺にはそんなことを可能にする能力はない。

俺がハルヒにしてやれることといえば、ただ、忘れないでいてやることだけである。
ここに来る度、自分の至らなさを感じる。

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 02:32:11.35 ID:Yxv6oOjb0
俺は踵を返し、校舎の入り口へと戻っていく。
行き先はたった一つ、放課後にはいつも行く部屋である。

数分歩いて、辿り着く。
扉には大きく 「SOS団」 と書かれている。

ゆっくりとドアを開き、中に入る。
するか早いか、声が飛んでくる。

「遅いじゃないか、キョン」

そら、始まった。

「遅刻は厳禁!そういったはずだけど、違ったかな?」

いえいえ、全く違いませんよ。

「ほほう、覚えているのに遅刻とは、なかなかいい度胸じゃないか」

へいへい、お褒めに預かり光栄だな。

「団長たるこの僕の言うことが聞けないとは、それだから君はいつまでたっても平なのだ」

190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 02:42:14.47 ID:Yxv6oOjb0
佐々木が力を使ってから、それで佐々木自身はどうなったのか、それはよくわからない。

今ここにあるのは、佐々木も俺と同じ北高に通う高校生で、
身の回りの不思議を求めてサークルを作った可能性。


それ以前の記憶があるのかないのか、聞いてみるのは少し怖い。

長門を持ってしても、それは聞いてみるまでわからないのだそうだ。

個人的には、残ってないほうがいいと思うんだが。
そのときにあったことやなかったことを含めて。

実を言うと俺も忘れたい。あっても困るだけだしな。
ああ、いや、忘れてはいけないこともあるけどな。

佐々木の力が現在どうなっているのかは、不明な点が多いのだそうだ。

     機関が存在し、古泉がいる。
          時間旅行の道具は存在し、朝比奈さんがいる。
宇宙には高度な知性を持った生命体が存在し、長門がいる。

それぞれはやはり佐々木の力だそうだ。
ただ、今なおそれほどの力があるかどうかは怪しいそうで、念のためにいるということらしい。

191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 02:46:08.38 ID:Yxv6oOjb0
時々思うんだが、実は佐々木も覚えていて、
俺や長門や朝比奈さんや古泉が、佐々木にばれないようにこそこそとやっているのを
ひっそりと見て楽しんでいるのかもしれない。
佐々木はこういう性格だからな。

とはいえ、やっぱりないんじゃないのかというのがここのところの結論だ。



佐々木「キョン、聞いているのかい?遅刻した場合は飲み物をおごること。
     そういう約束だよ。約束はちゃんと守ってくれるよね?
     今度はちゃんと、守ってくれるよね?」



なんてな

192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 02:50:04.33 ID:Yxv6oOjb0
   おわり

〜〜エンド2とバッドバッドエンドを足して2で割ったエンド


おわりです。
保守や支援は本当にありがとうございました
遅筆や誤字脱字についてはまことに申し訳ありません

ラブラブが足りん、とか、これがハッピーエンドか、という声もあるかと思いますが、自分にはこれが限界です

乗っ取りで書き溜めがないとこんなにのろまになるんですね。
あらためて小説家というのにはおどろき

お目汚し失礼しました。

では

195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/21(木) 02:56:43.65 ID:aNRC1hHOO
おつ

面白かった
今度は書きたいように書けるといいな