「みっちゃん」 いつもはそう一言呼んだだけで怒るのに、今は口を固く閉じて何も言おうとしない。 声が聞きたいのに、聞きたいのに、聞きたいのに。 「…ね、みっちゃん、たら」 手は止めず、首筋を唇でなぞる合間に名前を呼ぶ。 甘い、匂い。 神経は触れた部分に全て集中されているため、自慢の嗅覚はそれほど甘い匂いを感じていない。 なのに脳は甘いと訴える。 触れる全てが、感じる全てが甘い、と。 「…やっぱ、あまい、よ、みっちゃん」 耐えようと口を押さえる手の甲に唇で軽く触れるとアームカバー越しでも熱っぽさが感じられる。 目を閉じて鼻先で顎から鎖骨を辿り、どこが甘いのかを探ってみるが、やはりどこが甘いのかはわからない。 しかし確かにそう感じる。 「あま、い」 ぐっと鼻を耳元に押しつけて息を吐きながら呟くと、肩がぴくりと震える。 思わず軽い笑い声を立てて上半身に布団のように乗り被さった。 全身が不規則に小さく動き、全身で息をしているのを感じることができた。 熱も、柔らかさも、他の全ても。 「…はは、かーわいい」 「…か、かわいく、な…ッァ」 禁句と習慣に負けて口を開いた瞬間を狙い、押しつけていた首筋を軽く噛む。 作戦通り漏れた声を脳は甘いと判断した。 もっと聞きたい。 もっと感じたい。 噛んだか所をそっと舐めてからまたくすくす笑った。 「ホント、我慢できない、くらい」 ま、我慢するなんて、今の俺の辞書にはないけど。 そう呟いてからセリフのチープさに苦笑して、次の作戦を考え始めた。 何処が甘いのか、何が甘いのか、まだ試してないところがいっぱいあるんだから。