「…その声に振り向くと夜闇に浮かび上がる顔だけの男が…!!」 サングラスの奥の目を怪しく光らせてミツキが精一杯低い声を出す。 両手を胸の前に垂らし、にやりと笑いながら身体を揺らした。 しかしシキは首をかしげ、角治郎はふんと鼻を鳴らした。 「そそそそんな、幽霊なんてこの世にいるわけないでしょ!」 「うん…そんな非科学的なもの…ミツキが信じてるなんて意外」 「何だよぉ。お前らつまんないなぁ」 夏だから、と先ほど仕入れたばかりの怪談を得意げに披露したのに冷たい反応しか返ってこず ミツキがいじけたように口を尖らせた。 いつも通り冷静なシキは飽きたのか、携帯端末を見出す始末だ。 一方角治郎はチョコレートを食べながら“ひかがく!”と連呼している。 そのチョコレートをひとつ奪って口に放り込みながらミツキが角治郎を上目遣いでうかがった。 「じゃージロは信じてないから怖くないんだな?」 「こッ!こここ怖↑い訳な↑いじゃないか!!みっちゃんこそ、怖くて夜1人で歩け↑ないんじゃないのッ?!」 「ばッ!ばばばバ↑カ!!歩け↑ない訳な↑いだろ!!俺だってそんなもん信じてな↑いし!!」 「2人とも。声裏返ってる」 「「うっさ↑い!!」」 ミツキと角治郎がお互いに怖がりのレッテルを貼り付けあっていると、シキの携帯端末がメール着信を知らせた。 業務連絡で、どうやら翌日の夜間はまた博士の物騒な研究のため電気が一切使えなくなるらしい。 別に夜なら寝てしまうし問題ないかな、と思ってからふと閃いた。 このうるさい2人は放っておくとあと2日はレッテルの張り合いをしているだろう。 できる限り平安な生活を送りたい。 言い合う2人の間に端末を突きだして読ませてから、無表情で呟いた。 「2人で肝試しでもしたら?」 一瞬揺れた蒼と赤茶の目が合い、申し合わせたように勢いよく立ち上がった。 ダン、とテーブルに手を突きお互いに顔をつきあわせて悪戯を始める子供のように面白そうににやりと笑う。 若干膝が震えているようにも見えるが。 「ぃよっし!!やってやろうじゃんか!!ジロ、先に叫び声あげた方がビビリだからな!!」 「望むところだ!!シキ君、みんなも呼んで肝試し大会だよ!!」 「…俺も加わるの?」 「「当たり前だろ!!」」 ふはははは、と震える甲高い笑い声の二重奏に“失敗した“と呟く声はあっけなくかき消されてしまった。